枯れ尾花2

若者達が暇を持て余している時に「奈無橋を渡る者がいない」という話が出た。一人の者が「館で一番の馬があれば渡ってみせる。」と豪語したため、行く羽目になった。仕方なく男は馬を借りてその尻に油を塗ると、橋に赴いた。夕暮れ近くに橋に着くと、中ほどに女の姿があった。人ではないと思い駆け抜けようとすると、女が声を掛ける。無視して逃げるように駆けると、女は鬼の姿に変わって追ってきた。身の丈は高く肌は緑青、顔には丸い目が一つ、指は三本でその爪はひどく伸びて恐ろしい様子であった。鬼は何度も馬を捕まえようとしたが、尻に油が塗ってあったために捕らえることが出来なかった。そして「逃がすことはない。」と言って消えた。

命拾いした男は館に逃げ帰り、鬼の様子を話した。そして褒美に馬を貰って帰った。その後、男の家では怪事が起こったため占ってみると、鬼の祟りがあるので物忌みをせよと言われる。物忌みの日の夕刻、奥州にいた弟が戻ってくる。最初は物忌みを理由に拒んだが、母親の死を伝えに来たという弟の言葉に心を動かされ対面した。やがて男の部屋から取っ組み合いの喧嘩をする物音がするので、妻が駆けつける。男が弟を組み敷いて「刀を持ってこい。」と妻に命じる。しかし兄弟喧嘩と思った妻は応じない。今度は弟が上になると、いきなり男の首を食いちぎってしまった。そして妻の方を振り向いて「うれし」と言って消えてしまった。その顔はまさに夫が奈無橋で見たという鬼の顔そのものであった。

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花屋 高槻 @yanaomu

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