いっしょにお風呂 シャンプーとドライヤー

「……あ、起きた。おはよ。ううん、大丈夫。そんなには寝てないよ。うん、起こしたら悪いかなって。ふふ、すっごく気持ちよさそうな顔で寝てたよ。可愛かった。ううん、わたしも嬉しかったし」


「あ、そうだね。お風呂は入らないと……。ん。そうだ。いいこと考えた。マッサージ屋さんはもう終わりだけど、もっと癒すことはできるな~って。そ、それがお風呂。お風呂は癒しチャンスがいっぱいあるよ~。うん、そうそう。だからお風呂、いっしょに入ろ?」


 脱衣所の扉をカラカラと開く。

 すると早速、彼女がこちらに近付いてきた。


「は~い、もうサービスは始まってますよ~。服、脱がしてあげるね。はい、ばんざーいしてください。恥ずかしい? そうだね~、これは恥ずかしいよね~。子供みたいだよね~。でもせっかくだから。癒し……、癒し処……、そう、癒し処のあなただけの特別サービス。愛情コースだから! はい、服脱がせるよ。腕上げて。はい、ばんざーい」


 言われるがまま、両手を上げる。

 そのまま、服を脱がされてしまった。


「はーい、いい子ですね~。じゃ、次は下も~……。ん、ちょっと待ってね、ベルト外す……。あ、外れた。は~い、ズボン降ろしま~す。足をあげてくださ~い。右~、左~。はい、よくできました。うん、そのまま入ってて。わたしもすぐ入るから」


「あ、それとも~? わたしのも脱がしたい? えっちだなあ、もう。ううん、いい、いい。身体冷えちゃうから入っちゃって。うん、は~い」


 風呂場の扉を開き、まずはかけ湯をする。

 しばらくシャワーを浴びていると、扉がカラカラ……、と開いた。


「おまたせ~。お、ちょうどいいね。頭洗ったげるよ。そ。それが癒し処のサービス。人に頭洗ってもらうのって、気持ちよくない? ほら、遠慮しないしない。だって、そうじゃなかったら、いっしょにお風呂に入った意味ないでしょ。わたし、ただ裸を見せに来ただけになっちゃう。……十分嬉しい? バカだなあ。ほら、いいから前向く。あんまり人の裸をじろじろ見ない」


 シャワーヘッドを手に取り、彼女はこちらの頭に向ける。

 サー……っという水音がお風呂場をいっぱいにした。


「頭を洗っていくけど……。シャンプーの前にね、ちゃんとお湯で頭を予洗いしようね。そ、予洗い。ダメだよお、すぐシャンプー付けちゃ。シャンプーはね、しっかりと髪を濡らして、汚れを取ってから、付けるの。お湯だけで大体の汚れは落ちるっていうんだから」


「はーい、まんべんなく濡らしていきますよ~……。気持ちいい? そうだよねえ、これだけでもう気持ちいいよね。じゃぶじゃぶじゃぶ……。このときにもうね、髪を洗っちゃうんだ」


 彼女の指が髪の毛をかき分け、丁寧に洗われていく。

 水音が髪と絡まり、じゃぶじゃぶじゃぶ、と響き、水滴が床へと落ちていった。

 やがて、キュっと蛇口を閉める音が聞こえる。


「ん。十分かな。それじゃ、今度こそシャンプーを付けていくね~……。あ、これも注意ね。シャンプーってね、いきなり髪に付けちゃダメなんだよ。まずは手の上でちゃ~んと馴染ませて、広げて……。しっかりと泡が立ってきたのを確認してから、髪につける! これね、絶対やってね。そのままつけるのは、頭皮によくないから」


 くちゅくちゅくちゅ……、というシャンプーの音が、徐々に泡音に代わっていく。

 そうしてから、彼女はゆっくりと髪にシャンプーを付けていった。


「それでね、髪の毛全体に行きわたるように、ゆっくりと泡を広げていくの。こうやって、ね。覚えておいて。……ん? 普段より泡立ちがいい? あ、最初に予洗いをきちんとやったからだよ! ね、大事でしょ?」 


 ごしごし、という頭皮を指で洗う音と泡立ちの音が重なっていく。


「はい、わしゃわしゃわしゃ……。あ、洗うときは絶対に爪の先を立てないでね。指のお腹でマッサージするように洗うの。こんな感じで……。うん。気持ちいいでしょ? あんまり力は入れないでいいんだよ。これくらいでいいの。はい、ごしごしごし……」


「お客様~、かゆいところはございませんか~? ふふ、定番だよね。……ん? どこどこ? あ、ここね。ちょっと掻いちゃうね。はい、どう? おっけーおっけー。そうだよねえ、美容院だと本当にかゆくても言いづらいよね。は~い、ほかにはないですか~? それはよかったです~。気持ちいいですか~? ありがとうございま~す」


「ん。こんな感じかな。じゃ、流していこっか」


 シャワーヘッドを手に取り、お湯を出すと、今度は水音が室内に響く。

 そのまま髪にあてられ、心地よい温度のお湯が髪の間を抜けていった。

 彼女が髪に手を触れることで、その音がより複雑になっていく。


「はい、ごしごしごしごし……。これも重要でね、最後はしっかりとシャンプーを落とすこと! シャンプーが残るとね、せっかく洗ったのに毛穴に詰まっちゃうから。だからしっかりと、お湯で洗い落とすこと。わかった? はい、いい子~」

 

 そのまま、ジャブジャブとお湯を髪にあてていく。


「毛穴に油脂が詰まるとね、抜け毛の原因になったりするんだから。せっかくなら綺麗な頭と髪でいたいでしょ? だからこうやって、面倒くさがらずに洗い流してくださいね~」


 しばらく洗ってから、きゅっと蛇口を閉めた。


「ん。こんなもんかな。よしよし。じゃ、次はコンディショナー……。……え? いやいや、大丈夫だよ。なに? 遠慮してるの? だいじょ~ぶ、わたしが頭だけじゃなくて、身体までし~っかり洗ってあげるから! えぇ、なに赤くなってんの~? 恥ずかしいの? も~、かわいいな~。そんな子には~、抱き着いちゃうぞ~!」


「……は~。あったかい……。なんかこ~……。人肌っていいよね……。ううん、寒くないよ。ただちょっと、愛おしくなっただけ。もうちょっとこのままでいさせて。すぐにコンディショナーもするからね」


「……えぇ? わたしはいいよ。髪は自分で洗いたいもん~。え、身体? 身体は恥ずかしいよお。いや、君はいいじゃない、別に。え~……? わかったよぉ、じゃああとで洗ってもらおうかな? あはは、わかったって――」



――


 カラカラ……、とお風呂場の扉が開く。


「はぁ~……、気持ちよかったね~……。やっぱりお風呂はちゃんとお湯に浸からないとねえ。君、いつもシャワーで済ませちゃうじゃない? 今度から、毎回いっしょに入ろっか?」


「あ、だいじょぶだいじょぶ。拭いてあげるよ。はーい、お顔を見せてくださ~い……。はい、ぽんぽん。タオルでごしごし拭くのって駄目なんだよ。覚えておいてね~」


「頭も拭いていきますね。はい、わしゃわしゃ。髪はちゃんと乾かさないとだめだからね。あとでドライヤーしようね。うん、いい子。はーい、拭いていきますよ~。ん。耳もちゃんと拭こうね。耳の穴にも水が入ってるから、指入れるよ~、ごめんね~。はい。こっちも~、はい。大丈夫そう? おっけ~」


「身体も拭いていくね。はい、ぽんぽん……。ん、両手挙げてください。はい、ばんざーい。恥ずかしがらな~い。はい、偉いね、いい子~。脇もちゃんと拭いて~……。よしよし。ちゃんと拭きとらないとね、風邪ひいちゃうから」


「よし。拭けた。ん? わたしも拭いてくれるの? も~、えっち~。でもそう言ってくれるのなら、お願いしよっかな? はい、お願いしま~す。……いや、そこで照れるの? ちょっと~、いや待ってよ、わたしまで恥ずかしくなってくるじゃん~……」


「はいはい、拭けたんだからさっさと服着る! そんで、出てく! いいから、も~」


 扉を開く音のあと、ぺたぺたと足音がついてくる。

 しばらく待っていると、パジャマを着た彼女が同じようにぺたぺたという足音とともに現れた。


「ふぅ~……。あれ。髪の毛、乾かしてないの? ダメだよお、濡れっぱなしは~。一番頭皮によくないんだよ? しょうがないなあ、癒し処延長! 髪を乾かしてあげるから。こっちおいで」


「ほら、はーやーく。おいでってば。よくないよ~、男の人ってすぐ面倒くさがるよね。はい、ここ座ってください。じゃ、ドライヤー持ってくるからね」


「ん。では、乾かしていきま~す。熱かったら言ってくださいね~」


 スイッチをオンにすると、途端に風音が聞こえてくる。


「わたし、結構ドライヤー好きだけどなあ。や、自分でやるのは面倒くさいよ? でも、こうやって人にやってもらうのって気持ちよくない? あ、ほらあ。気持ちいいでしょ? よかったよかった。ん、わかるよ。面倒くさいのはね。でも大事なんだから」


「ドライヤーもね、あんまり髪に近付けちゃダメなんだよ~。髪がやけどしちゃうから。これくらい。これくらいでいいの。うん、遠いけどさ。でもいいの、こうやって髪に触れながら、まんべんな~く乾かしていくの」


「……しょうがないなあ。じゃあ、明日からはわたしが毎日やったげるから。それでいい? も~、甘えんぼさんだな~。別にいいけどね、嬉しいくらいだけど。だって、あんまり甘えてくれないじゃない? うん。もっと甘えてほしいよ」


「は~い。ちゃんと乾いたかな~? うん、おっけおっけ。格好いいよ。はい、お疲れ様~。うん、これで癒し処は閉店かな? ほかにやってほしいことある? ……え、あるの? なになに、何でも言って?」


「……『お疲れ様のぎゅ~、をもう一回』? えぇ、なにぃそれぇ。もうかわいいな~、いくらでもしていいよ、そんなの。じゃ、最後に! お疲れ様の、ぎゅ~! 大好きだよ~!」


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世話焼き同棲彼女とのマッサージ屋さんごっこ 西織 @tofu000

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