第3話 深呼吸

────かっこいい


 ボロボロの私の前に突然現れたのは、両手に木刀を持った学生服の男の子だった。私と相手の女の子の間に入りこみ、守ってくれたのだろう。そして女の子が距離を取ったタイミングでこちらを振り向いた。


「この木刀一本、少し頼めるか?」


「っ、はい!」


 彼がサッと渡して来た木刀を、反射的に手に取る。刀身が苔で緑ががってて一周回ってイケてるかも……?


「それで自分の身を守るんだ」


………うーん、どうだろう。ゲームセンターで格闘ゲームをやった経験が活きればいいかな。



「フン!誰だか知らないが私の敵ではないね!!」


「頼もしいね。んじゃ、あたしは弱った女の方をもらいますわ」


 女の子たちがまた戦う気になったようだ。なるほど、二手に分かれて戦うつもりだね…………つまり私も早速戦うの!?さっき喰らったばっかりで少し怖くなっちゃったのに。

 こんな不安でいっぱいの私に気づいたのか、彼が声をかける。


「効くか分からないが、深呼吸で心を落ち着かせてみろ……何とか切り抜けるぞ!」


「!」


 そうだ、深呼吸して心を冷静に……よし。


「お前ら会ったばっかりで仲いいな、その仲引き裂いてやるっ!!!」


「はいはい了解〜〜」




もう一人の女の子が私に向かってきた。


「喰らえっ!」


「……っ」


 私はとっさに木刀を構えて守りの姿勢をとった。相手の女の子は木刀を振りかざし、私の木刀にぶつける。そのまま女の子は何度も攻め立てた。私を壁の方向に追い詰めるつもりだろう。


「そんなんじゃ状況は変わらないぞ〜?」


うぐっ、やっぱりそのつもりなんだ。考えろ考えろ………………はっ!分かった!!


「ん?横から突こうったって……」


 私は女の子の正面から少しずれた位置に動く。そして女の子が木刀を振り下ろす前に姿勢を低くし…………



「ここっ!!」


「あ゛だっ!!!?」



 女の子の足の指に木刀を叩きつけた。足が露出するサンダルで、靴下履いてなかったからね。相当効いたんじゃないかな。


「はぐぅぅ」


「ここだあっ!!」



 足の痛みに悶えて姿勢を崩した女の子の頭に、私は木刀を勢いよく女の子の額に叩きつけようと……



「ぶあ゛っ」


 あっマズい、間違えておでこ突いちゃった。

女の子はそのまま膝を付き、後ろ向きに倒れた。



「ってオイ!!なにやられて……」


「今!!!」


 私へ喰らわせてきた女の子がこっちを見た隙に、男の子が女の子の頭へ木刀を叩き込む。

ひとたまりもない衝撃を喰らった女の子は倒れ込んだ。




「どうやら気絶したみたいだ、そのうち目を覚ますだろう」


 男の子と一緒に気絶した女の子二人を壁にもたれるように座らせた。


「はぁ〜よかったです……お命頂戴したかと思ったので」

「そういえば名前、私は照宇てらのきゆともです。あなたの名前は?」


「俺か?俺の……な………」


 えっ、ドサッと倒れちゃった!?

どうしよう、大柄な男の子なんて引きずって運ぶしかなさそう……でも助けてもらった人を引きずるなんて失礼だし……


 あ、私も緊張がとけて、きゅうにねむ……



 ドサッ

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刀創の輝き 天ク遊 @amah15a

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