12 ディフォールの誘惑
『私たちは友だちになれるはずだ、マルス』
「友だち? 僕と魔族が?」
マルスはディフォールをにらみつける。
「馬鹿なことを言うな」
いくら停戦協定で人間と魔族の戦争状態が終結したとはいえ、魔族と友人になりたいとは思わなかった。
いつ彼らが人類の敵に回るか分からない――。
マルスは魔族という種族全体に対して強い警戒心を抱いている。
『私と友になれば、君には大きなメリットがあるぞ?』
「メリット?」
『たとえば――大きな力を得られる。そう、君のお友だちよりも……くくく』
ディフォールは含み笑いをしていた。
「お友だちって……」
マルスの脳裏に浮かんだのはレイヴンの顔だった。
爽やかに笑う美しい少年の顔。
マルスにとって自慢の友であり。
憧れの存在であり。
そして、絶対にかなわないと思わせられる――壁。
『彼に勝てるようになる。私と手を組めば』
ディフォールの声は、マルスの耳元で甘いささやきとなった。
「レイヴンくんに……レイヴンに、勝てる――」
ゴクリと喉を鳴らす。
『さあ、私の元に来るんだ、マルス――』
ディフォールが彼を抱き寄せようとする。
マルスはフラフラとした足取りで彼に近づき、
「……断る」
しかし、その手を払いのけた。
『私を拒むか……?』
「魔族と手を組む気はないよ」
マルスは毅然とした態度で言い放った。
「僕は強くなりたいし、レイヴンくんに勝ちたいとも思っている。けれど手段を選ばず、というわけじゃない」
『私たちの手は借りない、と?』
「そうだ」
マルスは力を込めて告げた。
「いくら停戦協定を結んでいるとはいえ、魔族は邪悪な種族だ」
『ひどい言い草だな。私たちが何をしたというのだ?』
「昔、征服戦争を起こして、多くの人間たちを殺したじゃないか」
『昔の話だろう? それを言うなら、お前たち人間も同じではないか。我々の同胞を大勢殺した。いや、そもそもお前たち同士でも数えきれないほどの戦争を繰り返している。その罪はどうなる?』
「それは――」
『魔族は邪悪だというのは、お前の固定観念であり単なるイメージに過ぎないのではないか? 少なくとも私は自分が邪悪だとは思わない』
ディフォールが言った。
『お前に声をかけたのも、純粋な好意からだ。理解してもらえると嬉しい』
「好意……」
『私は一目で分かったのだ。我々は種族の壁を越え、友人になれる存在だと。だからこそ見過ごせない。私は、お前の苦悩を取り除くための方法を知っている――』
ディフォールの言葉は、マルスの耳元で甘く響いた。
「僕は……」
からからに乾いた声で、うめく。
「僕の、返答は――」
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