第6章 揺らぎ始める運命編
1 新学期スタート
そして――夏休みが終わり、新学期になった。
季節は九月の半ば。
すっかり秋になり気温も涼しくなってきた。
ちなみにこの世界……というか、俺が住んでいる王国の四季は日本と似たような感じで、春夏秋冬がはっきり分かれている。
今の俺は夏服の制服を着ているんだけど、十月になると冬服に衣替えだ。
「今日から学校ですね、レイヴン様」
「嬉しそうだな、キサラ」
「マチルダ様たちと毎日学校で会えるのが嬉しいです」
「仲いいもんな」
「えへへ、身分違いの私にもすごく優しいですから、マチルダ様」
キサラは嬉しそうに目を細めた。
「夏休みもいいですけど、学校のみんなと会えないのはやっぱり寂しいんです」
「ああ、確かに……俺も休みが楽しい気持ちと、そろそろ学校のみんなに会いたいなって気持ちと半分半分くらいだったな。マルスともしばらく話してないし……」
「ふふ、マルスさんと仲いいですよね、レイブン様。ちゃんとレイヴン様にお友だちができて、私嬉しいです」
「はは、俺も学校で親しく話せる相手ができると思ってなかったよ」
言いながら、俺はちょっと照れてしまった。
さあ、また学校が始まるぞ――!
俺とキサラは学園の校舎に入った。
前方から長い金髪の美少女が歩いてくる。
「おはよう、マチルダ」
「ひ、久しぶりね、レイヴン」
マチルダの目が泳いでいた。
「ん? どうした?」
「もう、レイヴン様ったら。女心をもう少し理解されてはいかがですか」
キサラが珍しく俺をたしなめた。
「久しぶりに会えたんですから。マチルダ様だって舞い上がりますよ……ふふ、そういうところが可愛いんですよね」
「女心? マチルダが舞い上がってる?」
俺は頭の中にハテナマークが浮かぶのを感じた。
まさか、マチルダが俺にデレてるわけ……ないよな?
こいつはルートによっては主人公にデレるルートがあるはずだけど、レイヴンとくっつくルートなんてない。
「……本気で分かってないわけじゃないですよね?」
キサラがジト目になった。
「いいのよ、キサラ。こいつはもともと信じられないくらい鈍感だし」
マチルダがキサラに言った。
「……まあ、そういうところも悪くないかな、って」
「ふふ、マチルダ様すっかり乙女の顔に」
「や、やめてよ、キサラ。っていうか、あんたこそどうなのよ? レイヴンのこと――」
「っ……! わ、私はあくまでもメイドですし、身分が違いすぎるので、あのそのっ……!」
今度はキサラの目が泳いでいる。
二人ともどうしたんだ……?
俺はマチルダ、キサラと一緒に教室に向かう。
「レイヴンくん、久しぶりだね」
マルスがやって来た。
あいかわらず爽やかだ。
「おう、久しぶり」
俺はニヤリと笑って答えた。
こうして一人一人と会うと、新学期が始まったという感じがする――。
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