月一輪 🌙

上月くるを

月一輪 🌙



木洩日のベンチの黙や秋海棠

粗衣粗食書き詠む暮し草の花


愉快なる臍をくぼませ花梨の実

竿先を置いて行きたる赤とんぼ


秋雨に牧場の牛のうごかざる

秋霖のあとの青空ひぢまくら


モノクロの小津作品や葉鶏頭

垂乳根の母の植ゑたる鶏頭花


ほほづきや閉ぢし心を鳴らしてよ

野牡丹をいつくしみゐる老女の目


秋日濃し古墳山ろくバーガー屋

平つたきハッシュポテトや秋曇


秋果盛るかつては四人家族にて

青々と煮込み饂飩のささげかな


秋の虹ひとり残る子けんけんぱ

かなかなや古き手帳に付箋あと


雨の夜は星をかくまふ銀木犀

邯鄲や月に愛され透きとほる


祈るのは安寧ひとつ天の川

天地に育てられたる月一輪




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