第三話 出撃

時は少し進み7月5日マルハチヒトサン、第六兵舎にて

「おい朝霧!この書類を見てくれ!」

そう言いながら階段をかけ降りる荻原に朝からどうしたのだろうか、そう思いながら朝食の準備を止め書類を受け取り確認する、そこには新隊員の入隊情報と書いてある

「新隊員!?」

思わず声を出す、それもそうだ同期の新兵達は皆部隊に入っている、今期の訓練兵は朝霧達だけ、第五期訓練兵はまだまだ先だ

「なんで今の時期なんだか…」

荻原が少しため息をしながら嘆くように話す

「でも隊長!隊員が増えれば苦労もへりますよ!」

「確かにそうだが一体誰が来るんだ?第五期はまだだろう」

荻原の言葉に確かにそうだと、そう思いながら朝霧は書類を改めて確認する

「えーっと第四空上襲撃部隊、一等兵、国後 飛鷹(クナシリ ヒヨウ)」

「空襲のヤツが海撃にねぇ…」

荻原は少し不安そうだ。

そんなことを露知らず朝霧は書類を読み進める

「それと第五地上歩兵部隊、少尉の薫白 記紀(ユキシラ キキ)だそうですよ」

「二人も来るのか!?」

毎日演習ばっかの部隊に2名も来るのは朝霧としては、少し嬉しく感じる

「いつ頃来るのだ、ソイツらは」

「えーっと本日のマルキュウマルマルですね」

頭を抱えながら荻原は食卓に座る

「あっ!すみませんすぐ作ります!」

少し焦りながら料理に戻る朝霧に

「気をつけろよ、魔械戦以外での怪我は私が許さん」

と荻原は言う

「き、肝に銘じます…」

少しペースを緩め料理に取りかかる朝霧、本日の朝食はフィッシュ&チップスだ、油の海を泳ぐ細切りにしたポテトと白身魚の切り身が奏でるパチパチとした音は食欲を引き立てる

「しっかし、いつ見ても良い手際だ…出来れば夕食もお前の料理が食べたいが(小声)」

「ん?何か言いました?」

「いっいや!何でもない!それよりフライを見ていろ焦げたら許さん!」

聞こえていたのかと、照れ隠しのように声を上げる

「すっすみません!それとそろそろ出来るので箸は自分でお願いしますね」

「あぁ分かった」

席を立ち食器棚を開ける

「お前の箸も出しとくぞ」

「すみませんありがとうございます、あっ新隊員の分もお願いします」

後5分程で来るはずだ、そう思い2人分から4人分に変え、料理を進める。すると玄関のドアが開く

「失礼します!」

「おっ邪魔~」

礼儀正しい男性の声と少し、いや、だいぶ気だるげな女性の声だ

「朝霧はそのまま準備をしててくれ、私が出よう」

「了解しました」

荻原は箸を食卓に置き玄関に向かう

「貴様達が例の新隊員か?」

そう荻原が聞くとすぐ男の方が答える

「元第四空上襲撃部隊の国後飛鷹一等兵第七海上攻撃部隊に入隊します!」

少し遅れて女の方も口を開く

「元第五地上砲撃部隊の薫白記紀少尉で~す、よろしくね~」

「うむ、第七海上攻撃部隊の隊長の荻原佑樹だ、よろしく頼む」

荻原が自己紹介を終わらすと薫白は質問する

「あれ?第七ってもう一人居ませんでしたっけ~?」

「あぁ朝霧のことかあいつなら今飯を用意している、とりあえず上がりたまえ朝食にしよう」

そう言い食卓に誘導する

「連れてきたぞ、朝霧」

「あっ!来ましたか自己紹介は大丈夫です、聞こえてたので!ささ座ってください」

朝霧はそう言い食卓に座る、食卓に並べられた料理を見て国後と薫白は少し動揺する

「これが第七海上攻撃部隊の朝食!?」

「めっちゃ美味しそうなんだけど~!」

朝霧はどの部隊もレーションばっかなのか?と少し不安になっているが

「えへへ…これでもまだまだですけどね!」

と料理を褒めて貰った朝霧は少しこっぱずかしくなった様に頭を掻く

「少尉と一等兵も座りたまえ」

荻原が促すと

「やったぁ~こんなご飯久しぶりぃ~」

とがっつくように座る薫白と

「これを朝霧さんが?プロなみだ…」

と少し疑いの目を向ける国後を見て賑やかになったなと同時にこの部隊は大丈夫なのだろうかと思う荻原と朝霧だった

食事を済ませ少し気楽にしていると一つの放送が入る、

「第七海上攻撃部隊、第六海上攻撃部隊は至急格納庫へ、繰り返す第七海上攻撃部隊、第六海上攻撃部隊は至急格納庫へ」

その放送を聞き皆口を開く

「どうしたんでしょうね、隊長?」

と朝霧が隊長聞く

「私に聞くな、とりあえず準備しろ」

と荻原が部隊全員に

「いきなり任務~?やだね~」

と薫白が少し気だるそうに

「唐突にですね、事前書類もなしに…」

と国後が疑問に思う。

そして皆の準備が整い格納庫へ向かう

~格納庫~

格納庫に着くと第六海上攻撃部隊の面々と一人の老兵が向かい合っていた

「隊長あのおじいさんって誰ですか?」

と朝霧は質問する

「あの方は海上攻撃部隊の最高司令官だ…」

「さっ最高司令官!?」

と少し大きな声が出る、荻原が静かにしろと言おうとすると

「第七海上攻撃部隊!!何をしている!並べぇ!!」

老兵とは思えない声量を出す司令官に朝霧達は立ちすくむ、それを見かねた荻原が

「司令官!こちらの3名は新兵であります!少し多めに見て貰えませんか!」

と朝霧達を庇うそれを見た司令官は

「貴様は確か荻原か…蒼い辻斬り、貴様に免じて今回は見逃そう、並んだら作戦内容を話す」

と少し穏やかな声で話す、七海撃が並ぶと司令官が口を開く

「注目!今回の作戦の指揮を担当する、柳 大桐(ナギ オオギ)中将だ、今作戦は敵…つまりタガソレの海上拠点の一つ、「ターミガン」の攻略作戦だ、六海撃は七海撃の後ろにつき援護を、主戦力は七海撃だ」

その作戦内容に荻原は驚く

「わっ我々が主戦力ですか!?」

その言葉に柳中将は淡々と答える

「そうだ、何か問題でも?」

「いっいえ...何も」

その回答は、声にしなくとも私は間違っていない…そんな言葉が聞こえるようだ

「出撃はヒトマルマルマルだ、備えておけ」

そう言い残し柳中将は格納庫を後にした。

朝霧達が唖然としていると一人の軍人が話しかけてくる

「あんた達が七海撃?噂になってるぜ?」

「ど、どちら様で?」

朝霧が質問すると

「俺?俺様は豪だ、鷺山 豪(サギヤマ ゴウ)少佐だ!」

と自己紹介をする、すると荻原が呟く

「鷺山……?どっかで見たような…?」

朝霧がその声に気付き荻原に質問する

「隊長?どうしたんです?」

「あ?あぁ……あ!思いだしたぞ!」

それを聞き鷺山はお?お?とでも言いたそうな顔で荻原を見る

「確か演習で私に負けたあの鷺山か!」

「誰が負けた鷺山だってぇ!?」

鷺山はそれを聞き声を荒げる、まるで昔の黒歴史を掘り返されたようだ

「事実を言って何が悪い?」

悪びれもなく荻原は言う

「俺はお前に負けてねぇ!俺をやったのはそっちの新兵だ!」

と否定的だが鷺山は墓穴を掘ってしまったようだ

「なんだ?そうだったかすまないな、訂正しよう、新兵に負けた鷺山しょ・う・さ!」

荻原は更に腹の虫をつつく様に喋る

「た、隊長は鷺山少佐がお嫌いなのですか?」

見かねた朝霧が小声で質問する

「いや?嫌いではない、同期の中ではな」

「そ…そうですか……」

その言葉にまた反応する

「聞き捨てならねぇなぁ!荻原ぁ!そんなに言うなら今回の作戦で手柄を上げた方があだぁ!」

鷺山の頭に拳が落ちる、まるで悪いことをした子供をしかるように

「うちのが本当にSorryねぇ、後できっっっっちり言っとくから……ね?」

金髪で長髪の女性が鷺山の頭に拳をおろした流れで無理矢理頭を下げさせる、その姿はまんま親と子供だ

「離せよ!っと…、来波ぃ!お前俺よりこの部隊の歴短い癖にぃ!」

「その歴短いヤツにclassをover-された馬鹿はどこの誰でしょうねぇ?っとsorry、自己紹介を忘れてたわねぇ、Hello、私は来波中佐、来波Graf(キナミ グラーフ)中佐よ!ちゃんと陽ノ昇人だからDon't worryねぇ!」

すると国後と薫白がはっとした顔をする、どうしたのかと荻原が聞くと

「「グラーフ!!」」

と声を揃えて言うすると、グラーフも

「Oh!クナシリにユキシラ!久しぶりぃ!」

その様子を見た朝霧は質問する

「あの?お三方はどういったご関係で?」

するとグラーフは

「Are you not listening?私達はオサナナジミ?ね?クナシリ、ユキシラ!」

「え、えぇこれでも一応、訓練生の時期はグラーフが先ですが」

少し気まずそうに答える国後と

「そ~!幼なじみなんだぁ~!」

と対照的に誇らしげに答える薫白に朝霧は

「そうだったんですね……っあ!」

朝霧はふと気づく

「そろそろ出撃時間ですよ!隊長!」

現在時刻はマルキュウゴーサン、それを聞き荻原は命令する

「第七海上攻撃部隊、出撃準備!」

「「「了解!!」」」

それと同時にグラーフも指示を出す

「六海撃ぃ!出撃のTimeね!Hey!hey!HARRYUP!」

「「「了解!」」」

七海撃、六海撃が各々の魔械に乗る、今作戦は朝霧にとって初の実戦である、緊張していると通信が入る、グラーフだ

「Heyboy?肩のPowerを抜かないとBattleには勝てないわよ?」

答えようとするとまた通信が入る、

「来波中佐、私の部隊より自分の部隊の心配をした方がいいかと…」

隊長だ...しかしどこか怒っているような?

「Oh!sorryねぇ、荻原少佐YouのBoyfriend

を取ろうとしてる訳じゃ無いのよ?」

と少し冗談交じりでグラーフが謝る、その言葉に荻原は

「なっ!何がボーイフレンドよ!そんな関係じゃないから!」

「アッハッハ!sorry!sorry!次から気をつけるねぇ」

「はぁ、調子狂うわ、だから嫌いなのよ………あんたよ!鷺山!」

飛び火した!少し可哀想だとあははと苦笑いをする朝霧達七海撃の面々、唐突に飛び火した鷺山は

「これに関しては俺は悪ねぇぞ!荻原ぁ!」

と強く否定すると

「す、すみません朝霧さんうちの2人が…」

「ほんと後でキツく言っときますんで!」

残りの六海撃の隊員たちがわざわざ謝ってくれた、名前を呼ばれたことに気づき質問する

「あれ、どこかでお会いしましたか?」

すると

「あ、藍浜 蒼依(アイハマ アオイ)三等兵……です」

「滝巻 神郷(タキマキ シンゴ)二等兵っす!」

階級的に同期だろうか?そう思いながらも自分も自己紹介をする

「朝霧です、朝霧 連三等兵、気軽に朝霧と呼んでください、藍浜さん!滝巻さん!」

自分も名乗ると放送が流れる

「六海撃と七海撃の魔械は海上戦線方面のカタパルトへ向かってください」

次々と魔械がカタパルトへ向かい歩き始める

「あ、朝霧さん、が!、頑張りましょうね!」

藍浜が言う、どこかぎこちない声だ疲れているのだろうか?

「ええ!頑張りましょうね!藍浜さん!」

先に朝霧達第七海上攻撃部隊が出撃するようだ

「射出推力正常…第七海上攻撃部隊…魔械名刃癸3機刃乙1機…搭乗者朝霧三等兵、薫白二等兵、国後少尉、荻原少佐発進ドウゾ」

「皆準備は良いか?我々七海撃の初任務よ...特に国後達は気をつけろ!」

荻原が皆を鼓舞する、それに答えるように全員の顔つきが変わる

「朝霧!」「国後少尉!」「薫白~!」

「「「刃癸出ます!」」」

「荻原!刃乙出る!」

その声と共にカタパルトが起動する、次々と戦場に向かう七海撃の魔械を追うように六海撃の魔械も出撃する

「射出推力正常…第六海上攻撃部隊…魔械名刃癸2機刃乙2機…搭乗者来波中佐、鷺山少佐、滝巻二等兵、藍浜三等兵発進ドウゾ」

放送が入ると

「HEY!Boys&Girls?Are you ready?!六海撃出るわよぉ!Go!Go!Go!」

グラーフ達、六海撃面々も表情を変え出撃する

「Graf!刃乙出るわよぉ!」

「鷺山ぁ!刃乙で行くぜぇ!」

「滝巻!出るっすよー!」

「あ、藍浜!出ます!」

カタパルトが起動し魔械が出撃していく、言うなればこの出撃は、この作戦の開始と海上戦線の激戦化を意味した、この作戦の……朝霧達の結末は………




用語紹介等


国後 飛鷹(クナシリ ヒヨウ) 少尉 男 20歳

元第三期訓練生で現第七海上攻撃部隊。

薫白とグラーフとは幼なじみであり、昔は良く三人で遊んでいた。

空上部隊にいたときは戦闘機で部隊中の魔械撃墜数2位を取れるほどドッグファイトが得意、尚少し生真面目過ぎる節があるため注意が必要。

現在は七海撃にて刃葵に乗る。


薫白 記紀(ユキシラ キキ) 一等兵 女 18歳

元第三期訓練生で現第七海上攻撃部隊。

国後とグラーフとは幼なじみであり、よく2人の家に入り浸っていた。

陸上部隊にいた時は歩兵であったが、後に魔械適性検査をすると適性値が基準を満たしたため七海撃へ。

なにもしたくない時はとことんなにもしない性格だが、機械弄りが趣味のため自分の魔械を無許可で改造している………かもしれない

現在は七海撃にて刃葵に乗る。


椰 大桐(ナギ オオギ) 中将 男 86歳

魔械海上攻撃部隊の最高司令官、あと地味に陽ノ昇軍の初の司令官、妻子持ちで孫の前ではとことん甘いおじいちゃんと化す。


鷺山 豪(サギヤマ ゴウ)少佐 男 25歳

元第二期訓練生であり現第六海上攻撃部隊副隊長。

グラーフが来たことにより副隊長に下げられたためグラーフを目の敵にしている。

魔械戦は油断しなければそこら辺の隊長やエースパイロットとタイマンを張れる。

荻原とは訓練生時代からの腐れ縁、成績を勝手に比べて勝手に負けていた。

現在は六海撃で刃乙に乗る。


来波 グラーフ(キナミ グラーフ)中佐 女 20歳

元第三期訓練生であり現第六海上攻撃部隊隊長。

純血…とまでは行かないが立派な陽ノ昇人。

魔械パイロット歴は朝霧達より短いが荻原を優に越える戦闘技術を持つ。

ティータイムとこたつをこよなく愛しており、軍にはいる前の冬の時期にはこたつに入り紅茶を飲むという和と洋を同時に楽しんでいた。こたつをオコタと呼ぶ。

現在は六海撃で刃乙に乗る。


滝巻 神郷(タキマキ シンゴ)二等兵 男 19歳

元第四期訓練生であり現第六海上攻撃部隊。

空手家の家系に生まれたが魔械の構造にハマり軍に入る、整備士志望だったが適性があったためパイロットとなる。六海撃にとっては貴重なパイロット兼メカニック。

現在は六海撃で刃葵に乗る。


藍浜 蒼依(アイハマ アオイ)三等兵 女 20歳

元第四期訓練生であり現第六海上攻撃部隊。

とある理由で第七海上攻撃部隊への移動を密かに望んでいる。

魔械のパイロットとしては中の下の実力、しかしながら戦況の把握が得意で完璧なタイミングで掩護射撃が出来る。

現在は六海撃で刃葵に乗る。


ターミガン

タガソレの海上拠点の一つ、メインの設備は航空機基地であり魔械はあまり配備されていない、その数は10数機という情報のため作戦(第三話)は二部隊での攻撃になった。

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魔械ノ戦 てとゴジ @tetogozi0413

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