第2話 シンタロウくん

衝撃的な出会いだった。中学生になりたてのボクはあんな大人を見たことがなかった。赤髪でチャラチャラした下品な言葉使いで話しかけてくる大人を。

でも煌びやかでどこか憎めない笑顔を合わせ持った不思議な男だった。

学校にもいかずフラフラしていたボクはだんだんと夜の街にも居座った。何をするでもなくただただ時間だけを無駄にしていた。

夜になると駅前にはストリートミュージシャンがたくさん現れる。だが音楽になんて興味のないボクにはただの騒音でしかなかった。

なにげなくぼーっと眺めていると人だかりになっている弾き語りのグループがいた。3人組で駅前なのにドラムやギター、マイクなんかもたてて路上ライブスタイルで演奏している。

アイドルのような声援と黄色い声がこだましている。何が楽しんだろう、と思いながらもボーッと眺めていた。

すると急に演奏が途中で止まり、周囲がざわついている。すると、マイクをもっていたアイドル風のイケメンがふっ飛んだ。

”お!ケンカや!”と面白そうな雰囲気に近づいてみる。するとマイクを奪っている男の姿が目に飛び込んできた。

『はいどうもーマイクジャックしまーす』

集まっている黄色い歓声が悲鳴に変わる。そりゃそうだろうね。自分が応援しているイケメンが急に知らないやつにぶっ飛ばされてんだもんね。

ん?この声聞いたことある気がする、、、そんなふうに思っていると見覚えのある赤髪が見えた。

シンタロウだ!でもあの時と違い、綺麗に下ろされていた赤髪は天井についちゃうんじゃないかというくらい逆立てて、目の周りは真っ黒に塗りつぶされ、真っ黒なレザーのジャケットにレザーパンツに身を包み相変わらずこれでもかとシルバーアクセサリーをつけていた。

『ワレらやかましいんじゃ。黙って一曲聴けや』そう怒鳴るとゾロゾロと他のメンバーを従え、演奏を始めた。

『黙って聴いとれ!1曲目!メビウス!!』

怒号と帰れコールが響く中、シンタロウはあの日とおなじように自分のペースで事を運んで行った。

演奏が始まりイントロが。その間も悲鳴と怒号は止まらない。この男はほんとにイカれてるんだな。ボクはそう思いながらもただただ見ていた。

シンタロウが歌い出すと、今まで止まらなかった悲鳴と怒号がピタッと止んだ。そして今まで音楽になんて興味もなかったボクにも衝撃を与えた。

”え?何この声、、、めっちゃかっこいい!”

純粋のそう思えた。そしてのめりこんだ。食い入るように聞き惚れていた。と同時にシンタロウの夢が垣間見えた気がした。

この人はこれで夢を掴むってことか、そう思った。そうしているうちに1曲終わった。シンタロウがいう。

『にいちゃん、すまんかったな。オーディエンスもすまんな。でもこれが俺のやり方じゃい!』

今まで悲鳴をあげていた黄色い声援の主どもの声も歓声に変わっていた。いつしかシンタロウのペースにみんなハマっていた。

『今度、そこのシルキーホールでライブやるからみんなこいよ!』そう言って颯爽と帰って行った。

帰り際、ボクを見つけたシンタロウが

『お!あんときの少年やんけ。ワレも見とったんかい!よっしゃ、ついてこい。』とボクの手を引っ張った。

断ることもできないまま強引にボクは連れて行かれた。

そう、これがシンタロウとの出会い第2章になっていく。

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底辺〜クズの見たセカイ〜 イズム @deadsta

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