7話 眠れる少女 【前編】



夢を見ている…… かわいい動物に囲まれて笑う少女がいる…… それを見下ろしている…… 化粧などしなくてもいいぐらいにきめ細かな肌…… 陽の光を浴びると煌めく髪はただただ美しく…… そして、その整った顔からは破壊的とも表現できる純粋を絵に描いたような笑顔を見せている。

俺(私)が好きだった…… いや…… 憧れていたのに胸の中の奥底に隠した…… そんな光景が目の前に広がる…… ストンッと腑に落ちる…… あぁ…… これが私(俺)なんだ…… 私でいていい姿なんだ…… 手に入れる事が出来たんだ…… 嬉しい嬉しい…… うれ…し…… 光景が溶けていく…… 違う…… 泣いているんだ…… 俺が泣いている…… 私になれる事が嬉しいと…… 性別や周りからの言葉に怯えて演じていた俺が泣いている…… 俺が…… 私になっていく…… そう辛かったんだ弱かったんだ…… 周りの視線が当たり前と言う言葉の凶器が…… 臆病な自分は耐えられなかった…… だけど隠していたんだ俺という中にいる私を…… でもこれからは違う…… 私は俺だけど俺は私になる事で本当の私になれるんだ…… これは情けない涙…… 嬉しい涙…… 全ての感情がぐちゃぐちゃになっていく上から眺めていたはずの景色はが変わっている…… 滲んだ世界を振り払うように強く目を閉じもう一度目を開く…… 景色が…… 変わった…… 可愛いわんちゃんが…… ねこちゃんがうさちゃんが…… 沢山の可愛いが私を心配そうに見つめている…… 優しく手を伸ばすと手が届く前から耳を折りたたみ撫でやすいようにしてくれる……ワシャワシャ…… ((「思ったより…… 気持ちよく無い……あれれ……」))

なんかモフモフではないゴワゴワだ…… わんちゃんがこちらを見ながら不満そうな表情をする…… 

「ごめんね…なんか想像してるだけじゃわんちゃんの感触再現できてないみたい…… ふふ…… 何か人間の頭みたいだからびっくりしちゃって……」

言い訳のような言葉をつたえて恥ずかしくなり別のわんちゃんやねこちゃんに目配せをし撫でているわんちゃんに目を戻すとわんちゃんが突然竜也の顔になる…… 

竜也「まあ、わんちゃんじゃ無いからなぁ……」

私「うわぁああああ!! 」

自身の口から出たとは思えない高い声が自身が女性になった事を理解させる……

((そっか 本当に女の子になっちゃたんだ私…))

混乱と嬉しさが無理やり遠慮なしに感情をかき混ぜていく表情の定まらない私をみて心配したような声色竜也は口を開く

竜也「どうだヨルまだ痛むか? 看護師さん呼ぶか? 」

私「ううん…… 大丈夫…… だね…… 痛みも完全になくなってるよ…… あ でも看護師さんは呼んで欲しいかも……」

竜也「おう わかった……」

短く返答をすると竜也はナースコールを押し 私が起きたこと痛みは無さそうな事等を手短に伝え来てもらうように伝える それを横目に見ながら私はベッド上で身体をゆっくり起こしてみるが痛みは感じない 左右に腰を動かしても背伸びをしても痛みは感じない しっかりと確認しながら感情も落ち着けていく

((そうだ 顔とか身体はどうなってるんだろう 夢の姿が本当に私なのか確かめたいなぁ 看護師さんに聴いて問題ないなら動きたいなぁ))

竜也「あんまり 動くなよ~ 見てるこっちが心配になるからさ」

無言で身体を動かす私をみて とても心配そうに手を俺の方に向けては下ろしてを繰り返していると看護師さんが到着しバイタル測定等を行いこの後の流れを事務的な対応でおこない後から医者が来ること精密検査をおこなうためそれが終わるまでは安静にして欲しい事を伝え看護師は詰所に戻っていった それと入れ替わるようにVR社の安藤がカーテン外から声をかけてくる

安藤「浅野様(よる)竜也様……いまお時間いただいてもよろしいでしょうか?」

絶妙な空気で沈黙が続きそうだった為これ幸いと二人でアイコンタクトを行い入室してもらう

安藤「浅野様 あらためてはじめましてVR社の安藤と申します まず 今回はわが社のテスターを竜也様の代わりにに受けて頂きありがとうございました しかしながらVR機器内に人がいる可能性を考慮せず アカウントの切り替え方法をお伝えしてしまい……今回の事故が発生してしまいました 本当に申し訳ございませんでした 浅野様 竜也様 本当に本当に申し訳ございませんでした……!! 」

黙っていたら、土下座をしてしまうのではと感じるほどに申し訳ない気持ちを感じるまだ全てを理解出来ている訳ではないけど今の今までひたすら黙って待っている事から本当に謝罪をしたかったのだという気持ちを再度感じ 竜也が口を開く前に私が口を開く

私「状況をすべて理解したわけでも無いので 何といえばいいかわからないんですけど…… 今回の件は全てVR社が悪いとは言えないので…… ほら僕たちも勝手に使おうとしたわけですし…… だからお互い様という事で手をうちましょうよ」

竜也「いや ヨルが一番被害を受けてるのにそう言われちゃ俺は被害なんてほぼ受けてないからさ……ううん……俺としてもヨル本当にごめんな…… 俺が冷静になっていたらさ…… 」

私 「まあ あの時ああすれば良かったはわかるけどしかたないから割り切ろうよ…… 私が竜也とVR社に求めるのは最大限のサポートだけだし…… あんど うさん? については個人的には何も思う事は無いので ほんとうに落ち込まないでくださいね?」

安藤「あ…… はい…… ももちろん会社として病院にかかる費用をはじめその他この先起こりうる全ての事で最大限サポートさせて頂きます! 」

私が眠っている間にメール等で事前に確認をしてくれていたのだろう、即答で返事を返してくれる。

安藤「ただ 1点 お願いという形にはなるのですが…… 事故の原因究明の為 浅野様を今後もテスターとして謝礼ありで雇わせて頂きたいのです こちら都合で悪いのですが機器が何故このような性別を変えてしまう事を起こしたのか 浅野様を戻す事をできるのか含め 研究させて頂きたく…… しかしながら浅野様のプライバシーもありますので お断りされても仕方ないと当社でも考えております……本日中にお答えを頂くつもりはありませんので少しだけお心の隅をお貸し頂きたいです」

((そうだよね~ 会社としても …… っていうか会社の命運を握ってるもんね…… 協力は全然いいし謝礼も貰えるなら気にしないんだけどね~~ っでも…… 正直…… 男に戻らなくてもいいんだよなぁ…… ))

私「はい わかりましたしっかり考えてお答えをしますね」

安藤「ありがとうございます それではまだまだお忙しいと思いますので 私は外で待機させて頂きます 看護師以外で必要な御用があればお気軽に呼んでくださいね 失礼します」

少しホッとした表情をみせ 安藤さんはお辞儀をして退室していく

((とりあえずは 検査か~~~))

少し憂鬱になりつつ検査を待つことにした その後は 竜也も疲れてるだろうから帰る事を勧めたが断固として帰ろうとしなかったり 安藤さんも帰らない事がわかって気が抜けない事がわかりさらに憂鬱が増したりしながら夕食前まで時間は進んでいくのだった




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎週 火曜日 20:00 予定は変更される可能性があります

理想は理想と諦めていたはずなのに… 朝寝望(あさね ぼう) @asa_nebou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ