第4話 今日で終わりだよ
登場人物
性別:男
年齢:25
身長:172
性別:女
年齢:25
身長:163
酒を買って先ほどのベンチに戻った2人は楽しそうに飲み会を始める。
とは言ってもお酒を飲んでるのは
「いやぁ。ジュースの自販機もあって良かったね。」
そう言いながら水樹はサイダーをチビチビ飲んでいる
「どっちかと言うと酒の自販機の方が今時、珍しいだろ。」
そう太希は言葉を返す。
「それもそうだね。」
そう水樹は楽しそうに笑う。
その後、少しの間2人に沈黙の時間が流れる。
その沈黙を破るように水樹は話し出す。
「ねぇ。太希君。知ってた?」
「なにを?」
「
そう言いながら水樹は空に綺麗に輝く丸い月を見上げる。
「他人じゃないオレからしても、不思議に思うよ。」
そう太希は小さな声で答える。
「その不思議の理由知りたい?」
「理由?そんなのあるのか?」
「あるよ。」
そう水樹は真っ直ぐ太希を見つめて言い切る。
「なんだよ。その理由は。」
そう太希が尋ねると水樹は勇気を出すように少し間を作る。
「私の我がままだよ。」
「我がまま?」
そう太希は話の真意が分からず聞き返す。
「そう。我がまま。私が太希君になんて言って振ったか覚えてる?」
「あぁ。オレの事は好きだけど付き合えない、だろ?」
「その言葉の意味を教えてあげる。」
そう水樹が言うと太希は1度、唾を呑み込む。
「自信がなかったんだ。」
「自信?」
「太希君は素敵な
多分、私が今まで出会った全ての人より…そして…これから出会う全ての人より。でも、私はあなたの隣に立てる女になる自信がなかったの。情けないでしょ?世界で1番好きな男の隣に立つ自信がないなんて。私があなたを振った理由はただそれだけ。あなたは何も悪くない。」
8年越しに知る振られた理由に太希は少しの間、返す言葉が見つからなかった。
やっと返した太希の言葉は「そんな…理由だったのか」だった。
「でもね、情けない女は情けないだけじゃなく、我がままでもあったの。」
そう水樹は話を続ける。
「1番大好きな男の隣には立てないけど、1番近くには居たかったの。
だから女は…大好きな人の優しさと想いを利用して、不思議な関係を作った。
その不思議な関係はきっと…男も女も幸せにはしない関係なのに。」
そう告げると水樹は目線を太希に向ける。
「前にさぁ、今でも私のこと好きかどうか聞いたの覚えてる?」
そう聞かれて太希は「あぁ」と短く答える。
「その時、太希君は好きって答えてくれたよね。嬉しかった。嬉しかったよ。
でも…それと同時に辛くもあったんだ。
だって、私は太希君のその純粋な想いを利用してるんだから。自分の我がままを叶えるために。」
そう話す水樹に太希はなんて言葉を返せばいいのか分からない。
分からないが…この後、水樹が何て言うのかは不思議と分かった。
「もう、やめようか。こんな事。
私達の関係は8年前のあの日…終わったほうが良かったんだよ。だから2人だけの不思議な飲み会は…今日で終わり。
私達の関係も…今日で終わりだよ。」
そう言うと水樹は1度、何かを
そして太希の方へ笑顔を向けると
「8年間も私の我がままに付き合ってくれてありがとう。本当に幸せで楽しい日々だったよ。これからは…私よりも…素敵な…太希君のように…素敵な…そんな人を1番近くにおいて…その人と隣り合って…幸せに…過ごしてね。」
そう水樹はあふれ出しそうな想いを何とか堪えて最後の言葉を伝える。
水樹は気持ちを落ち着かせるように何度も深呼吸をするともう1度、太希に笑顔を見せる。
「帰ろ。」
そう水樹は太希に声をかける。
帰りの車の中で2人は1言も話すことはなかった。来た時と同じ10分間を2人はとても長く感じた。
太希と水樹の2人だけの不思議な飲み会はこうして終わる。
この先の人生で2人が会う事は1度もなかった。
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