裸のねぇちゃんが歩いていた

白川津 中々

◾️

裸のねぇちゃんが歩いていた。




なんだこりゃ春か。

いや、よくよく考えると夏だ。今も汗をかき続けびしょ濡れ。不快ったらない。俺も脱ぎたい。



……脱ぐか。



即座に脱着。完全形態。見事に弛んだ中年ボディが光り輝く。いいよねいいよねねぇちゃん裸だし俺もなってもいいよねね、ね、ね。




「何やってんのあんた朝っぱらから」


「え」




公僕である。

公僕がやってきて俺を捉えるのである。




「何考えてんだ」


「え、だってだってあそこに裸のねぇちゃんが……」




いない。何処へ消えたぁ。




「なるほど、やってんねぇ」


「やってないです。暑さが、夏の暑さが悪いんです」


「分かった。分かった。じゃあエアコン効いた部屋で話そっか」





捕まった俺はこっぴどく説教され会社も休んだ。散々だ。


結局あの裸のねぇちゃんはなんだったんだろう。残る疑問。もしやこの世ならざるものだったのか。途端に悪寒。走る怖気。だが汗はかく。あっちぃなぁ今年は。

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