エンドロールに名前を載せて

タナカ

本編

君に、好きな曲なんて聞かなければ良かった。

聞く前は、好きな歌手が一緒だったりしないかな。とな思ったけど今思うと絶対嫌だった。

誕生日も、血液型も、好きな食べ物も、好きな色も、あんなに知りたかったのに、今は全部忘れたい。

だって、もう君の好きな歌手のこと、私も好きになっちゃったし、君の誕生日になると君のこと思い出しちゃうし、君が好きな色の服を買っちゃうし。君が好きなトマトだけは好きになれなかったけど…

今でも食事をする度にもし私がトマトを食べれたら君は私を選んでくれたのかな、とか思っちゃう。

きっと君は、好きな曲を聴いても私の事なんて思い出してくれないし、君は君の好きな人を歌詞に重ねるんだろうな。

私の、君の好きなものを好きになろうとしていた時間は無駄だったのかな。君が好きだからって聞き始めたバンドも、もっと純粋に好きになれてたら君の頭の中は私でいっぱいだったのかな。

君の誕生日や血液型を知って、勝手に占いをしたのがダメだったのかな。でも、インターネットの嘘っぱちな占いだったし、君と同じ誕生日で君と同じ血液型の人だっていっぱいいるもん。それに、そういうのが好きなのは乙女の宿命だし。君もやってたじゃん、好きな人と相性占い。私とのお泊まり会でこっそり教えてくれた好きな人と、私が「好きな人なんて居ないよ。」って嘘をついたあの日に。

あの日、「君が好きなの。」って本当のことを言えたなら、君は私を意識してくれたのかな。きっと、友達ではいられなくなっちゃうんだろうな。でも、君は優しくて残酷だから「友達のままでいようよ。」って言ってくれるんだろうけれど、君から向けられる好きと、私が君に向ける好きが違うまま一緒にいるのはしんどいよ。

私は君に会えて学校生活が楽しくなったけれど、君は友達が沢山いるし、私が居なくても変わらない学校生活を送っていたんだろうなって思うんだ。私の学校生活は君が色付けてくれたけど、君は私に出会う前から青い春みたいな色をしていたもんね。

それでも、私は君に必要とされたかったし君の人生をもっと鮮やかにしたかった。君の好きな色になりたかった。友達としてじゃなくてもっと踏み込んで、君も知らない君を知って、君の傍で生きていたかった。代え難い何かになりたかったの。君の人生の欠けてはならない一部に、君が死ぬ間際に会いたいなって、そうやって思い出す存在になりたかったの。

でも君は、私のことを放ったらかしてヒーロー役の男の子と出会っちゃったし。私が君とお揃いにしたくて伸ばしてた髪も君は彼の為だったしね。どうせ君の走馬灯には彼との大恋愛が上映されるんでしょ。

でも、友達Z役だとしてもエンドロールに名前が載ったら君の人生の一部になれたって言えるのかな。

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