3 キサラと二人で
「魔法師団!?」
キサラが声を上げる。
「す、す、すごいです! さすがレイヴン様!」
「誰にも言ったことはなかったんだ。前にも誘われたけど、そのときはマルスとの決勝戦に集中したいって思ったから返事もせずに……」
俺はうつむく。
「で、決勝戦が終わって一段落したからか、向こうから声をかけてきた。今度は具体的な交渉だって言われたし、向こうとしては本気で俺に魔法師団に来てほしいってことらしい。たぶん学園も辞めて、すぐに――」
「レイヴン様……」
「誰かに相談するのって苦手だから、誰にも言えなくて……どうしようって迷い続けて……でもキサラの顔を見たら、なんだか君になら相談できそうな気がしたんだ」
「……!」
キサラが驚いたように目を丸くする。
「私のことをそんなふうに――」
「キサラとなら安心して話せる」
「……嬉しいです、すごく……!」
キサラが目を潤ませた。
頬も紅潮している。
「キサラは、どう思う?」
「そうですね……」
キサラは真剣な表情になり、眉を寄せた。
まるで自分のことのように悩み、考えてくれているのが分かる。
それだけありがたいし、嬉しい。
「やはり、レイヴン様が何を重要視しているか、に尽きると思うんです」
キサラがそう切り出した。
「重要視……」
「魔法師団に入れば将来が大きく開けるでしょう。けれど一度入ってしまえば、もう学園生活には戻れない。レイヴン様はそのことに未練を持っているのではありませんか?」
「未練――か」
キサラの言葉を繰り返す俺。
「あ……すみません。私なんかが差し出がましいことを」
キサラはハッとしたように口元を押さえた。
「生意気なことを言いました……大変な失言です。私……」
「いや、そう言ってもらえることがありがたいんだ。『差し出がましい』とか『失言』だなんて思わないでくれ」
俺はキサラに言った。
「もっと踏み込んで俺に教えてほしい。キサラと話すことで、俺の気持ちも整理されていく気がするから……」
「レイヴン様……」
キサラが俺を見つめ、微笑んだ。
ああ、やっぱり彼女と話していると気持ちが安らぐ。
この世界で、彼女だけが――。
感慨にふけりながらキサラを見つめる。
と、
「最後に……私の個人的な感情をお話しますね」
「えっ……?」
「私は――」
キサラが俺に抱き着いてきた。
「キサラ――?」
「あなたが学園からいなくなるのは寂しいです……この半年あまり、あなたと一緒の学園に通えて、夢のような時間を過ごせました。それがなくなってしまうのは嫌……」
「キサラ……」
「婚約者であるマチルダ様に申し訳ないです――でも、私……」
キサラ、泣いてる……?
「少しだけ……こうさせて、ください」
俺は黙ってうなずき、彼女を抱きしめていた。
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