第20話 ジュニアユース受験への決意
悠斗は、東京都大会での大敗から数週間が経った後も、その悔しさを忘れることができなかった。SC東京U-12に4-0で惨敗したあの日のことを思い出すたびに、胸が苦しくなる。だが同時に、それが悠斗にとって新たな決意を固めるきっかけとなった。今まで以上に強くなりたい、自分の限界を超えたいという気持ちが芽生えたのだ。
都大会の敗北後、悠斗は家で一人考え込んでいた。サッカーを続ける以上、ただ楽しくプレーするだけでは満足できない。このままでは、自分が目指している場所には到達できないことを痛感していた。そこで頭に浮かんだのが、SC東京ジュニアユースの受験だった。
SC東京はプロの下部組織であり、全国的にもトップクラスの実力を誇る。ジュニアユースのセレクションは非常に厳しく、通過するのは一握りの選手だけだと聞いていた。しかし、悠斗はこの挑戦を避けることができなかった。SC東京に勝てなかった今、その強さを直接感じ、そこで自分を磨くことが唯一の道だと信じていた。
彼の心は決まった。だが、同時に不安もあった。家族や友人にこの話をどう切り出せばいいのか、そして受験に失敗したらどうなるのか。だが、悠斗はそれらの不安を振り払った。サッカーを始めた頃から、自分は常に前に進んできた。目の前の壁を乗り越えることでしか、さらなる成長はない。
学校の帰り道、家に帰る途中で悠斗は携帯を取り出し、SC東京のジュニアユースのセレクション情報を再確認した。応募期限はまだ先だったが、準備に時間はかかる。セレクションには技術だけでなく、身体的な強さやメンタルの強さも問われることは明らかだった。これまでとは違うレベルの試験であり、悠斗にとっては大きな挑戦だ。
家に帰ると、リビングには両親がいた。悠斗は意を決して、SC東京ジュニアユースを受ける決意を伝えた。
「お父さん、お母さん、僕、SC東京ジュニアユースのセレクションを受けたいんだ。」
両親は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに真剣な表情に変わった。父は、東京都大会での敗北を目の当たりにして以来、悠斗の様子がいつもと違っていることに気づいていた。
「本当にそれでいいんだな?セレクションは簡単じゃないし、受かる保証もない。でも、受けることで何かを学べるのなら、応援するよ」と父が静かに言った。
母も同意して、「夢に向かって挑戦するのは大事なことよ。でも、何があっても自分を見失わないでね」と優しく言葉をかけた。
家族の理解と応援を得て、悠斗の決意はさらに固まった。その夜、彼はこれからの練習メニューを見直し、セレクションに向けた具体的な準備を始めることにした。セレクションの日までに、どれだけ自分を高めることができるかが勝負だ。
次の日、チームの練習に参加した悠斗は、いつも以上に集中してトレーニングに取り組んだ。ボールタッチの精度、パスのスピード、動き出しのタイミング、すべてに意識を向けてプレーした。監督も、その変化に気づき「何かあったのか?」と声をかけてきた。
「実は、SC東京ジュニアユースのセレクションを受けようと思っています。」
監督は一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに笑みを浮かべ、「そうか。お前ならきっと良い結果が出せるはずだ。だが、油断は禁物だぞ。練習を怠らず、セレクションに向けて全力で準備しろ」とアドバイスをくれた。
それからの日々、悠斗はいつも以上に集中してトレーニングに取り組んだ。休日も自主練習を重ね、フィジカルを強化するためにランニングや筋力トレーニングも取り入れた。仲間たちと切磋琢磨しながら、少しでも自分のスキルを向上させようと努力を続けた。
一方で、SC東京のジュニアユースに挑戦することは、悠斗にとってはリスクでもあった。失敗すれば、今まで積み上げてきた努力が無駄になるかもしれない。しかし、挑戦しなければ何も変わらない。悠斗はその事実をしっかりと理解していた。怖さはあったが、その怖さが彼を強くし、前に進む力を与えていた。
そして、セレクションの日が近づくにつれ、悠斗の中に少しずつ自信が芽生えてきた。これまでの努力は決して無駄ではなかった。自分がどこまでやれるのかを試す場が、ついにやってくる。悠斗は、自分の成長を信じ、次のステップへと足を踏み出そうとしていた。
再生のフィールド〜未来を視る少年〜 @suzujo
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