ホラー映画って結局どんだけ怖がらせても結果は死なんだよなぁ

白川津 中々

「結局死ぬだけなんだよなぁ」




 ホラー映画を一緒に観た菅原君は溜息を吐いた。ファミレスで反省会だ。




「結局さ。どれだけ恐怖を演出しても結果は死なわけじゃん。おばけも悪魔も妖怪も、どれだけ驚かせても最終的には殺しにくるわけよ。それってなんかつまんなくない? 死んだらどうせ意識もなくなるわけだしさ。なんのために驚かせてるんだって感じ」


「でも、悪魔と契約した人間は死後永遠に苦しむっていうぜ」


「苦しむつったって所詮は痛みとか渇きだろ? 慣れちゃうよそんなの」


「なんか、不思議な力で慣れないようにするんじゃない?」


「不思議な力ってなんだよ?」


「悪魔だったら契約の代償とか……幽霊だったら恨みとか」


「契約って強制力あるの? 恨む事によってそんな摩訶不思議な力が発揮できるの?」


「さぁ……人知を超えてるものの話についてはちょっと分かんないかな」


「そこなんだよなぁ……理屈が分からないから創作感が抜けきれない。一番重要な部分を誰も描けていない。これって問題じゃないか?」


「でも、大衆はそれで満足してるから」


「他に知らないからだろ。戦中の人間に現代の飯食わしたらどうなる? きっと卒倒するぜ? 俺はね。そんな経験をしたいんだよ。今まで経験した事のないホラーを、観た事を後悔するレベルの恐怖を映画で味わいたいんだよ」


「だったら心霊系とかじゃなくて、単純にグロ映画とかいいんじゃないか?」


「違う。違うんだよ……俺は得体の知れない何かに怯えたいんだよぉ……普通に痛いだけのシーン映したってそれは現実にあり得る事だろう? 俺は非現実的なのに理屈で怖いって思える映画体験がしたいんだよぉ……分かってくれよぉ……」


「分からん……逆に、どういう恐怖を望んでるんだ君は。死ぬ意外の終着点だと、どんなものがある」


「そうだなぁ……めっちゃ友達とかできるけど、みんな死んでくみたいな。それが一生続くみたいな感じ」


「割とありがちだな。それに、そうなる理屈が分からんじゃないか」


「そこはまぁ、適当に創作してもらって」


「人任せ過ぎるだろ」


「だって俺の想像の範囲内だったら怖くないじゃん。俺ができない事をやってほしいんだよ」


「難儀な奴だな……」




 その後店を出て菅原君と別れた俺は彼に恐怖と悲しみをプレゼントしてやることにした。自殺してやるのだ。遺書には“菅原君が望む事をする”と書いた。目の前に吊るしているロープに首を通せば死ぬ。死んじゃうから、菅原君がどんな反応するかは分からないけど、狼狽してくれたらいいなぁと思った。もし幽霊という存在になれたら、彼の前に出てやろう。それで“理屈が分からない”なんていうのであれば、また話をしたいものだ、


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ホラー映画って結局どんだけ怖がらせても結果は死なんだよなぁ 白川津 中々 @taka1212384

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ