蝿の王

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ある無能な王の話をしよう。

その王は産まれ落ちた直後に命を落とし、地獄に堕ち、亡者のような生活を送っていた

だがあることが切っ掛けで、元の世界に戻る為に玉座という力を得た。その力は絶大で、あらゆる生命を支配し、莫大かつ桁外れな魔法を行使することが可能であり、それは正にアラヒトガミと呼ぶに相応しい力だった。

だが、その王は人格が余りにも幼く、無能で、愚かであったが故に、故郷に帰る為ではなく、己の欲を満たす為にその力を振るった。

そして、玉座を独占しそれを永遠とする為に不死者となった。だが、それは未来永劫故郷に帰ることが出来ない呪いであり、本来の目的を忘れた王は更に苛烈に支配を強めた。

それに呆れ果てた民達は、王から次々と離れ、王の故郷であった天上の世界へ帰って行き、最早魔王と呼ぶに等しい嘗てのそれは、勇者によって玉座を追放され、再び奈落へ封じられた。

だが、彼は二度と死ぬことは出来ない呪いが掛かってる為、懺悔も償いも出来ず、今でも世界と己を見捨てた人々を呪う言葉を吐き続けている。

嘗ての王を讃える讃美歌だけが絶えず流れながら。