『短歌の秋』投稿作品 ー我がために

我がために破滅させたき君ゆえに蛇となりけり道成寺のごと

我がために破滅させたき君ゆえに蛇となりけり道成寺（どうじょうじ）のごと

＊＊道成寺は歌舞伎の演目です＊＊

　美青年の僧侶、安珍に一目惚れした清姫の狂気じみた想念から逃げ出した安珍を道成寺の僧侶たちは哀れに思い、地につけた釣鐘の中に匿（かくま）います。

　ですが、安珍恋しさで追ってきた清姫は大蛇になり、釣鐘に巻きつくと、わが身もろとも安珍を焼き殺してしまったという物語。

　私の父の実家近くに道成寺がありました。

　境内には清姫の化身とされる大樹があります。太い幹が蛇のようにうねって絡まり合い、禍々（まがまが）しかったです。

　お寺には、火を噴く蛇の清姫から逃げようと、道成寺の石段を必死に上る安珍が描かれた掛け軸もありました。