Play.5『アンマ・ミーア』

「ようやくのボス戦は完敗だったね。プーペー!」



(あなたがゲームをする横で、ギャルがリコーダーを吹く)



「ボス前に復活場所があるのは救いだ。何度も挑戦して死んでください、ってことかな。トゥーパー!」


「なんでリコーダーを吹いてるのか? 応援じゃん。ピャー!」


「童心に返りながらの死にゲーも楽しいかも。ポーティー!」


「使い古しだから汚れてるって、全然綺麗なほうでしょ。プープープー!」


「あぁ、うるさくて気が散ると言いたいわけだ。ポーポピー!」


「またボスでやられちゃったか。ピャーラー!」


「一本橋で逃げ場が少ないよね。またやられた。リーピー!」


「まだ理不尽を感じる段階? 普通にやられたね。ペポー!」


「このリコーダーは、イライラをぶつけてもらうためにあるんだよ。死にゲーとはいえ、死に過ぎるとローキックにとどまらず、飛び膝蹴りをお見舞いしたくなるし。あ、ダメか。ポッポーペパー!」


「ゲームが悪いんだ、とはならないで欲しいよね。弁えてるから大丈夫? まあまあ、ぜひ私を捌け口に使ってよ。ペッペポー!」


「乗り越えると感謝の正拳突きをしたくなるけど。ほら、きみが教えてくれた漫画のやつ。ペッポーピー!」


「ボスの攻撃は大振りに見えて、発生と持続が長いのかな。ピョーピー!」


「うーん、アドバイスしたくてもね。リコーダー以上に邪魔だろうし。ポッペーペー!」


「私ができるのはできることだけ、はちょっと違うのか。アニメで似たのなかった? ポーペーラー!」


「ここまでくると体力の温存も関係ないし。ペーピッリリー!」


「モーションを一つ一つ覚えて、だよね。ラーピャー!」


「死んで死んで、空気に呑まれて死んで。ポーラッラー!」


「死んで死に潰れて、夜が明けるまで死んで。ペッペッペー!」


「ポッペーペポ! ペポープープー! ピャーリーラー! リーラーララ! ピョッピーピピー! プープーペー! プープーペー! ピョーリーラー! ラーラーピャー! ポーペップー! ペッペーペペー! ペーラーリーリーラーラープー!」


「ふぅ……やられるごとに吹くのも、いい加減に鬱陶しい? 引き時は心得てるよ」


「手こずる要因だけど、私が思うに疲れがたまってるんじゃないかな」



(ギャルがあなたの肩を触る)



「さっきより硬くなってるね。やっぱりさ、力が入るとこっちゃうんだよ」


「私ができるのはできることだけ。そう、マッサージだね。さあ、身を任せてリラックス……」



(あなたは腕を引っ張られ、ベッドに腰かける)


(すぐ後ろにはギャルが座り、両肩に手が置かれる)



「はい、お客さん。今日は六十分コースでいいですか? オプションはつけ放題ですが、裏のオプションが気になる? もちろんエロエロなやつで、ん? 聞いてないって? 心の声がダダ漏れだったよ」


「とりあえず肩もみしよう。ほぐして元気いっぱいになろうね」


「モミモミ、モミモミ……気持ちいい?」



(耳元で囁く声が聞こえる)



「モミモミ、モミモミ……もう、こんなに硬くして……」


「ふー……」



(耳に息を吹きかけられる)



「力を抜いてリラックスしなきゃ。耳、クセになっちゃった?」


「きみの身体、温かいね。男の人の大きな背中だ。逞しいじゃん」


「ふふ、すりすりしたくなるね。触られるの苦手? 今さら言うことかな」


「モミモミ、モミモミ……きみの手が止まってない? ふふ、いいんだよ……気持ちいもんね」



(ギャルの声に熱がこもる)



「ほんとにたまってるんだ。色々、出しちゃおうね……」


「モミモミ、モミモミ……ふー。こんなになるまで頑張って、えらいえらい……生きてるだけでえらい、っていうのは死にゲーしながら言うセリフじゃないか。まあ、復活できるし?」


「でも心は擦り切れるから。よしよし、いつも大変だよね」


「ん? 別に子供扱いではないけど、誰かに甘えるのって悪いこと?」


「恥ずかしがらなくても平気。ここにいるのは、きみと私の二人だよ」


「モミモミ、モミモミ……全てをさらけ出したって大丈夫」


「ふーっ……油断した背中が可愛くて……つい、いたずらしちゃう」


「モミモミ、モミモミ……肩ひじ張る必要はないのに」


「ふーっ……ふー……」



(ギャルはあなたの右耳に息を吹きかけ、続けて左耳に息を吹きかける)



「片方で済ませると物足りないよね。注文があれば、なんでも言ってよ」


「モミモミ、モミモミ……そろそろ出るかな? 何がって、こんなに硬くしておいて。とぼけても無駄だよ」


「うん? 私に言わせたいんだ。それって……肩もみで解決するやつ? 男の子が気持ち良くなるツボって難しいね。オプションが欲しいならどうぞ……」



(耳の近くにギャルの顔が寄る)



「もっとすごいこと、しよっか?」



(からかいを含んだ笑い声)



「こりは全部出たかな。肩はだいぶ軽くなったでしょ。他の箇所は申告がないとね」


「ふふ、満足した? これで、ボスもちょちょいのちょいだね。クリアまで突き進めるよ」


「そんな簡単にはいかない? あ、私と一緒にいたくて先延ばしにするつもりだ」


「はいはい、慌てて否定しなくてもわかってるし。ゲーム以上に、きみへの興味が一番なんだから。忘れずに覚えておいてよ」

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死にゲー難易度上昇中! 近所に住む黒髪ロングのクール系ギャルがゲームに興味を持った日常 七渕ハチ @hasegawa_helm

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