第5話 もっと…早く言ってほしかった

登場人物


神川かみがわ水樹みずき

性別:女

年齢:25

身長:163


四条しじょう七海ななみ

性別:女

年齢:25

身長:144






太希たいきとの関係を終わらせて約2ヶ月。

水樹みずきは金曜日が来るたびに寂しさを強くしていた。


そんな水樹を心配して七海ななみが水樹の家を訪れていた。


七海は机の上いっぱいに置かれたチューハイの缶を見つめて呆れたようにため息をこぼす。


「もしかして、毎週、毎週こんなに飲んでるの?」


そう七海が聞くと水樹はトロけた顔を七海に向ける。


「飲んでないと苦しくて死にそうになるの。」


そう七海は声を荒くして答える。


「はぁ。アルコール依存症とかになっても知らないよ?」


そう言いながら七海は机の上の缶を片付ける。


「うるさいなぁ。七海に私の心の傷は理解できないわよ。それより、何かおつまみ作ってよ。」


そう水樹が投げ出すようにお願いする。


「おつまみってあんた、そこにスルメがあるじゃない。」


そう七海が床に置かれているスルメの袋を指差す。


「もっと家庭的なおつまみが食べたいのぉ!!」


そう水樹は駄々をこねる。


「あんたは子供か。仕方ないわね。」


そう言って立ち上がった七海はキッチンに向かう。


冷蔵庫を開けると使えそうなものがキュウリ1本だけな事に七海は呆れる。


「・・・まぁ…適当に醤油とゴマ油で味つけすればいいか。」


そう言うと七海はキュウリを取り出す。



「はい。どうぞ。」


そう言って七海ができあがったおつまみを机の上に置くと水樹は驚いたように目を大きく開く。


「どうかした?」


そう七海が聞くと水樹は首を左右に振る。


「…ううん。ありがとう。」


そうお礼を言って水樹はキュウリを1口食べる。


その後、ゴクゴクとチューハイを喉に流し込む。


「やっぱり…お酒に合うなぁ。」


そう小さく呟く水樹の声は七海には届いていない。



おつまみを食べ終えた水樹はゴロンと床に寝転がる。


「・・・2ヶ月も経つのに、まだ忘れなれないんだ。」


そう水樹が話し始める。


その水樹の話を七海は黙って聞く。


「自分から終わらせたのに…本当、情けないよねぇ。・・・もっと…素敵な女になれたら…隣に…立てたのかな?」


そう水樹は2ヶ月前には流さなかった涙ををボロボロ流す。


そんな水樹の身体を抱き上げると七海は優しい声で言った。


「あの時、喫茶店であんたから山西やまにし君を振った理由を聞いた時にも思ったけどさ…あんたは自分が思ってる以上に素敵な女だよ。それこそ…山西君の隣に居ても不思議じゃないほどに。」


その七海の言葉を聞いた水樹は七海の腕を強く掴むと「・・・もっと…早く言ってほしかった…な。もっと…早く…。」と言って顔を七海の胸にうずめる。


そんな水樹の頭を優しくでながら七海は「…それはごめんね。」と優しく謝る。



スッキリするまで泣いた七海は笑顔を取り戻すと「さぁ、今日は朝まで飲むぞ~!!」と言ってチューハイの缶を掲げる。


「さぁ、さぁ。七海にもちゃんと付き合ってもらうわよ~。」


そう笑みを見せて言うと水樹はチューハイを七海に差し出す。


「ウチ、チューハイはあんまり好きじゃないんだけどなぁ。まぁ、いいか。」


そう微笑むと七海はチューハイの缶を開けて水樹と乾杯をする。


女2人の飲み会は朝の6時ぐらいまで続いた。


8年間の想いをかき消すように…。

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