夢と溶液

まぁ

夢と溶液

僕と翔斗は、ずっと仲が良かった。

幼稚園の頃から一緒で、同じ部活に入って、同じ中学に通っていた。

彼は、僕の一生の友達になるだろうと、心の底から信じていた。


いつも隣にいて、バカなことをやって、一緒に笑った。

本当に、楽しかった。


でも、ある日、全てが終わった。何気ない、いつも通りの日に。


その日は玄関の前で彼の母親が立っていた。

悲しそうな顔をして、何かを伝えようとしていた。


そこからの記憶は曖昧だ。

全てがモノクロに見えて、映画を見ているような感覚に襲われた。

気づけば僕は高校生になっていて、体も大きくなっていた。

僕の中で止まっていた時間とは裏腹に、現実は確実に進んでいた。



あの日、僕が失った親友が、僕の高校の前に立っていた。


「翔斗...?」

「やぁ、久しぶりだね、拓真。」

「嘘だろ?翔斗...本当にお前か?」


僕は頬をつねる。

痛みを感じた。


「痛い...ってことは、夢じゃないのか!?」


「翔斗は死んだんだ。なんで今、ここにいるんだよ!」


僕は彼の手を握った。感触が確かにあった。

「幻覚じゃない...どうかしてる...はは。」


「変なこと言わないでよ。僕はちゃんと生きてるんだ。」


「でも...お前は...」


言葉が出てこない。


「今日、学校サボらないか?行きたい場所があるんだ。」

「まあ、いいけど。どこに行くんだ?」


「俺らの秘密基地だよ。忘れたのか?」



久しぶりの秘密基地。

あの日以来、僕は一度も訪れていなかった場所。

裏山を越えた先の広場に、僕と翔斗はよく遊びに行っていた。


考え事をしているうちに、翔斗はどんどん前へ進んでいた。


「おーい、置いてくぞ!」

翔斗に急かされるのも、久しぶりだ。


「今行くよ!」


自然はほとんど変わっていなかった。

昔見た風景のままで、懐かしさが胸に広がった。


開けた場所に着くと、錆びついたトタン小屋が見えてきた。

僕は、手前で手を振る翔斗を見ながら「早いよ!」と笑う。

でも、心の中では泣きたくて仕方がなかった。


立て付けの悪いトタン小屋の扉を開ける。

内装は昔と変わらず、椅子と簡単なベッドが置かれているだけだった。

僕は、独特な匂いを感じながら、昔の定位置だったベッドに腰を下ろした。


「懐かしい...」


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「はぁ...はぁ...」

気のせいだったのか。

たまにこういうことがある。

気分が悪い。


自室に戻ってベッドから起き上がると、汗で体がベタベタだ。


「シャワーを浴びないと...」


僕は自室のドアを開け、暗い廊下を歩き始めた。



「翔斗君が来たわよー」

母の声が響く。


僕はいつものように無邪気な笑顔で答えた。

「今行くよ!」


廊下を駆け抜け、玄関のドアを開ける。


でも、そこには誰もいなかった。


「翔斗?どこに隠れてるんだ?」

「ねえ、どこだよ?」


蒸し暑い夏の気温が、僕の体を包み込む。


身体が急激に成長していく感覚がする。


僕は玄関の隅にある靴置きの暗がりに囚われた。


「どうして!?」

「暗いよ、怖いよ...」

恐怖に侵されて、声が震える。


誰もいない。ここには、誰もいない。


「どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?」



洗面所にたどり着き、鏡を見る。

ひどい顔をしているだろうから、本当は見たくなかった。

想像通りの顔だった。


服を脱ぎ、痩せこけた体が露わになる。

震える手で浴室に入り、ドアを閉める。


ぬるくて不快な液体が、僕の体にかかる。


救いのようにも思えたが

或いは...


浴槽に入る気になれず、すぐに浴室を出て体を拭いた。

冷たい感覚に襲われ、全身に嫌悪感が広がる。


「もう二度と、入りたくない。」



僕は自室に戻り、鍵をかけた。


「眠ろう。」


【心臓の鼓動が

ドク     ドク   ドク ドク】


【翔斗の体は 分裂して僕の脳内に。】


【44Gr44GS44Gf44GE44CC44Go44GG44Gy44GX44Gf44GE44CCDQrjgZTjgoHjgpPjgarjgZXjgYTjgILjgobjgovjgZXjgozjgarjgYTjgII】



縄を垂らす。


救いかどうかはわからないが。


「これで良いんだ。」


そう最後呟いた。

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