第19話 輝くその先は? 〜みみっく
一方的に告げられ、再びフワッと女性がよもぎの良い香りを残して姿を消した。再びまた現れるのでは? と思い辺りを見回しているが現れる様子はなくルナの元へ戻った。
「ようくん大丈夫? あの女性の人は誰だったの?」
大きな川のような水たまりを無事に渡りきるとルナが心配そうに駆け寄り声を掛けてきた。兄妹と言う事が思い出され先ほどとは違う感情が沸き起こった。
ずっと探し諦めていて待ちにまった再開だが、先程まで一緒に食事をし冒険をして過ごしていた相手で恥ずかしいという感情もあるが……。自分の事を心から心配をしてくれてると思うと目を潤ませルナへの返事もせずにルナを抱きしめた。
「きゃっ。わ、わわぁ……ようくん!? どうしたの? 怖かったの?」
ずぶ濡れの服でルナに抱きついたのは悪いと思うが、そんな事を考えるより先に抱きしめてしまった。ルナの背中に両手を回し、ルナは少し抵抗するように胸の前で両手で抱きつかれないようにしていた。
「……ルナ、お前は双子の妹だったんだ」
「……え?あ、うん。そんな気がしてた。よ、ようくん」
ルナが恥ずかしそうな声で答え。少し驚いた声を上げたが予想をしていたらしく、想像をしたより落ち着いた感じだった。胸の前の両腕を俺の背中へ回してお互いに抱きしめ合い俺の胸に顔を着けると見上げてきた。
「やっぱり……お兄ちゃんの、ようくんだったっ!」
俺を見上げるルナの目も潤んでいて見つめ合っていると急に恥ずかしくなり、お互いに目を逸らした。抱きしめあったままで、今離れてしまうと離れ離れになってしまいそうな不安な気持ちに襲われ、二人はお互いに離れる気はなかった。
「こんな異世界に妹のルナが居るとは思って無くて、ルナと聞いた時にもしかしたらとは思っていたけどな」
「……わたしも、ようくんって聞いて、もしかしたらとは思ったけど……。だんだんと、ようくんかもって思ってたよ。ようくんっ♪」
俺の背中に回された両手に力が入り、ギュゥと抱きしめられ嬉しくなった。
「そろそろ離れるか……恥ずかしいしな」
「だめーっ! やっと会えたんだよッ!」
ルナが見上げるとムスッとした表情で頬が膨れさせた。
(俺だって離れたくはないけど……恥ずかしいだろ)
「わ、分かった。俺も離れたくないから! 向こうの世界に帰れるようになったらしいぞ。今日のまでに、あの木に触れれば帰れるって言ってたぞ」
「……わたしは、ここに残るよ。ようくんは……戻るの?」
寂しそうな声で聞いてきくると、ギュゥと再び抱きしめられる。
「俺も帰らないかな……ルナが心配だし。向こうの世界で勉強と仕事だけの日々を過ごすよりも、冒険や自然の中で過ごす方が魅力的だな」
「お父さん、お母さんは良いの?」
「それは……戻れば同じ時間に戻れるらしいぞ?」
「そうなんだ?それだったら、わたしは5歳からだね」
(そうか、そういう事になるのか。しばらくは、ルナとここで暮らすのが俺の望みかな。ずっとになるかもしれないけどな)
「俺も、セレナさんの所でお世話になれるかな?」
「え? もうとっくに、お世話になってるじゃない」
俺が帰らないと知ると、抱きしめていた力が抜けて手を握ってきた。そとては柔らかくて温かい。
「そうだけど。もしもダメだって言われたら、どうしようか……」
俺が悩んだ表情を見せると、笑顔で答えてくれた。
「え? それは……ダメって言わないと思うけど。もちろんお兄ちゃんについていくよっ!」
「少し恋人みたいになってるぞ」
「そうかなぁ? ずっと会えなかった兄妹が再開したんだよっ?」
手を繋いでいた手を引かれて文句を言われた。
(いやいや俺だって嬉しい再開を楽しみたいけど、ここはまだ魔獣や獣がいる場所だぞ?)
「悪かったって! ここは魔獣や獣がいる場所だろ?帰ってからゆっくり話をしような! 時間はいっぱいあるだろ? な?」
不満そうな表情をして頷き歩き出すと先頭を歩き手を引かれる。草原で見晴らしが良く明るくなり始めて、まるで朝日が出てきそうな雰囲気だった。
(良く考えれば家を出てから、かなり時間が立っていると思うぞ……)
「ようくん! なんかおかしいよ……あれって朝日じゃ……?」
ルナも気付いたらしく徐々に明るくなり始め赤く染まってキレイで立ち止まり見入ってしまう。そよ風が吹き抜け草原の草がそよ風で揺れてキラキラと朝焼けの輝きを反射をしている。
「久しぶりに日の出を見るな」
「わたしは、もう数年は見てないよ……」
ルナちゃんが目を輝かせて立ち止まり、俺の手を握り朝焼けを二人で眺めた。朝日が登ると別世界と思えるほど辺りがキレイに見え朝焼けに染まっていく光景が美しい。
「こんな所だったんだね……」
「きれいな場所だな、ダンジョンの中だけどな」
来た道を戻り、魔獣が出てくるが二人で力を合わせて討伐を進めていく。
俺が剣で抑え込み、ルナの合図で横に飛び避けたところに魔法を放ち吹き飛ばし討伐する。犬の群れが襲い掛かってきた木々が生い茂る場所に出ると、再び同じ様な犬の群れが5頭も現れた。
「はぁ……。こいつらは魔物じゃないから元気そうだな」
「魔獣は、ボスが倒されて魔力の供給が無くなって弱くなってたのにね」
「だよな。てっきり俺達が強くなってる気がしてたんだけど、そういう事か」
ルナに改めて説明をされて少しガッカリした。
(強くなったと思ったんだけど、違ったのかぁ……)
ルナと話しをしていると、お構いなしに襲い掛かってくる。2頭が俺の方へ飛びかかり、口を開き牙が朝日が当たりキラリと不気味に光るのが見えた。その牙は確実に俺の首を狙ってきている。軌道が分かり、それに合わせて剣を横に振り頭をボールに当てるように振り抜いた。剣の軌道が安定していないせいかスパッと斬れずにバキンッ! と音が鳴り地面に落ち動かなくなった。
もう1頭も、俺を目掛けて飛びかかっていた。剣を振り抜いた先にもう1頭の相手の犬がいたので剣を引き、勢いよく犬の開いた口の中に剣を突き刺すとグシュという感覚が手に伝わってきた。剣が突き刺さった口から血が滴り落ち体から動きが消え剣から滑り落ち地面に横たわった。
体が自然と動き自分で何をしたのか覚えておらず、自分でも驚いていた。驚いて喜んでいる暇は無くルナの応援にと思っていると、ルナの方も戦闘が終わっていた。
「ゆうくん、すごいっ! 助けようと思っていたのに!」
同じ様に助けようとしてくれていたらしく嬉しく思った。後は残るは1頭、指揮をとるボス犬と思われた。残った1頭が威嚇をして詰め寄る素振りをすると、林の中へ逃げていった。
(指揮を取るだけあって力の差が分かったのか?)
「勝ったみたいだな」
「うん。勝ったね! 初めはかなり苦戦をしてたのにね!強くもなっているみたいだね」
「だろ?」
「うん。あはは……ゆうくん自慢気だよね。おかしい〜」
ここのダンジョンのボスを討伐をしたからかダンジョンの仕掛けは機能せずに、閉じ込められることもなく無事に脱出する事に成功した。
ルナが指笛を吹くと高い音がビィ〜と音が鳴り響き、こだまして浮島に大きな陰が落ちた。上空から大きな鳥が舞い降りると着地する時に羽を大きく羽ばたかせると周りを巻き込み土埃や木々が大きく揺れるほどの強風が巻き起こった。
大きな鳥に乗り帰宅する途中で久しぶりの赤みを帯びていた朝日が白く輝きだし、その陽の光を浴びキレイに広がる小さな村の集落や朝日に輝く小川の光景を眺めた。
それと気持ちの良い朝の風を浴び、新鮮な朝の空気を吸って生きて戻れた事を実感していた。後ろを振り返るルナの顔も陽が、当たりキレイに輝いた笑顔に見えた。兄妹揃って無事にセレナさんが待つ家に戻ってこれた。
家に無事に辿り着き、帰りを待っていたセレナさんが笑顔で迎え入れてくれた。
「随分と遅かったんだね。心配したんだよ」
セレナさんの表情は、言葉と違い表嬉しそうだった。それと怒られるかと思ったが怒られはしなかった。
「ごめんなさい。ちょっと遠くまで出掛けちゃって」
(セレナさんは、なんとなく気付いているんだよな。取り敢えずルナに話を合わせておくか)
「眩しい太陽が出て村中が大騒ぎだよ。何が起きたんだろうね……。悪い事が起きなきゃ良いんだけどね」
セレナさんは、心配だと言うが全っく心配そうな表情はしていなく、ただ村中が大騒ぎだと伝えたかったらしい。
「それは大丈夫だよ」
ルナが笑顔で答えると、セレナさんも笑顔で頷き返した。セレナさんが俺に視線を向けた。
「無事にルナを守ってくれてありがとね。色々と大変だっただろ?」
「妹のルナに色々助けられましたけどね」
セレナさんは、妹と言っても驚きはせずに頷いて笑っていた。
「むぅ……。ママ、もしかして……知っててようくんを連れてきたの?」
「さて……。なんの事だろうね」
セレナさんが、そっぽを向き立ち上がりルナに正直に話すのが恥ずかしいのか朝食の準備を始めた。その後に続きルナが朝食の準備を手伝い始めた。台所と距離が近いので会話が丸聞こえだった。
「ママ? ようくんと、このまま家で一緒に暮らしても良い?」
「そのつもりで連れてきたんだけどね。てっきりお前が嫌がると思ってたけどねー?」
セレナさんが、からかうような言い方をして聞いている声がした。なんとなく今後の展開が想像がついた。
「……兄妹なんだから嫌がる訳が無いでしょっ」
「あはは……。そうだったね! お前の兄妹を追い出すわけがないだろ! 好きなだけいれば良いさ! 人数が多い方が楽しいからね!」
ルナが想像通りの反応を見せ、セレナさんが大笑いをして楽しそうに料理をしているのが分かった。
(どうやらルナが、からかわれながらも無事に俺の居場所を作ってくれたみたいだな)
しばらくぶりの食事を3人で、仲良く話をしながら温かいご飯を美味しく食べた。セレナさんは食後に、俺の部屋を用意をしてくれて部屋に案内をした。
それからは3人で家族同然で、笑い泣きを共にした。時には喧嘩もしながら、助け合って暮らす事になった。この3人ならば変な気を使わずに暮らせて行けそうだ。
月と太陽、どちらも必要で。俺だけじゃなく、美しい光を同じだけみんなが浴びられる。ここへきて、今まで感じられなかった、美しさを肌で感じられる。
(神様をあの女性がまだやっているのなら、ある意味感謝だな)
太陽と月 白崎なな @shirasaki_nana
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