心をすませば

心をすませば

タイトル：心をすませば

私は高校生。

「あ、また先に借りられてる…」

私は今日も図書館で、ある本を借りようとした。

でも、私が借りる前に決まって

ある特定の男子がそれを借りていたんだ。

返却履歴を見ると、

「天栗展信（あまぐり ひろのぶ）」

って人がいっつも借りてる。

私が通ってる高校は結構クラスが多く、

おまけに私は根暗で奥手で、

他のクラスの人とはほとんど交流が無かった。

だからこの人の名前も全く知らない。

できれば特定の友達とだけ交流を図り

他の人たちとは全く触れ合うことなく

無難に卒業できればそれで良しとしていた私。

でもそんな青春にちょっともの足りなさを感じ、

私だって何かときめいたことをしたい、

そんな思いが膨らんで、

彼のことが段々気になり始めた。

でも交友関係はやっぱり変わらず、

2〜3人の友達としかいつも遊ばない。

その彼らにしても私と似たような性格だから、

「天栗展信くんって知ってる？」

って聞いても、誰も知らないと答えた。

はぁ…ため息をつく毎日が始まったんだ。

「…これってもしかして、初恋なのかな…」

こんな私だからそう思う。

今日も借りられてる。

あ、今日も先に借りられてた。

今日も…今日も…今日も…

私の先回りをして、その本を借りてるような彼。

でもあんまりそんな事が続くと私の場合だからか、

その先回りをして

私のことをずっと見守ってくれてる…？

みたいな感覚がやってきたんだ。

（1人部屋で勉強机に頬杖つきながら）

「…ふふん♪ほんと『耳をすませば』みたいだ♪私の名前がシズクだったらほんとそんな感じよね」

それから急展開が起きた。嬉しい急展開。

「えっ？」

その本を彼のあとで借りたとき、

なんと本の真ん中あたりに

小さなメモ書きが挟まれていた。

手紙だ。

「この本面白いよね。特に後半から畳み掛けるようにラストにもっていくシーンなんか、まるでドラマを見てるようで絵が浮かんでくるよね」

そんな感想から始まり、

「…もしよかったら、君ともっといろんな本を読んでみたい、なんて思ってるんだ」

みたいな、

デートのお誘いのような文言が記されていた。

普通の人なら敬遠したりするだろうか。

でも私はそんな時だったから

彼のその言葉がめちゃくちゃ嬉しく、

私の青春が謳歌される！やっと私にも…！？

みたいな明るい気持ちが差し込んできて、

本当に彼ともっとお近づきになりたい…

その思いでいっぱいになってしまった。

それからその本をクッションにして、

私と彼の文通が始まったんだ。

この状況が本当に私にとって良かった。

対面すると極端に恥ずかしがってしまう私ながら、

この手紙でのやり取りはメールより少し距離があり、

その適当な距離がお互いをもっと大事にし合う

適当な距離に感じられ、これなら続く…

そう思ったんだ。

（書庫）

で、さらに急展開♪

私たちは図書館の書庫で、落ち合うことになった。

初めてのデートじみた出来事。

誰も居ないシーンとした空間で、

私はあの本を片手にずっと読んでいた。

でもその直後、ちょっと奇妙な気配を背後に感じ、

振り向くと誰も居ない。

「……」

また気を取り直して本を読んでいると、

ヒタ…ヒタ…ヒタ…と静かな耳鳴りのような足音が

少し向こうの方から聞こえてきた。

しばらくそこに座っていたが、私は少し怖くなり、

別の感情が飛び込んできて、結局、書庫を出て行った。

せっかくの初恋をフイにするほどの恐怖！

それからその日に、

少し破れかぶれな気持ちで私は自分の殻を飛び出し、

他のクラスメイトに思いきって聞いてみた。

天栗展信くんの事。

すると誰もが「そんなヤツ知らないよ」「居ないよ」

と言ってきて、彼がどのクラスにも居ない事がわかった。

手紙もいつの間にか無くなっている。

そして翌日。

よくわからない衝撃が私にやってきた。

とりあえず又あの本を借りようと図書館に来た。

そしてカウンターで図書係の人に、

「この本って面白いですよね」

って少し笑顔を浮かべて言った時、

「あ、もうこの本知ってるんですか？さすが読書家♪実は今日入ったばかりなんですよ」

と返してきた。

「…どう言うこと」

あの本をクッションにして、

少しの間でも関係を結んだあの彼は一体何者…

そして今日、入荷。

…これからもしかして又…

動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=2jUUOd1E1L4