2 俺の進路
魔法師団への入団か――。
俺は考え込みながら歩いていた。
その場合、魔法学園は休学もしくは退学ということになるようだ。
まあ、基本的には退学だろうな。
といっても、不祥事などではなく魔法師団入団という『栄転』なのだから、
名誉な退学と言っていい。
「うーん……」
俺は迷い続けた。
今後のことを考えると、魔法師団に入っておいた方がいいのかもしれない。
俺が魔法学園を卒業した後には、ゲーム第二部のメインイベントとも言うべき『魔王大戦』が控えている。
そこから世界を救うためには、魔法師団の力は不可欠だと俺は考えていた。
ゲーム本編ではいざこざがあって、魔王大戦勃発直後に魔法師団は全滅してしまうのだけど、その結末を知っている俺が上手く立ち回れば。全滅を回避できる可能性は十分ある。
そして魔法師団が残存した場合、その後の大戦で非常に大きな戦力となってくれることは間違いない。
何せ世界最強の魔法戦闘部隊だからな。
「あ、レイヴンくんだ!」
「この前の決勝戦、かっこよかったよ~」
「優勝おめでとう~!」
「今度デートして~!」
女子生徒たちとすれ違うと、いっせいに声をかけられた。
学内トーナメントで優勝して以来、俺はさらにモテモテになっている。
前世では非モテ人生だったから、まったく現実感がない光景だ。
まあ、モテるのは悪い気分じゃない。
「ど、どうも……ちょっと取り込み中なんだ、はは……」
俺は彼女たちに適当な返事をして去っていく。
うーん……とりあえず自宅でゆっくり考えよう。
「レイヴン様、お悩みですか」
実家に帰ってからもずっと考えていると、キサラが声をかけてきた。
「ん?」
「難しいお顔をされていましたよ?」
「そんな顔をしてたか、俺?」
「はい。眉なんて、こーんなに寄ってました」
と、キサラが眉間を思いっきり寄せる。
俺は思わず吹き出してしまった。
さっきまで思い悩んでいた気持ちが、少しほぐれた気がした。
「ずっと考え込んでても仕方ないよな。紅茶を淹れてもらってもいいかな、キサラ」
「喜んで」
「あー、落ち着く……」
やっぱりキサラの淹れてくれる紅茶は美味い。
「ふふ、レイヴン様が美味しそうに飲んでくれると、私も嬉しいです」
キサラが微笑んだ。
「実は俺……魔法師団に入らないか、って誘われてるんだ」
俺は彼女に切り出した。
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