5 激闘2
ばちっ、ばぢぃぃっ!
俺たちは魔力剣で激しく切り結んだ。
腕は――マルスの方が上か。
俺は徐々に押されていく。
もともとマルスの身体能力は高い。
それに引き換え、俺は――レイヴン・ドラクセルは魔法に関しては超天才だけど、肉体的な能力は凡庸だ。
ただ、魔力剣自体の出力は、さすがに俺の方がかなり大きいため、『剣の実力』で押すマルスを、『魔力剣の威力』で勝る俺が受け、ときに跳ね返す――という展開になっていた。
「さすがに強いね!」
「お前もな!」
俺たちは斬り合いながら叫ぶ。
気分が高揚していた。
俺たちは対等の勝負をしている。
勝ちたい気持ちと同じように、手ごわい友への敬意を感じながら、俺は夢中で剣を振るっていた。
それが嬉しかった。
楽しかった。
充実していた。
いつしか俺は、笑っていた。
「おおおおおおおおおおっ……!」
さらに魔力を込め、【ルーンブレード】を突き出す。
「弾けろぉっ!」
そして魔力を全解放。
「う、うわぁっ……!?」
魔力剣の先端部が爆裂し、マルスを大きく吹き飛ばした。
「これでどうだ、マルス……?」
俺は荒い息をつきながら、前方を見据えた。
魔力にはまだ余裕があるけど、ここまでの剣戟で体力をかなり消耗してしまった。
「くっ……」
さすがにマルスもダメージが大きいみたいで、なかなか立ち上がれない様子だ。
ライフポイントを見ても、すでに30を切っている。
おそらく、あと一撃与えれば、確実に0になるだろう。
対する俺のライフはまだ2000近く残っている。
こちらも安全圏とは言えないけれど、マルスが仮に反撃してきても、まだ何発かは耐えられる。
終盤に来て、俺の優位が目に見えてきた――。
「……まだ……だ……っ」
マルスが弱々しく立ち上がる。
「――諦めないんだな」
「当たり前だ。僕は君に勝つために、ここに来た……!」
マルスの瞳が燃えていた。
普段の、優しくて穏やかな彼の顔はどこにもない。
闘志に満ちた戦士のような顔。
「あと一撃でお前のライフは0になる。分かってるだろ?」
「それがどうした」
マルスはひるまない。
「後は一撃も食らわず君のライフを0にするだけさ……!」
「なるほど――」
俺はニヤリと笑った。
「普通ならこの状況で諦め、敗北を悟るだろう。けどお前は――」
諦めるという言葉を知らない。
「それでこそマルスだ。それでこそ――」
主人公、だな。
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