最終話 苦いなぁ

登場人物


山西やまにし太希たいき

性別:男

年齢:25

身長:172


神川かみがわ水樹みずき

性別:女

年齢:25

身長:163


中星なかぼし圭吾けいご

性別:男

年齢:25

身長:182






水樹みずきの家に七海ななみが訪れている頃。

太希たいきの家には圭吾けいごが訪れていた。


「で?何しに来たんだ?お前。」


そう太希が圭吾に尋ねる。


「ん?られた親友の心の傷を癒してやろうと思ってな。」


そう言いながら圭吾がコンビニの袋から取り出したのは“チューハイ”だった。


そのチューハイとニコニコ笑顔の圭吾を見て太希は不機嫌そうな顔をする。


「傷をえぐりに来たの間違いじゃないのか?」


そう太希が言うと圭吾は“はは”と笑ってチューハイを机の上に置く。


「実際、傷はまだえてないのか?」


そう聞かれて太希はソファーに腰を落とすと天井を見上げて考える。


「・・・この2ヶ月間。考えてた事があるんだ。」


「へぇ。なに?」


「オレは最後、あいつに何を言えば良かったんだろう…って。」


そう太希は目線を下に向けて答える。


「その答えは出たのか?」


そう圭吾に聞かれると太希は体をソファーの背もたれに預ける。


「・・・出てませぇん。」


そう太希はため息をこぼしながら答える。


「正解なんてねぇよ。」


そう圭吾が太希から目線を外して言うと

太希の視線は圭吾に向けられる。


「詳しい状況は知らないけどさ、多分なにを言っても未来は変わらなかったと思うぜ。お前達の関係はあの日…終わる運命だったんだよ。そう思わないと…前に進めないだろ?」


そう圭吾に言われて太希は視線をらす。


「・・・なんだ。ちゃんと傷を癒す気はあったんだな。」


「言ったろ?傷を癒しに来たって。」


そう圭吾は微笑みを見せる。


それから1時間ほどたわいもない話をして圭吾は帰る。


1人になった部屋で太希は机の上に置かれたチューハイの缶を見つめる。


{ねぇ、ねぇ。太希君~。

太希君もたまには飲もうよ~。}


そう酔った水樹の甘い声が太希の耳によみがえる。


それがきっかけでどんどんと思い出があふれ出てくる。


この部屋での2人だけの不思議な飲み会。

高校生の時の思い出。

そんな太希の心にふと思い出された“会話”がある。


高校2年になってすぐのこと。

水樹と2人、ベンチに座りながら話した会話。


「太希君はどんな人と結婚するんだろうね。」


「ん?なんだよ、いきなり。」


そう太希はサイダーを飲みながら目線を隣に座る水樹に向ける。


「ふと思ったんだよ。私達はどんな大人になるんだろう…って。

大人になったら…私達の関係ってどうなるんだろうね?」


そう疑問を投げる水樹の瞳には寂しい影が見えた。


「さぁ?想像もできないなぁ。

でも・・・水樹には…ずっと近くに居てほしいよ。」


そう太希は答える。


その時、水樹がどんな表情をしていたのか太希は見る事ができなかった。


太希は涙を流しながら机の上に置かれたチューハイの缶を開ける。


そしてグビグビと喉に流し込む。


「・・・苦いなぁ…」


そう太希は寂しそうに呟いた。

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2人だけの不思議な飲み会 若福清 @7205

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