第2話 やっぱり日常

 ──龍々院りゅうりゅういん家の経営するレストランにて──


 龍々院家当主主催のパーティーに椿の友達として呼ばれた乃々。

 椿と一緒に食事を取っている。

 

「やっぱりタラバガニは美味しいですわねぇ〜♪」

 と椿。

「本当においしいねぇ〜!」

 返す乃々。

 

 椿に目を向けると困っている。


「どうしたの? 椿ちゃん?」

「──小さなエビがありますわ……。私は甲殻類がダメですの……」


 ??? 疑問を浮かべる乃々。


「──でもさっき……タラバガニ食べてたよね? あれも甲殻類だよ……」


 これに答える椿。

「食べられるのと食べられないのがありまして……」

 恐る恐る聞く乃々……。


「──因みに食べられる物は……?」


「──タラバガニ、ズワイガニ、ロブスター、伊勢海老ですわ……」


「──全部……高いよね……。きっとそれ甲殻類アレルギーじゃないと思うよ……」

  



 ──好き嫌い──


 困った表情を浮かべている椿。

「──困りましたわぁ……。高校生になって食の好き嫌いが激しくて……」

 

「人それぞれ好き嫌いはあるよぉ〜。仕方ないと思うよぉ……」

 と言う乃々。

 

「幼少の頃から好き嫌いを無くすために、色々食べさせられましたのに……」

 何を食べさせられたのか気になり聞く乃々。


「例えば何を食べさせられたの?」


 椿は淡々と答える──

「肥えた肝臓というガチョウのお肉だったり……」


「──フォアグラかな……」



「塩漬けのサメの黒い卵とか……」


「──チョウザメでそれはキャビアだね……」



「なんか独特の強烈なニオイがする茶色いキノコだったり……」


「──うっわぁ〜……。全部出ちゃったよ。世界三大珍味トリュフ……」




 ──学校の美術授業にて──


 学校の廊下。

 乃々と椿が話している。

 椿の指の怪我を見て──


「その指どうしたの?」

 という乃々。

「昨日、料理の練習で切ってしまいまして……」

「気をつけないといけないよぉ〜」


 廊下を歩く、とある二人の女子生徒の会話。


『昨日の課題のさぁー、絵画テストの最高点のバラの絵! すごかったねぇ』

『そうだね。すごく生命を感じたよぉ!」


 この会話を聞き、その絵を目にした乃々。

 見事なバラに感心し椿に言う。


「これ! 椿ちゃんの絵だよね! 凄く情熱を感じる赤だよねー!!」

「褒めて頂きありがとうございますわ♪」


 怪我した指を差し出して言う椿。


「怪我の功名ですわぁ〜!」


「──血で描いたの……!? 椿ちゃん……きっとそれダメなやつだよぉ……」


 椿の血で描かれたバラの絵は、その後入選を果たした。



 ──好き嫌 その2──


「私気付きましたの! このまま好き嫌いをしていてはダメだと!!」

 拳を握り力強く言う椿。

「どうするの?」

 と乃々。


「手始めにこれを食べますわ!」

 手には袋に入ったクサヤ。

 鼻を押さえながら言う乃々。

「──学校でクサヤはやめよーよ……」


 それを理解したのか……いや恐らく理解していない物を用意する椿──


「それではこれから食べましょう!」


 その手には恐ろしいものが……


 世界一臭い食べ物────

《シュールストレミング》


「──!? え゛ーーーー!?」


「では! さっそく!!」


 学校の屋内で開けようとする椿。

 それを必死に止める乃々……。


「本当に! ダメだよー!! それだけは絶対にダメだよぉーーーーーー! お願いだからーーーー!」


 ──乃々は涙を流し全力で止めていた。



 ◇🔹◇


 読んで頂きありがとうございました✨


 


 

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普通女子高生、《秋月乃々〈16〉》と親友令嬢《龍々院 椿〈16〉》の日常《2話完結》 ハクアイル @Hakuairu

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