EX:かつてあった大学時代の平凡な一コマ
●前提:時期は本編の四年前。弓佳はあなたに心を許しており、本編よりも甘える側面が強くなっている。
●あなたは大学の休憩スペースで自習のためにペンを走らせている。
●弓佳が正面から近づいてきて、ペンを動かす手を止める。
「ようやく見つけた。どこにいるんだろうなと少し探したよ。ここ、座っていいだろ」
●弓佳は椅子を引くとあなたの対面に座る。
「なんでって、前にこのコマは授業を入れてないって言ってたじゃないか。だからこのあと友達と遊びに行くまでのあいだ相手をしてもらおうと思って」
「授業は、今期は必修数コマだけだからほとんどないな。必要な単位はほとんど取ってるから、その分来年のために就活や卒論の準備をゆっくり進めているところだよ」
「お前は……、テーブルにノートを広げているあたりなかなか大変そうだな。まあ、頑張れ。二年のうちに単位を取れるだけ取っておけば三年からはうんと楽になる。私の実体験だから間違いない」
「ちなみに今はどんな課題で悩んでいるんだ?」
●弓佳は椅子を動かしてあなたの右隣に移動する。
「ふむふむ……。この内容、うっすら見覚えがあるけど何の授業だ?」
「ああ、私が勧めたアレだったな。先生、テストだけじゃなくてレポート課題も使い回していたんだ……。手伝おうか?」
「確かに記述式のレポートだから答えを伝えてハイ終わり、とはいかないけども。今、テキストは取り出せるか?」
●あなたはバッグを開くとテキストを取りだして弓佳に渡す。
「ありがとう。確かこのあたりで(●テキストをパラパラめくる)。……ほら、この文章なんかをとっかかりにすればテーマを広げて論じやすいと思うよ」
「お礼なんていいよ。私はお前の先輩なんだ。困っている後輩の面倒を見るのが甲斐性というやつだろ」
「でも、なんだ……。お前が借りを作るのが嫌な性分なのは知っているからな。すぐに借りを返したいということであれば聞いてやらなくもないかな」
「自販機に行こう、ってお金で片付けようとするなよ」
「じゃあどうすれば、なんてそこは自分で考えてほしいんだが……。そうだな。今度の土曜に時間をもらえないか。前々から水族館に興味があったんだけど、一人で行くよりかは友だちと行きたくて」
「なんだよ。お前が借りを返したと思えなくったって、私がそれでいいって言ってるんだからいいじゃないか」
「むしろご褒美だからだめ……。こほん、そこまでいうなら水族館に行くのはまたの機会にしてやろうじゃないか」
「それじゃあなんだ。友達が来るまでのあいだこのまま話に付き合ってくれたら今日の借りはそれでいいよ」
●以降次第に音声がフェードアウトして終了。
「友達、と言えばこの前校舎を歩いていたときにすれ違ったときに一緒に歩いていたやつ、これまで見かけたことなかったけど新しい友達か?」
「へえ、演習の授業でチームになった一人なのか。じゃあ、あのとき話していたのも演習に関係ある内容なのか…………」
失意のさなか、大学時代の先輩と偶然再会をして心を救われる話 中野七実 @nkn_nnm
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