閑話休題

 今回は、幾つか注意点をば。

 コメント欄に内容の補足みたいな長文を書くのはやめてください。

 どんな小説も創作論もエッセイも、作者の意図があって書いているものです。その意図を侮辱する行為です。

「俺はもっと詳しく知ってるんだ」って主張したいなら、自分の小説ページでそういうタイトルを立ち上げて書いてください。人の作品を使うな。

「補足してあげてる」なんて言い訳は余計なお世話だし、何様だよとしか思いません。

 

 それから、エンタメ小説って言うとラノベを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、大衆向け娯楽小説はすべからくエンタメです。

 司馬遼太郎、池波正太郎、山岡荘八、錚々たる大御所歴史作家ですが、大衆向けの娯楽時代小説を書いている以上、それはエンターテインメント小説なんです。

 歴史小説というのは、時代考証がしっかりなされている作品ほど面白い。同時に同じくらいオリジナルの設定も入っているから面白いんです。

 例えば、新選組の沖田総司は司馬先生の作品の中では美男子に描かれていますが、史実では「浅黒い肌の目が小さいヒラメ顔」でした。明治の作家・子母澤寛先生の「隊中美男五人衆」にも沖田の名前はありません。

 子母澤寛先生は、まだ存命だった新撰組隊士に直接取材して文献や小説を残していた作家さんです。

 沖田が帯刀していた刀だって、司馬先生の小説では菊一文字ですが、あんな高価な刀、持ってたわけねぇだろってんで、今は加州清光が主流になってますよね。司馬先生の燃えよ剣が大フィーバーしてた頃は、沖田総司が帯刀していた刀は菊一文字ってのが一般人の定説みたいな時、あったんですよ。信じられないでしょうけど。影響力が強い小説にはそういう力があるんです。

 エンタメ小説とはそういうもので、必ずどこかに作者の意図やそれを生かすためのオリジナル設定が含まれているもので、だから面白い。史実とオリジナルを違和感なく絡めて書けるからプロなんです。気付かせないように読ませてしまうからプロなんです。

 だから勘違いしてしまいますが、時代小説を読んで歴史を勉強した気になってはいけません。今はネットで調べればいくらでも何でも出てきます。でもそれ、本当に裏付けされた事実ですか? 

 面白おかしく読む分には別に良いと思うし、面白いから小説のネタにするのもアリだと思います。

 けど、「これが史実です」と他者に強要するのは迷惑行為以外の何物でもありません。嘘を押し付けているのと同じですから。

 エンタメ歴史小説を読んで歴史を勉強した気になるのは間違いです。本当にその時代のを知りたいと思うなら、学者の論文を読みましょう。

 裏付けされた事実だけがわかる上に、これについてはいまだ不明って明記してあります。わかってない内容は触れてすらない場合も多い。

 今はネットで簡単に論文検索できます。

 国立国会図書館のサイト検索も便利です。絶版になっている本でも、図書館にあれば学芸員さんが必要なページをコピーして送ってくれます。有料ですが。


 ただ面白い小説を書くためだったら、裏付けなんかない逸話や実は嘘だったとわかっている話をあえて使うのもアリだと思います。

 そういう話って、面白いから残っている訳なんで、使えるなら使いたいよね。私は小説のネタにそういうの使います。

 この連載も、そういうつもりで書いているから、「参考にするな」と注意書きしている訳です。私の個人的な感想や主張を多分に含むし、それが正解なわけがないので。私はそう思うよってだけの話です。

 気になったら自分で調べてねっていう、きっかけ程度になったらいいとは思いますが。そこにも責任は持てませんしね。


 ここに書いた話は、まぁまぁ昔から(カクヨムじゃないサイトで活動していた頃から)思っていたことで、十年くらい前にも似たような話を書きました。

 何年経っても変わらないものですね。

 ネットで調べれば何でもわかっちゃう時代だからこそ、嘘と本当が何なのか、それを人に勧めていいのかいけないのか、何をどこまで信じるか、考えないといけません。ネットリテラシーってやつね。

 リテラシーっていうか、考える力だよね。想像力とでもいうのか。

 綺麗事は嫌いだし、言う気もないですが、人に迷惑を掛けない考え方は大事です。接遇って思いやりです。

 上辺だけでもいいから思いやりを持って他人と接したいものですね。顔が見えないアカウントだけの付き合いであってもね。

 

 ネットではよく「その言葉、面と向かって相手の顔を見ながら言えますか?」って言葉を念頭において会話することにしています。

 それはカクヨムなんかのサイトも同じなんじゃないでしょうか。

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