邂逅


「よし…行こう。」

「はい。魔導影兵団!ツーマンセルで観測&拘束をお願いします…!」

「盾影兵団!小隊に分かれて先頭と後方だ!」

「行くよ。」


勇者たちパーティ四人は森へ足を踏み入れた。

ググッと足に力をいれ土を踏むと、森の景色が一変し街や人の雰囲気などが一切遮断された感覚がする。

ピリピリと肌を刺すこの空気は緊張感なのか、殺気なのか、それとも__


「ッ【術中打破 : めざめ】!!!!」


ドンッ、と腹に音が響く。

魔導士の大声とともに放たれた魔術が空間を歪ませて相手の術を食い破った。


「あ!?気付くのはっや!…マジかよ…」

「!?」


突然頭上から見知らぬ声が聞こえた。

見知らぬ_いや、勇者はこの声を知っている。


「孤児院の、引率の男…ッ!やっぱり、」

「そのやはりだ英雄君!いやまだ英雄じゃなかったな。あー、勇者クン!…オレは魔王様の部下。8、人の幹部の一人、グロウだ。よろしくどうぞ。」

「幹部グロウ…!」


グロウはいつの間にか目の前に降りてきていて、猫みたいな伸びをしている。

ハッとして周りを見渡せば散らしていた影兵団が魔王軍部隊と戦う音が聞こえた。影兵団を先に散らばせていたのは正解だったらしく、そうでなかったらもうすでに囲まれていた。

それに、魔導士の魔力探知を上げていなければパーティの全員は今頃グロウの術中にはまったまま嬲り殺されていただろう。

そう考えて勇者は鳥肌の立ちかけた腕をさすった。


パーティ4人と対峙するは敵の幹部。

勇者は自身の盾影兵団を出そうか考えたが、隙になると思い止めた。

他のメンバーもグロウとの間合いを計りながら目はそらさない。

チッとグロウが舌打ちしたのが合図だった。


「【幻惑魔法】!」

「【魔法耐性強化:解除】!」

「助かった魔導士!」

「あー!もうマジ面倒くせぇ!!」


魔法の打ち合い。

グロウが全体効果の魔法をかけて、魔導士がそれを跳ね返して全員の耐性を上げる。

アーチャーが弓で狙って、グロウも弓で勇者を狙って、シールダーがそれを防いだ。

勇者が攻撃魔法を投げる。グロウがこともなげに弾く。


「はは!勇者サマは魔法が弱っちいんだな!」

「黙れ!」

「ひゅーかぁっこいい。【スタン】。」

「がッ!」


勇者の動きが止められた。

魔導士がすぐさまグロウにやり返す。油断していたらしく少しダメージが入った。

そのすきに残りの二人も行動を起こし、勇者のサポートに入る。


「…勇者が守られてばかりかあ。かっこ悪いなあ。」

「、かっこ悪くてもいいんです!【水鏡矢】!」

「ッ【魔力強奪】!!ッハー!!回復できた!」

「アタシらの魔力を…ッ!!」

「くそ!!」


にやりと笑ったグロウにアーチャーとシールダーが吠える。

拘束されていた勇者がそのすきに動き出し勢いをつけて連続で斬撃を放つ。

簡単に防御壁をつくられ弾かれたが、一瞬その場に縫い付けられたグロウに向かって魔導士が魔法を放った。


「【聖女の嘆き】!」

「ウゲッ!!!さいあく!!」


足元から光の手が無数に現れ、次々とグロウの身体を抑え込んでいく。

同時に、パーティ四人の魔力が多少回復した。


【聖女の嘆き】

拘束と魔力吸収の効果をもった高レベル魔法であった。



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