マーメイド・キリング

頸川ヒトヱ

マーメイド・キリング

「ここまでだ。人魚殺しのせがれ」


 ――ざあざあと、殺気立つ水の音がする。

 四方を装甲に囲われた正立方の空間、壁面を這うパイプから漏れ出した水は次第に水かさを増し、逃げ道となる扉をその水圧で押し固め、塞いでいく。

 その場に居合わせた三人に、まだ幾ばくか猶予はあるだろう。三階建ての住居が丸ごと収まるほどの広い空間、水が溜まりきるのに数時間はかかる。だとしても室内の三人は、爪先がすっかり水に覆われた状況をして、逃げ出す素振りさえ見せなかった。

 一人は、床に転がされた若い男。行儀のよいスーツ姿。良家の嫡男と言った出で立ちの彼は、今や鼻血を垂れ流し、ひどく惨めな格好でいた。

 一人は、やけに頭身の高い女。目を惹く美貌の持ち主ではあったが、手には奇妙に痩せこけた小銃を携え、インナースーツに男物のジャケット、物々しい装束でただならぬ雰囲気をまとっていた。

 そしてもう一人は、


「――クラーケン……、お前がか? まさか実在したとは……」


 男が目を白黒させるのも無理はない。

 小柄な背丈を包む、無数の軍装品。光沢のないマスクに覆われた頭部には、金属繊維で編まれたと思しきヴェールを被り、その風体はさながら寓話の怪物だった。男がそれをクラーケンと呼んだ通り、無表情な異形の面構えは、確かに蛸に似ていないこともない。

 見れば誰もが身の危険を案ずるだろうその怪人が、妙に角ばった形の拳銃を向けながら、若い男をじつと凝視している。


「ッ――、こんな真似をしても……、俺は、俺たちは殺せない。一体どういうつもりで、こんな……」


 男が弾けるように声を荒らげると、怪人の背後に立つ女が、金属質の甲高い足音とともに前へ出て、彼に小銃を向けた。

 よくよく見れば、女は両足とも機械式の義足をしていた。どういうわけか、その踵にはスクリューのような造形も見て取れる。察する限り彼女もまた、およそまともな身の上とは言い難いようだった。

 男を睨めつけ、殺気立つ真横の長身を、怪人は心なしか疎ましそうな仕草で制止する。


「ああ、お前で27人目だ。全くどいつこいつも同じ質問を――」


 空とぼけた風に、くぐもった声の怪人はかぶりを振った。そうして自身を見下ろす二人を、男はぎっと睨めつけ返し、


「言え。どうやって殺した」


 これほど追い詰められた状況をしてなお、男が見せた頑なな態度に、怪人は肩をすくめた。女が引き金に絞ったのを一瞥し、まるで邪魔なものでも退けるようにして、その銃身を手のひらで逸らす。


「言ったろう。こいつはただのせがれだ。何も知らない。何もできない」


 聞いてようやく、女は無言で射撃姿勢をほどく。彼女はため息ひとつ、痩せた銃を肩に担いで、拗ねたようにそっぽを向いてしまった。

 怪人は膝を落とし、底冷えのする声音で、若い男に語りかける。


「……人魚殺しは、海に、呪われている」


 馬鹿にされていると思ったのか、若い男も、忌々しげにそっぽを向いた。しかし怪人は構わず、


「人魚の肉を食らった者は、どれほど老いさらばえても、1パイントの鉛玉をブチ込まれても死にはしないが……、溺死はする」


 自身の喉元から胸元までを、ゆっくりと指でなぞり、


「肺を水で満たし、窒息することによってだけ、人魚殺しは死ぬ」


 男は破顔した。


「まさか、そんな簡単なことで」


 吐き捨てるように言う彼を、怪人は微動だにせず見ている。その言い知れぬ迫力に圧され、男は笑うのをやめた。


「そうだとも。だから人魚殺しどもは、それをひた隠しにしてきた。不死身のふりをしてきたのさ。自分の殺し方を知っている輩を、生かしてはおかない。不死のカルテルだよ。この石油採掘会社を作った、お前の父親のな」

「……はは。なるほど」


 それで何か合点がいったのか、男は力なく笑んだ。


「それがお前の、古い怪物の役割だったわけだ。口封じが、お前の……。だがそれなら、なぜ今になって皆殺しになど――」


 今度は怪人が鼻を鳴らし、笑った。

 よくぞ聞いたとでも言いたげに、大袈裟に肩をすくめ、


「人魚とヤった。最高の気分だった。もうこの世に未練はない」

 近くに立つ女の肩が、ぴくりと揺れる。それを見て、男はたまらずといった態で吹き出した。怪人は構わず続ける。


「だが俺がカルテルを降りれば、秘匿を暴こうとする輩を始末できなくなる。従ってあらかじめ全員始末しておけば、解決さ。これでよく眠れる」


 男はしきりに頭を振り、深く息をして、


「……子供じみているな。まったく」


 いつからか剣呑な空気は和らぎ、男はまるで、旧友の冗談に呆れるような口調でそう応じていた。


「ああ。いくら老いさらばえようと結局、俺たちは死に見放された哀れなガキのままだ。童話の人魚に、魅入られた――」


 言いながら、怪人は拳銃をハーネスにしまい、背中に吊るした小銃を逆手に持った。持ち方からするに、それを撃つ気はないようだった。


「お前たちも、お前の親父も、そうだったろうにな」


 膝を立て、怪人はまた男を見下ろす。


「"世に永遠を生くる者なし"か。やはり親父は嘘つきだった。……つまらん種明かしだよ。この分では、サンタも実在しそうにないな」

「奴らなら街中で飲んだくれてるさ。会いに行って確かめるか?」

「いや、いい。……やってくれ」


 素っ気なく言って、男は目を閉じた。

 その額に、怪人の持つ小銃の銃床が、静かに突きつけられる。


「死ぬほど苦しいぞ」

「そうだろうな。……懐かしいよ」


 男は微笑んだ。その寂しげな笑みを、突き出された銃床がゆっくりと水面の下へ押し込め、やがて彼の息を枯らした。





「なんとも呆気ないな。最後にしては」


 水面にたゆたう水死体を眺めながら、怪人は独りごちた。

 今や室内に残ったのは、二人ばかり。水かさはいよいよ膝丈に達し、もはや生なかな手段では、水圧に閉ざされた扉を開けることはできないだろう。

 女は振り向かなかったし、怪人もその背を見なかった。

 ざあざあと殺気立つ水面だけが、背中合わせの二人を余さず映している。


「始末はついたぞ。ルウ。お望みの潜水艦暮らしに戻るといい。……お前の妹がそれを望んでいたかは、知れないが」

「……ええ。そうするわ」


 応じたのは美しい声だった。

 ルウと呼ばれたその女は、肩に乗せた銃身をそっと胸元に寄せる。痩せこけた小銃。刺々しい造形をした弾倉と、表面に刻まれたキリル文字の横列は、それが持つとある役割を意味していた。

 ――水中銃だ。


「28人目」


 言いざまに、ルウの長身が驚くべき速度で翻り、歪な銃身が、小柄な怪人の背を捉える。


「あなたを始末したあとでね」


 撃発。

 乾いた銃声がこだまし、果たして火を噴いたのは、ルウの眼前ですでに肩越しに構えられていた、怪人の角張った拳銃だった。しかし放たれた銃弾は、身をかがめたルウの後ろ髪をかすめて飛び去り、続いてルウの放った銃弾も、怪人のマスクに弾かれて消えた。


「無駄だ」


 互いに一発ずつを応報し、わずかな沈黙のあとに怪人が言った。


「俺たちは不死だ。人魚のお前も、……人魚殺しの俺も、こんなものでは死ねない」

「そうね。思いのほか頑丈みたい」

「それだけが取り柄だ」


 携えた水中銃を、ルウは持て余したように放り捨てた。代わりにハーネスから抜き去った拳銃を、性懲りもなく怪人に向けたあと、


「――でも殺し方は知ってる」


 ルウの腕が、無造作に宙へと伸びた。

 バン、バンバンバン。――まるで闇雲な方向へ向けて、弾倉に列した全弾を立て続けに撃ち放つ。ルウの口元に得意げな笑みが浮いた刹那、射線の終端にあった巨大なパイプが、周囲のパイプを巻き込んで轟音とともに破裂する。

 大量の水が室内に流れ込み、そこは巨大な水槽となった。

 怪人がひととき額をかばい、そしてほどいたころには、すべてが水の中。天井の照明が光のはしごを落とした景色の中を――、鮫のそれに似た軌跡で鋭く横切るものがあった。

 耳鳴りのように響くスクリューの駆動音。

 義足に備えられた推進装置で、これ見よがしに泳ぎ回ってみせたあと、機械じかけの人魚は、怪人に怜悧な微笑みを浮かべてみせた。

 酸素マスクもない。ゴーグルもない。

 彼女の美貌を遮るものは、何もない。

 ……ここが水中であるのにも関わらずだ。


『玩具を与えすぎたな。お前には』


 ルウの首に巻かれたチョーカーから、たわんだ怪人の声がした。それは彼女の骨を伝い、聴覚に届く。


『返してあげてもいいわ。でも――』


 怪人のマスクの内側にも、ルウの声が響いた。


『私たちがあげた玩具も、返してもらう』


 昏く低い、殺意を伴った声で言い残すと、ルウはその場から泳ぎ去った。弧を描く軌道で向かう先には、水流に翻弄されてくるくると回転する水中銃。抱きかかるように掴み取り、即座に身を翻して発砲した。

 鋭利な殺意の列が水中を穿孔し、水泡を連れて怪人の元へと殺到する。


『いい狙いだ』


 軍装品にくるまれた、いかにも鈍重そうな怪人の体が、悠然とその位置から動き出した。X字のベルトで怪人の腰部に固定された流線型の箱――、インテークを備えたそれが強力な水流を生み出し、怪人を泳がせているのだ。

 だが、それだけだった。

 ルウの泳ぎが鮫のそれなら、怪人はさながら海亀だ。海中遊泳には程度がよくとも、競い合うにはほど遠い。事実ルウが撃ち放った針の一本は、すでに怪人の肩口に深々と突き刺さっていた。

 速度差は歴然。しかしそれでも真っ先に、彼女はその装置を狙ってきた。

 ……息が切れるまで、ここに留め置くつもりか。

 針で射殺す必要はない。周囲に充満する水が、いわばこの空間そのものが、怪人を嫌い、憎み、殺したがっている。彼女が手を下すまでもなく、人魚殺しの呪いがいずれ、怪人の息の根を枯らすだろう。人魚はそれを知悉している。ゆえに彼女が優先して狙うべきなのはただ一つ、逃走手段に他ならない。

 ――かつて怪人が、そう教えた通りに。


『その針で壊すのに、果たして何本必要かな』

『私も知りたい。だから試してる』


 しきりに位置を変えながら、射撃を続けるルウを挑発するように怪人は言った。彼は器用に身を翻し、殺到する針を翳した腕で塞き止めている。

 余裕ぶったその会話に比べ、状況は深刻だ。

 怪人のマスクから伸びて喉元を這う八本のホースは、彼が背負った防弾仕様のレギュレータ、呼吸器へと繋がれている。それがいかに頑丈とはいえ、水中銃の貧弱な威力でも接射されれば破壊される。逃走手段となる腰部の推進装置以外にも、彼は無数の弱点を体外に外付けしている状態なのだ。

 怪人がこの場から逃れるためには、脱出口をこじ開けるあいだ、人魚がしおらしくしているよう彼女の足を奪うしかなかった。

 そのためには――、


『いいとも。我慢比べといこうじゃないか』


 言い放つや怪人は姿勢を変え、推進装置の出力を最大にした。

 ちょうど足元へと銃を向ける格好でルウに応射しながら、彼が向かった空間の隅には、四肢を投げ出し茫然と漂う、男の水死体があった。


『――俺じゃなくこいつが、だが』


 すれ違いざま水死体の襟首を引っ掴み、怪人はそれを盾にした。


『ッ! ……こっ、の――、ろくでなしが!』


 立て続けに浴びせかけられる針が、次々と男の亡骸に突き刺さる。

 周囲の水が赤黒く染まり、さながら煙幕のように怪人の姿を覆い隠したのを見て、人魚は舌打ちした。


『……これで確信が持てたわね。あなたが人魚殺しだと。命を長らえるためになら何でもする。生き意地汚い、最低な連中――』

『この水死体も、お前の言う最低な連中の一人だが』

『あなたは違うと思ってた! 信じるに値すると! だから、私は――』

『体を許したと? 難儀な男に惚れたな』

『――ッ、黙れ!』


 返答が逆鱗に触れたのか、再び何本もの針が水死体を串刺しにする。怒り狂う人魚を尻目に、怪人は空間の四方に目を走らせた。

 ――脱出手段は二通り。

 一つ目のプランは、天井付近にある通気用のダクト。送風用のファンを破壊する手間はあるが、そのまま施設外まで脱出できる。手軽な最短ルートだ。二つ目のプランは、単純に元からある出入り口。水圧で閉ざされているが、それゆえ少しでも隙間が生じれば、漏れ出す水が扉を破壊してくれるだろう。

 ……プランBだな。破壊的なところが気に入った。

 この空間から水が排出されれば、この場から逃げ出すのにも、人魚を足止めするのにも好都合だ。しかしいずれにしても、あの人魚に与えた忌々しい二本足は、この場でへし折っておく必要が――、


『……すこしは死体を労ったらどうなんだ。血煙で何も――』


 怪人が苦言を呈すると同時、殺意がぞっと背筋を撫でた。

 おびただしい針状弾を浴び続け、死体から染み出した死血が視界を赤黒く閉ざしている。その向こうからスクリューの駆動音が聞こえた刹那、怪人の横っ腹を、人魚の肩が猛然と突き飛ばした。


『ぐ、ぉ――』

『あなたの死体にはそうしておくわ』


 跳ね跳ばされ、壁に叩きつけられた怪人を、続けざまの銃撃が襲う。すぐさま彼は姿勢を立て直し、針の雨をマスクの額に浴びながら、応射しようと小銃を構えたが、


『……物覚えのいいことだ』


 今度は怪人が、射線を遮られる番だった。

 針だらけの死体を盾にして、その肩越しに射撃しながらルウは泳ぎ去った。怪人のいる位置から対角にある空間の隅に辿り着くと、自身の背後に死体を放り捨て、わき目も振らずに怪人のもとへ向かってくる。

 ……これは、使えるな。

 負けじと怪人も壁を蹴り、推進装置が唸りを上げた。

 すれ違いざまの、殺意の応酬。ルウは素早く身を捻って銃撃をかわしたが、怪人の肩口には、いくつも針が突き刺さる。

 明白たる機動力の差を目の当たりにしながら、怪人は狼狽えることなく空間を突き進んだ。漂う死体の背後に回り込み、再び推進出力を最大にして――、それを空間の中央へ突き飛ばした。


『! この――』


 唐突に返却された死体で視界を塞がれ、ルウは急減速する。

 姿勢を制御する間際の一瞬の静止を、怪人は見逃すことなく射撃した。そうしてようやく人魚の肩に針が突き刺さり、表情を苦悶で歪めながらも、彼女は再び死体を掴んで自身の背後に投げ捨てる。

 擬似的な無重力空間を行き交う、さながらドッグファイトの軌跡。

 ……勝負に乗ったな。

 何度目かの死体争奪戦のあと、真正面から一直線にすれ違うその瞬間、怪人の手が、人魚の足をしたたかに掴み取った。


『な、ぁ――』


 急制動をかけられ、当惑するルウのまさに足元で、怪人は小銃の先端を義足のインテークにねじ込んだ。スクリューが銃身を巻き込み、それぞれがともにねじ折れて、右の義足はばらばらに砕け散った。


『う、あぁぁ……っ!』

『――これで一つ返してもらった。残った方はくれてやる』


 推進力のバランスが崩れ、でたらめな軌道で泳ぎ回る人魚に言い放つと、怪人はひしゃげて鉄くずになった小銃を手放した。

 ……ああなっては、もはやまともに泳げまい。

 怪人は身を翻し、錐もみしながら遠ざかっていく人魚に背を向けた。ここからは時間との勝負。彼女が片足航行に慣れて追いすがってくる前に、この場から水を排出してしまわねばならない。

 空間を潜航し、出入り口の前に降り立つと、怪人は腰に結わえ付けられていたバールを手に取った。刃先を扉の隙間に押し当て、ねじ込むが、浅い。すぐさま取っ手を掴んで壁面に立ち、踵を刃先に打ち下ろし始める。

 一度では、まだ浅い。

 二度でも、まだ足らない。

 三度を打ち下ろしてようやく、隙間に刃先が食い込んだ。てこを働かせようとバールの尾を掴み、身をかがめたところで――、怪人はぴたりと静止する。

 ……静かすぎる。

 ほんの一秒に満たない間隙のあと、直感に背筋を叩かれるようにして、怪人の上体が仰向けに跳ねた。

 そのまさに目と鼻の先を、銀色をした殺意が縦断する。

 光沢を伴った色と造形が、刹那にはっきりと見て取れた。銃弾とはもはや呼べない大きさ、長さをしたそれは、しかし怪人を貫く機会をわずかに逸して、彼の足元に突き刺さった。

 ――銛だ。

 まるで海神の携える槍のような、海洋動物を仕留めるためのもの。先端にかえしの付いたそれは、この施設への侵入経路を確保する用途に合わせて怪人自らが改造し、人魚に貸し与えていたものだった。

 瞬きをひとつ、怪人はゆっくりと視線を振り仰ぐ。

 ゆらゆらと淀む水流の向こうに、小銃と比べればよほど小ぶりな射出機を構えた、片足人魚の姿があった。

 ……惜しかったな。

 その巨大な鋸で貫かれていたなら、状況はすこしばかり変わったろう。しかし都度、鋸を回収して再利用するそれに次弾はなく、今ほど外した一撃が、この場で彼女の採りうる最後の選択肢であった。

 睨めつける視線の先に、怪人は人魚の表情を探す。

 さぞ悔しい思いをしたに違いない。屈辱に歪む彼女の顔を、別れ際の餞別に確かめておきたかった。

 そんな感傷的な眼差しが向かった先で、


『――――』


 果たして人魚は、音もなく笑っていた。

 万策尽きては、そうするほかない――と言うには、どこか底意地の悪い、いたずらな微笑み。唇に弧を描きながら、そっと両耳を塞ぐ人魚の仕草を見て、怪人は直感する。

 眼前に漂う鋸に視線を戻した。

 矢のようなそれの尾に、ワイヤーで乱雑に括り付けられた何か。

 手のひらに収まりそうな小ささの、


『……してやられた』


 炸薬の詰まった缶だった。

 バールを蹴飛ばし、身を引くが遅い。水中で炸裂した、いわば超小型の魚雷が、身につけた軍装品、そばにある隔壁ごと、怪人を八つ裂きにした。





 足音が聞こえる。

 金属質の不規則な足音が、流れ水の這う音に混じり、照明の明滅する廊下に響き渡る。ゆっくりと、ゆっくりと、それは怪人の耳元に近づいてくる。

 ……人魚殺しは陸では死ねない。

 倒れ伏した怪人の脳裏に、数え切れないほど耳にした、古い警句が反芻された。恐ろしい怪物がやってくる。不死を殺しにやってくると。人魚殺しのあいだで歌のように交わされた、不死のカルテルの合い言葉。

 その怪物は自分に他ならぬのだと、怪人はずっと思っていた。しかしそれは思い違いであったのだと、今ほどようやく理解したが、無理もない。

 ――果たして誰が、これほどの美貌の持ち主を、怪物などと呼べたろうか。


「……どう労ってほしい?」


 言いざまに、一本足の人魚は怪人の胴体に跨った。

 怪人のちぎれたハーネスから、角張った拳銃を奪い去り、彼の右胸に銃身を叩きつける。いかに不死の身といえど、心臓を撃ち抜かれればひととき意識を手放すことになる。そのあいだに体をうつ伏せに転がせば、流れ水を吸い込んで、怪人の息の根は枯れるだろう。

 しかし人魚は――、ルウは怪人が何も応えずにいるのを見て、砕けて割れた彼のマスクを、乱暴に額から剥ぎ取った。


「――ふ、は……っ」


 壊れたレギュレータが口を塞いでいたのだろう、怪人は大きく息をついた。

 そうしてあらわになった、怪人の素顔。浅黒く焼けた肌と、目元にかかる長さの黒髪。まだ性差もはっきりしない、中性的な顔つき――。

 それはどう多く見積もっても十代の域は出ないだろう、少年の顔だった。


「……いい眺めだな。馬乗りになられるとなおさら。それで充分だ」


 かすれた声色は、いささか顔つきに不相応であるものの、やはり高い。ひどく落ち着いた口調がマスクに覆われてくぐもっていてこそ、彼の声音は年を取った大人のそれに聞こえたのだ。

 長身の女が、小柄な少年に馬乗りになった、どこか倒錯的な格好をして、しかし人魚は覚めたように無表情だった。


「なぜ私を助けたの」


 ぽつり、独りごちるようにルウが言う。


「この期に及んで思い出話か? 泣かせるな」


 怪人は空とぼけたように応じてみせたが、ルウが無言で眉をひそめたのを見て、ため息を一つ。


「最初はまた、誰かがぼろを出したと思ったのさ。ところが連中、人魚を捕まえて足を切り落としたはいいが、殺し方がわからないと。迷惑な話だよ。人魚の肉が出回れば、俺の仕事がまた増える。それで渋々出向いてみれば、ありえないほど頭身が高くて、乳も、尻もでかくて――」

「ちょっと」

「とんでもなくすけべな体をした半裸の女が、迷子の羊みたいにべえべえ泣いてたからな。見ていられなかった」

「……ふざけないで」


 視線鋭く怒りをあらわにする美貌へ向けて、「ルウ――」と、大切そうにその名を口にしながら、怪人は瞼を下ろした。


「俺は人魚を食った。掟に従え。さよならだ」


 ルウの表情が、悲痛に歪んだ。

 胸に食い込む銃身が柔らかく浮いて、やがて震え始める。


「幼いあなたは……、そうするしかなかった。そう、しなければ――」

「死んでいた。とどのつまり命惜しさだ。長生きがしたかった。……俺たちが今まで仕留めてきた連中と同じ」

「あなたのおかげでここまで来れた」

「そのせいでここまで来るはめになった」

「そのための足だって、あなたが作ってくれたんでしょう」

「一人で始末をつけるのが面倒だっただけだ。お前は役に立った」


 目を閉じたまま淡々と応ずる彼に、ひとときルウは言いよどむ。他に、他にもっと何か――、まるで言い訳を工面するように、言いかけては口をつぐむのを繰り返し、繰り返し、


「……あなたのおかげで、妹の尊厳を取り戻すことができた。私たちが死ねないのをいいことに、凌辱の限りを尽くしてきた連中から――」

「俺もお前で楽しんだ。連中と何も違わないさ」


 ようやっと口にできたそれも品のない返しで袖にされ、ルウは叱られた子供のように肩を落とした。


「あれは……、そんな理由で許したんじゃない……」


 精一杯という態で絞り出された文句とともに、自身の胸元に何か、あたたかい温度が滴るのを、怪人は感じた。

 目を開く。ただ無表情に、怪人はもう微笑むこともしなかった。


「愛ゆえにと言えばためらうのか。確かに優しくはしたかもしれないが。そんなものはなかった。なかったんだよ、ルウ」


 そうしてまた、皮肉っぽい笑みを浮かべて、怪人になった少年は言う。


「――だから泣くな。また助けなきゃならなくなるだろう」


 目元を赤く染めながら、頬を伝う温度を、ルウは空いた手首で拭い去った。まるで泣き止もうとする子供の仕草、互いの見目とは正反対の態度の応酬に、怪人は苦笑する。


「……死ぬほど苦しいわよ」


 構え直された銃を胸元に押し当てられ、怪人は再び目を閉じる。


「ああ。……待ちくたびれたさ」


 人魚の体重が心地よかった。腹の上に乗った柔らかなそれも、胸に押し当てるられる銃身のそれも。

 胸にかかる圧力を通じて、引き金が沈んでいくのを感じる。

 そうしてかすかな金属音が一つ響き――、果たして何も起こらなかった。

 怪人は目を開く。

 ルウも、にわかに戸惑ったような顔をしている。

 目を見開いて静止する彼女の肩越しに、小柄な人影が見えた。それはルウの後頭部に、今ほど撃鉄を起こしたばかりらしい拳銃を突きつけ、


「喧嘩はやめて」


 場違いに可憐な声音とともに、躊躇いもせず射撃した。

 寸分狂いなく頭を撃ち抜かれ、ルウの体が怪人の胸元に倒れ伏す。意識を失った長身のからだを抱きすくめるようにして、怪人が身を起こすと、その額にも柔らかく銃口が突きつけられた。

 ――少女だ。

 折り重なるルウと怪人を跨いで立つ、怪人よりさらに小柄な姿。やたらに丈の短いチューブトップ、傷んだホットパンツに、擦り切れたモッズコートを羽織っている。路傍で客を持つ情婦のような俗っぽい装束、しかしそれにしてはひどく見目の幼い少女が、退屈そうな表情をしてそこにいた。

 唐突に現れた、場違さの集塊のような第三者に、怪人は驚く風でもなく、


「……銃が使えたとは知らなんだ」


 少女は肩をすくめ、みず色の髪をかきあげて、口笛一つ。いたずらっぽい笑みを浮かべながらこう応じた。


「ジョン・ウィックを見たから」


 言って即座に、怪人のこめかみを鉛玉が撃ち抜いた。





「あーあ。日が沈んじゃう」


 斜陽とともに沈みゆく海上施設を眺めながら、少女はぽつりと言った。

 浮き輪に尻をはめ込み、ぷかぷかと漂流する彼女のそばには、安物の手こぎボートが浮いている。エンジンらしいものは付いておらず、船上にあるのは二本のオールと、死体のように脱力しきった船員が二人ばかり。

 周囲を見渡しても、陸地はおろか漂流物さえ見当たらない。

 施設が沈みきってしまえば、水平線だけがそこに残り、やがてそれすらも夜闇が覆い隠してしまうだろう。青黒く染まりつつある空を、気の早い月を仰ぎ見ながら、少女は忌々しそうに嘆息した。


「痴話喧嘩のおかげで夜通し船を漕ぐことになりそうだね。最ッ高」


 皮肉を口にしても、手こぎボートの船員から応答はなかった。

 少女はたゆたうモッズコートの懐を探り、煙草のパッケージを取り出すが、当然のように濡れている。握りしめれば、濡れた雑巾のように滴る水滴。ぐしゃぐしゃに潰した箱をボートの中に放り投げると、それが頭に命中したらしい長身の女から、「痛っ」と小さく悲鳴が挙がった。


「妹の尊厳がどうたら、だっけ? 死んだみたいに言ってくれちゃってさ。さらわれてさばかれかけたのはお姉ちゃんの方なのに」

「…………」

「なんとか言ってよ。元バージンのお姉ちゃん」


 少女が言いざま、長身の女がボートの中から跳ね起きた。


「――っ、ヘレナ! あなたいつからそんな下品なこと!」


 わなわなと肩を震わせながら、少女を指差すルウ。

 一方の少女、ヘレナは呆れたふうに額を指でなぞりながら、ひどく煩わしげにボートの上に立つ長身を睨み返した。


「元からよ。何度も言ったけど、お姉ちゃんさ、いい? 世の中にはね、たくさんの男に代わる代わる嬲られて、乱暴にされて、でもそれがたまんないって性癖が真実存在するのよ」

「――なっ……、ぁ……」


 唐突なカミングアウトを聞かされ、ルウは耳まで真っ赤に染まる。絶句する彼女を尻目に、ヘレナは両手の人差し指で自身を指し示し、


「お姉ちゃんの妹はそれなの。つまりわたし。ですいずふうあいあむ」

「嘘よ! そんなの強がってるだけ――」

「いい加減に認めたらどう? わたしはさらわれたんじゃない。バージン捨てたくて陸に上がったし、ついでにハーレムも作ろうとしてた。お姉ちゃんが殴り倒した彼、お気に入りだったんだよ。サイズは並だけど量が多くてさ」

「やめて」

「大事なんだよ? おっきいばっかじゃ――」

「やめて!」


 両耳を塞ぐ仕草とともにうずくまるルウを見て、また一つヘレナの唇からため息が漏れる。体躯を見ればヘレナの方がよほど小柄ではあったが、彼女の口調はひどく冷静で、二人が言い争うさまは、さながら小さな大人と大きな子供のそれだった。


「……そうやってお姉ちゃんがうぶなせいで、わたしが陸に上がってからどれだけ恥をかいたかわかる?」


 変わらず低い声音でヘレナが問うと、ルウは怒りを抑えきれない様子で両手を振り、かぶりを振り、一拍置いてようやく返答をひねり出す。


「恥ですって? 今あなたが口にしていること以上の?」

「ええそうですとも。やっとの思いで男の子を捕まえて、いっぱいキスをしてさ。わたしの大事な初体験、彼の感想は忘れられないよ。――あそこがドブ臭いって」

「ドブ――」


 怒りで赤らんだルウの表情が、その一瞬で蒼白になった。


「あまりに本気で心配するから病院に駆け込んだら、わたしはそこから一年間も膣洗浄をするはめになった。無保険で法外な治療費を請求されて、なのにどこの売春宿でもあそこを嗅がれて門前払い。国中のバーで歌って踊って完済するのに何年もかかった。ようやく好みの男を掻き集めて、向こう半年はセックス以外何もしないつもりでいたら、一月もしないうちに怪人タコ男と姉が踏み込んできて、わたしのハーレムは血の海よ」

「う……、うぅぅ……!」


 次第、感情もあらわにヘレナにまくしたてられ、ルウは歯噛みすることしかできなかった。ヘレナは水面を蹴って浮き輪をボートに寄せ、俯こうとするルウの顔を覗き込みながら、


「お姉ちゃんはどうだった? おじさまは最高だったって。――つまり自分はちゃんと身綺麗にしてたってことよね。妹の性教育を怠ったままで!」

「だ、だって、あなたにはまだ早いと思っ――」

「危うく膣内細菌で彼氏を殺しかけたのに早いもクソもないでしょうよ!」


 言いざま、ヘレナがボートのへりを殴打すると、その騒音で叩き起こされたらしいもう一人の船員が、むくりと上体を起こした。


「……すこし静かにしてくれ」


 身につけていた軍装品をあらかた剥ぎ取られ、今や年若い少年の姿となった怪人、クラーケンだった。彼の眠たげな瞳と視線が重なるや、ヘレナの表情がぱっと華やぐような笑顔になる。


「おはよ、ちっこいおじさま。死に損なった気分はどーお?」

「不貞寝がしたい」

「これから夜通しオールを激しく前後させる遊びするの。ご一緒にいかが?」

「オールは二本しかない。二人いれば充分だろう。俺は眠たい」


 にべもなく言って船内に身を転がし、瞼を下ろした怪人の尻を、ヘレナは指先でついと撫でた。


「いたずらしちゃいますよ。ちっこいおじさまの、――ちっこいおじさまに」

「こっちのオールは俺に任せておけ」


 怪人はそそくさとオールを手にし、水面に差し込む。

 満足気に頷いてもう片方のオールを手に取ると、ヘレナはそれをルウの手元へ無造作に放り投げた。


「はい、――もう一本はお姉ちゃんね。わたしは星を眺める仕事があるから」

「……ヘレナ」


 ボートの片舷を軽く蹴飛ばし、離れていくヘレナを、ルウの低い声音が呼び止めた。彼女が八つ当たりのように手にしたオールを海面に放り捨てても、ヘレナは振り向かなかった。


「それで方角を指示するの。航海士よ航海士。サボりたいわけじゃ――」

「どうして邪魔をしたの」


 ぷかぷかと水面に浮かぶ背姿が、剣呑な沈黙を返す。

 聞えよがしなため息のあと、首を回すのさえ煩わしいとでも言いたげに空を仰いだまま、ヘレナの流し目がルウを睨めつけた。


「……どうして止めたらいけなかった?」

「はぐらかさないで。彼も私も、覚悟の上だった。それなのに……」

「死ぬのがそっちの都合なら、生かすのもわたしの勝手でしょ。次からはわたしの見えないところで試したらいい。わたしの前では死なせない」

「っ……! 彼はもう充分に生きた! だから受け入れた! 人魚の掟を! 手前勝手な感傷でそれを反故にするなんて、一体どういうつもりで――」

「ふざけろ」


 その小さな体からは想像し難い、重く低い声音が、ヘレナの唇から放たれた。息を呑むルウの眼前で、浮き輪がゆっくりと回転し、あらん限りの憤怒をたたえたヘレナの瞳が、ぎっとルウを射貫く。


「水底の珊瑚ほども長生きなんかしてない。何が不死だ。掟だなんて馬鹿げたことを。ほっといたってすぐ死にたがるくせに」


 ルウの頬を一筋、汗が伝う。

 何も言いかせなかった。人魚の掟も、不死の宿命も、およそどのような重々しい理屈も、この少女を言い負かすには足らない気がしたのだ。

 彼女が足を動かすと、浮き輪がボートへ近づいた。拾い上げたオールを、ヘレナはまるで一振りの剣のようにして、ルウの鼻先に突きつけた。


「漕げ」

「っ……」


 言われるがまま、ルウはオールを掴む。

 互いにオールの両端を掴んだ格好のまま、ヘレナは続ける。


「わたしたちはネバーダイなんかじゃない。死に損なっているだけだ。ろくに生きようともしないままで。……わたしを陸に連れていけ。連れていった後で死ね。どうしても生きるのがいやなら――」


 一息。凄んだ表情をその一瞬だけ、悲痛に歪ませながら、


「死にたがりの掟にわたしを巻き込むな」


 ヘレナはオールを手放した。

 再びボートを柔らかく蹴飛ばし、彼女の乗る浮き輪が離れていく。その肩はどこか小さく見えて、ひどく寂しげだった。

 オールを抱いたまま、糸が切れたようにして、ルウもその場に腰を落とす。


「ここまでだな」


 消沈した様子のルウに、柔らかく笑みを浮かべた少年が言った。


「俺たちは負かされた」


 ルウも、ぎこちなく笑みを返す。疲れ果てたように感情の希薄な微笑とともに、そう、と小さく肯いてから、彼女は言う。


「もう……、いいの?」

「ああ」


 ただそのやり取りだけで、二人の望みは潰えたようだった。

 ざあざあと、知らぬふりをするような波の音だけが聞こえる。馬鹿馬鹿しいとたしなめるような。愚かしいとあざ笑うような。


「お姉ちゃん」


 重苦しい沈黙のなか、可憐な少女の声がした。

 先ほどまでの恨みがましいものとも、凄むようなものとも違う。ただ愛しい姉妹を呼びたいだけの、柔らかい声色だった。


「……なぁに? ヘレナ」


 観念したように、ルウも柔らかい声音で応じる。

 視線を浮き輪の方へ向けると、ヘレナはにやりと、無邪気でいたずらな笑みを浮かべた。


「わたし――、おじさまとお姉ちゃんの赤ちゃんが見たい」

「え……」

「二人が汗も枯れるくらい愛し合って、作った子供が見たい。孫も見たいな」


 何の望みも、生きる目的もなくした二人を、まるで茶化すようにしてヘレナは言う。どことはなしに下品で、けれどもそれが、妹にできる精一杯の励ましなのだろうと、ルウは苦笑した。

 これが都合のいい寓話なら、そんなただれた結末も、自分たちには似合いだったかもしれないが。


「……でも、人間と人魚とは……」


 にわかに言い淀んだルウを、ヘレナは肩をすくめてせせら笑った。


「は。ついこの間までバージンだったくせに。試す時間なら、いくらだってあるはずでしょ。なんなら、今からここでおっ始めたらどう?」


 ひとしきりくつくつと笑ってみせたが、ルウは所在なげに頬を赤らめるばかりだった。笑い声の結びに、ため息をひとつ、ヘレナは空を振り仰いだ。

 星々はまだおぼろげで、彼女らが進むべき場所への指針とするには、あまりにも頼りなかった。それが茫洋とした海原の真っ只中とあってはなおさら。


「そうしてくれたら……、ま、わたしも諦めるかもね。散々足掻いて生きてみせた、あとでなら」


 忌々しいほど漠然とした、導べも見当たらぬ酷薄な景色に、まるで捨て台詞を吐くようにヘレナは言った。


「ルウ」

「……なに?」


 少年が呼びかける。と、ルウはすがるような視線を彼に向けた。


「嫌か?」


 得意げな言葉の意味を察した瞬間、ルウはかっと赤くなった。

 居心地が悪そうに身を捩り、少年の真っ直ぐな視線を見返しては、そらし、また見返すというようなことを何度か繰り返したあと、三本指を立てた手を、おずおずと翳してみせながら、


「週に……、三回、……や、二回……、まで、なら……」


 そのやり取りを聞いて、ぷっとヘレナが吹き出した。


「そのペースじゃ当分死ねないな」



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マーメイド・キリング 頸川ヒトヱ @kubikawa_hitoe

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