お済みのお皿

ナナシリア

お済みのお皿

「お済みのお皿お下げしますね」


 店員が声をかける。俺と彼女は軽くうなずいて、気持ち程度に体をどかす。


 店員が左手に三枚、右手に一枚のお皿を持って下がる。


 俺と彼女の間には、食べ終わったピザのお皿と、ピザカッターが一つ。


「……普段、休みの日とかなにしてるの?」


 クラスメイトの彼女。俺は彼女のことが少し気になっている。


「今日誘ってくれたみたいに、友達とご飯とか? なにもない日はYouTube見たりとかしてるよ。……きみは?」


「俺は、そうだな……。基本暇だけど、やっぱりYouTube見てることが多いかも」


 そこで会話が途切れる。嫌われたくないがゆえに、あまり自分の深いところをさらけ出せない。会話が盛り上がらない。


 俺は困ってピザの皿に視線を落とす。


「ええっと、どんなYouTuber見る? 俺は結構お笑い芸人とか見るんだけど……」


「あー、最近芸能人がYouTubeやるの流行ってるもんね……。わたしは、うーん、グループYouTuberが多いかな……? 〇ムドットとか?」


「コ〇ドットかあ。よく聞くけど、面白いの?」


 面白いから見てるにきまってるだろ馬鹿。会話しようがないからって逃げるな。


 自責しながらピザカッターを眺める。


「面白くはない」


 怒られそう。


「面白くはないのに見るのか……」


「ああ、でもある意味面白いよ。滑稽だから……」


 草。


 なんというかそろそろ温まって参りました。


「今度さ、一緒にコム〇ドット見ない?」


 彼女が意味の分からない誘いをした。別に嫌ではないけど映画みたいな誘い方をされると戸惑う。あと伏字の意味がなくなってる。


「いいけど……。どこで見るの?」


 問題はそこではないということを薄々察しながらも、話を進めざるを得ない。


「わたしの家、とかどう?」


 たかがコム・D・トごときで話がここまで進展するとは、時代だなあ。


 とはいえ、これほど彼女との話が盛り上がったのは初めてで、感謝の気持ちもある。


「いいね、それ。じゃあ日程とか決める?」


「うん——」


「失礼します、お済みのお皿お下げしてもよろしいですか?」


 忙しかったのか、しばらく姿を現さなかった店員がやってきた。


 俺は軽くうなずくと、店員はスッとお皿を回収して一礼して去っていった。

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お済みのお皿 ナナシリア @nanasi20090127

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