第8話 直霊・四魂について
直霊や四魂は、神道系の魂の捉え方、考え方ですね。
この際なので、作中に出てくる難解な単語(オリジナルも含めて)について説明とかしちゃおうかなって思います。
まず最初に前置きとして、「一霊四魂」という考え方がありますが、幕末の国学者本田親徳が提唱した考え方で、割と新しいです。古神道の考え方をまとめたものとする説もありますが、専門家の間では否定的な意見が多いですね。一霊四魂はあくまで本田個人の霊魂観とする学者さんが多いようです。
良く纏まってて面白いし(創作にはもってこいな感じです)参考にはしてますが、本作ではもっと古来からある考え方を優先して採用しています。
直霊や四魂(和魂・幸魂・荒魂・奇魂)は、個々の単語は記紀にも言葉として登場しますが、それらがどういうものか、詳細についての説明はありません。
直霊という言葉自体は、古い神社の説明などにも出てきます。「魂の一番内側にある自分自身、むき出しの自分」みたいな意味合いです。
四魂は直霊と繋ぎ合わせて説明する文書はなく、記紀や神社の由縁など読んでいる時に発見した内容を自分の心象で纏めるなら、「魂の性格」みたいなものです。
本作でも、Ⅰで「直日神の荒魂が枉津日神」という設定が出てきます。これ、私のオリジナルじゃなく、そういう提唱をしている国学者がいただけです。定説ではないけれども。
荒魂っていうと悪いイメージがあると思うし、実際にそういうのもいるんですが、「勇猛果敢な魂」である、という理解が良いのかなと思いました。というか、そういう理解が今回の本作にはふさわしいなと。
だから荒魂になった枉津日神は決して只の悪神ではなく、「あらぶった状態」になっただけ。落ち着いたら優しい神様だよ。みたいな感じです。
清浄の代表である祓戸大神である直日神の荒魂が、黄泉の穢れから生まれた枉津日神っていうのは、見付けたら考えたくなるよね、創作脳なら。
そんでまぁ、本作で一番出てくるのは桜谷集落のリーダー・桜谷家当主にして警察庁副長官である桜谷陽人が使う「直霊術」です。
なんと、作中では「直霊術」について、どんな術なのか詳細表記していません。だって書く隙間がなかったから。大事な場面で結構出てきてるのにね。
簡単に説明するなら「魂の一番内側に働きかける術」です。良くも悪くも作用できる結構最強な術で、直日神の御業の一つを人間が賜った、という裏設定があります。
本作Ⅱで重田優士が言霊術を使った時、それを崩したのが陽人の直霊術。魂を揺さぶって術を解いた感じです。荒業ですね。神の呪詛である「言霊」を神の御業「直霊術」で破ったシーンでした。
さらに「直霊術」の中の「強化術」というのが出てくるんですが、「魂を強くする」転じて霊元を強める術、なんですね。
桜谷家の中でも使える術者がほとんどいない術を伊吹保輔は引き継いだことになります。
作中で出てくる「霊元」というのは、霊能を使える術者が全員持っている特殊な第二の魂です。霊元がないと霊能は使えません。
んで、四魂について。和魂・幸魂・荒魂・奇魂という四つの魂があって、一霊四魂の考え方では、直霊を支える四つの魂、みたいな感じです。
それぞれに性格があって、漢字の通りです。詳細はネットで軽く検索すると出てくるので、ここにはわざわざ書きません。
記紀の時代というか、言ってしまえば一霊四魂を本田さんが提唱する前は、四魂という言葉すらなく、この四つしかないのかも果たして謎だよねって感じです。
「四魂術」を使うのは、桜谷集落・五人組の一家、桜谷家と同格のリーダーの家柄であった八張家長男にして巨大反社・反魂儀呪のリーダー八張槐です。
本作の四魂術は直霊術と相対する術としています、今の所ね。直霊術が魂を強めるなら四魂術は「霊元(魂)を抑制する術」、つまりは術者の霊力を抑え込んで力を阻害する術です。四魂術もまた、人間が直日神より賜った神の御業です。
そのうちに、四魂術の別の使い道が出てきますが、果たしてそこまでこの物語を書き続ける気力あるかな。
そういえば、槐が四魂術を使っている唯一のシーンはR18にしちゃったので、カクヨムではオープンに出来てないんでした。残念。R18OKの他サイトではオープンになってます。Ⅱで槐が清人を拉致るシーンで使っています。清人もそれなりに強い術者だし枉津日神の惟神なので、槐も奥の手を使わざる得なかった感じです。
直霊術も四魂術も本来は、桜谷集落が惟神を守るための術です。
で、どっちの術も直日神から賜った御業ということは、直日神の惟神である瀬田直桜は、どっちも使えるわけです。神様だからね。
陽人と槐の関係性は直霊術と四魂術が表すような表裏だけど相いれない感じで作者としては好きです。
槐みたいなメンヘラ書くの大好き。性格が悪いキャラは書いてて最高に楽しいです。逆に真っ当な意見や優しい言葉を書くのは涙が出るほど恥ずかしいです。そういうシーン多いけど。いつも泣きながら書いてます。
Ⅲの後半に出てくる榊黒流離のシーンは、それはもう……。まだオープンになってないから書けないけど。
こんなこと書いたら誰も本作読んでくれなくなっちゃうかしら。
直霊や四魂が曲がったり汚れたりすると、気が枯れる。「気枯れ」→「穢れ」る。それを祓って気を戻し(満たし)魂を元気づけるのが祓戸大神の役割。祓戸の神社をお参りするのは、物理的な穢れだけでなく、元気がない時でもいいんですよ。
ちなみに、禊ぎとは、魂の内側の穢れを祓う、みたいな意味合いがあります。「禊ぎ祓う」とは、魂の内側も外側も浄化する。身も心もさっぱり、みたいな感じです。
禊ぎの起源は、黄泉から逃げてきた伊弉諾が川でその身を灌いだ行為です。
さて、本作には他にも「普通に書いてるけど、どういう意味なん?」みたいな単語がちらほら出てくるので、それらも一緒に解説したいと思います。
ここから先は本作の解説メインになりますので、興味がない方は読み飛ばし可です。本作のための造語も多いので。
そもそも今回の話は自作ネタがメインでしたね。申し訳ない。
【
陰の気。自然界に普通に存在するもので、一つ一つは小さく、陽の光で消滅するほど弱い。集合体になったり大量発生すると光だけでは消滅できずに、人に害をなす気に変化する。心の中の負の感情を刺激して煽るので、邪魅が堪ると人は鬱になったり攻撃的になったりする。
呪術に使用される基本的な陰気でもあるため、呪術師が好んで集める。
本作Ⅰの第二話の補足に書きました。
他人の強い感情に影響を受けることってありませんか?
人間の中に生まれる負の感情って、強いほど漏れ出て流れてしまうものだと思います。だから怨霊とか怨念があるわけで、何も死んだ人間だけが残すものではない、生きた人間も出してしまう(生霊とかいるしね)。もっと言うなら人間に限らない。
それらが寄り集まると、人に害を成す集合体になるんじゃないかなって思って、邪魅という設定を作りました。
これらを祓い清めるのもまた、神様や惟神の役割です。浄化師や清祓師が担ったりもします。
【
魂そのもの
直霊は霊の中心にある核のようなもの。
本作Ⅰの八話に補足で書きました。
直霊の話で触れた部分ですが、死んだら人間は霊になり、その核が直霊です。生きた人間にとっても直霊は魂の核です。
【
邪魅に犯された霊が怨霊になる手前の、不安定な状態。
清祓や浄化の術をうけたあと、霊に戻り冥府に逝くか、怨霊と同様に消滅するかは魂魄次第。
本作Ⅰの化野護の腹にあった。護にかけられていた呪詛の正体は、以前のバディだった桐谷未玖の魂魄でした。未玖は護を守りたい一心で呪詛になりきらずに魂魄のまま留まっていた。未玖については詳細を本作中で何も描けなかったのが心残り。
【怨霊】
霊が大量の邪魅に犯され魂魄の状態を経て強い妖気を纏った状態。
霊を求めて食い尽くそうとするので、周囲にいる生命力の弱い人間は引っ張られて死んでしまう。気枯れしている人間ほど食われやすい。
霊を喰い力を蓄えた怨霊は人型になり生前と同じ、或いは別の自我を得る。この状態は既に妖怪であり、13課の処分対象になる。
本作Ⅰの時点で既にできていた設定なのに、まだ出てこない怨霊……。今後出てくる予定なんですが、果たしてそこまでこの物語を書き続ける気力があるかは謎。
さて、次回は「国津神・天津神」について。
まだ本作に登場してないけど重要、みたいな神様が割といるんですよね。
出せないネタもちらほら。本作の進み具合に合わせてオープンにしたいと思います。もう出してるけど忘れてるネタもあると思うけど。
なので次回はちょっと後になるかな。
間を埋めるために理研のネタを書くかもしれません。
不思議語りではないけど、仄暗において理化学研究所の話は割と重要なので。
「神様vs呪いvs科学」が基本設定ですから。
本作はこちら↓
『仄暗い灯が迷子の二人を包むまで』
https://kakuyomu.jp/works/16818023212261037641
『仄暗い灯が迷子の二人を包むまで・Ⅱ』
https://kakuyomu.jp/works/16818093078564930840
『仄暗い灯が迷子の二人を包むまで・Ⅲ』
https://kakuyomu.jp/works/16818093081595698958
※現在Ⅳを執筆中(まだ非公開)。
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