TWO HEROES ARE


 目の前には、喪心した親友と焼死体があった。


 「は…?」と武蔵の声が聞こえた。

 自分でも何が起きているか分からなかった。焦げ付いた拳や血だらけの身体、貫通された心臓、全てが、治っている。

 「生き返った。」余りの困惑に、他人事の様な事を言ってしまう。

 「鶴来、お前。」武蔵は呆気にとられて言う。

 「多分お前、やばい能力持ってるぞ。」俺も同感だった。


 恐らく俺の能力は、"不死身"だ。



 そこから暫く2人で歩いて、王室の前に着いた。2人で重たい鉄の扉を押し開けた。王をすぐ殺せるように、銃を構えて周りを見渡す。


 「助けてください!」

 そこに王はおらず、どこかで見た少年が助けを求めていた。武蔵と顔を合わせる。何が起きている?

 「どうした?もう大丈夫だぞ。」銃をしまい、近寄ろうとする。

 「待て、ちょっと待て、絶対おかしい。」武蔵が必死に止める。

 「王の能力を思い出せ。」武蔵の顔が青ざめてゆく。


 言われてから全て理解した。王の能力は、"奪取"。触った相手の体に乗り移る能力だ。つまり───。

 「もう遅い。」後ろから声が聞こえ、背中を触られた。少年は、かつての王と同じ能力を持っていた。

 「お前、ラファ王の孫に乗り移ったな?」そのまま銃を撃っていれば、と後悔する。

 「正解だ。」王は満足気に言う。

 「武蔵、ごめんな。俺のせいだ。」武蔵の顔を見る。

 「大丈夫だ。2人なら勝てる。」それでも武蔵は勇敢だった。

 急激に意識が遠のいていった。同時に、少年の頭は破裂した。準備万端だなと呆れる。





 「起きろ、倒したぞ。」という武蔵の声で起きた。最初は理解出来なかった。

 「王を倒した。これで国は平和になったんだ。」武蔵は疲れ切ったように言う。

 「本当、なのか?」俺は武蔵が王を倒したのだとやっと理解した。

 「ああ。」武蔵は頷いた。

 「お前は、本当に強いな。」友人には王になれる器があるのではないかと思う。

 「疲れたから、1回街へ帰ろう」

 「ああ、何があったか聞かせてくれよ。」そう言って、武蔵と歩き始めた。



 いや、待て。おかしい、絶対におかしい。猛烈な違和感がある。

 王を倒した?どうやって。俺の能力は、"不死身"なんだぞ?生きた人間は俺と武蔵しかいなかった。

 王は、どこにいる?

 王の居場所は、武蔵の体しかない。

 俺が不死身だと知っているのは、俺と武蔵だけだ。つまりこの状況は、武蔵からの伝言だ。

 俺は銃を構えた。


 「よう、魔王。」


 「ほう?ハハ、見事だ。」


 轟音が鳴り響いた。同時に、武蔵の頭は爆散した。


 「確かに、2人だから勝てた。」何ともやりきれなかった。王は倒せたが、武蔵も同時に死んでしまった。これで良かったのだろうか。


 いや、そうか。"70年程生きて、私はやっと気づいた。"その言葉を思い出した。

 待っていてくれ、武蔵。



 その王国には、2人の勇者がいた。2人は友であった。2人は果敢たる人間だった。2人に敵う者などいなかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

GELATO ESCARGOT キュンです @kyunkyunsurune

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画