ススキは爆発する。
七生ナナナナ
第1話 ススキは爆発する。
ススキは爆発する。
ススキ。漢字で書けば芒、または薄。
調べてみたところ薄は草むらの意味で、芒の方が本来的であるらしい。
いや、そんな事はどうでもいい。
ススキは爆発する。
ススキは爆発するのだ。
これは、確かなことである。
何しろ、この私が身をもって体験したことである。
ススキは爆発する。
そう、あれは私が小学生の頃のことであった。
皆さんは"ふぁみこん"なるものをご存じだろうか?
ファミコン。ファミリーコンピューター。
今となっては過去のものとなって久しい、古のゲーム機である。
私が小学生の時、所謂ファミコンブームが巻き起こった。このファミコンブームをもって、今に続く家庭用TVゲーム文化が日本に根付いたのだ。
思えば、私の世代がメンコやビー玉、泥玉、喧嘩駒を味わった最後の世代であるかもしれない。
いや、そんなことはどうでもいい。
このファミコンなるものは、TVに繋いで映像を出力する。
いや、ご存じだとは思うが。
このTVと繋げるアダプターの先にはカバーがあって、このカバーから頻繁にケーブルが破断し、その度修繕するのだが、次第に面倒になってカバーを使わず、裸の銅線をTVの出っ張ってる箇所に引っ掛けるようになる。
上手い事出力できればスーパーマリオもやりたい放題だ。引っ掛けるだけであるので簡単ではある。
だがしかし。
折れる。
何故なら、その銅線はすぐ折れる銅線なのである。
何しろ裸の銅線である。裸の銅線が、折れない銅線なわけが無い。
故に、折れる。
これが折れてしまっては大変なことである。
何しろファミコンの映像出力が出来ない。
学校から帰って来てドラクエIIをやりたくても、TVに映らなければ遊ぶ事は出来ない。
そんなわけで、やはり頻繁にケーブルを修繕する事となる。
ススキの爆発は、このケーブル修繕作業時に起こった事である。
その日も三ヵ月から半年程度の頻度で起こる銅線の破断により、TV出力が不能となっていた。TVの後方からケーブルを引っ張り出し、面倒な作業を行う。
カッターでケーブルを覆うゴムを開き、銅線をむき出しにする作業だ。
今思えば、面倒でもカバーを付けた方が銅線の破断の頻度を1年おき程度に抑えられたかもしれない。
だがしかし。1秒でも早くゼルダをやりたい当時の小学生に、カバーを付ける5分の我慢は酷なものであったのであろう。
刹那的な衝動に駆られたその小学生は、やはり銅線のままTVに引っ掛けようとする。居間のTVの奥は薄暗い。隣の仏壇からライターを取り出し、奥を覗き込み、火を付けたその時であった。
ぼんっ
ススキが爆発した。
居間の壺の、おもむろに挿して飾ったススキの束。
そのススキが、爆発したのである。
おおあぇえっ!?と叫び、転がり慌てる小学生の私。
何が起こったかわからない。
動転しながら壺を見ると、ススキの束が見事な程に枯れ果てていた。
ススキが爆発した!
小学生には理解しがたい現実。
今となっては、何故ススキが爆発したのか、その理由は想定出来る。
長年居間の壺に挿した、乾燥しきったススキの穂。
それがライターの火によって、爆発的に燃焼したわけだ。つまりは粉塵爆発に近しい現象だったのであろう。
私は程なく帰ってきた兄に、必死にススキが爆発した!と訴えるも、全く相手にされなかった。
親にも、友達にも、先生に伝えても、ススキが爆発した事実を皆信じてくれなかった。
その哀しい現実は幼い私の心の奥底に影を落としただろう。うん、多分。
以上が私が体験した全てである。
どうか皆さんには、ススキが爆発するという紛うこと無き事実を信じて頂きたい。
ススキは、爆発する。
ススキは爆発する。 七生ナナナナ @nanao77
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