第23話 連隊史の評価


 戦史で「大狼だいろう原野の戦い」と呼ばれるこの攻防戦は、鬼軍にとってかなり危うい勝利であった。

 後に行われた戦略分析では後五分ほど戦車隊の到着が遅ければ第五中隊は壊滅していたと言われている。

 その戦車隊も輸送船から陸揚げされたばかりであり、出撃は現場指揮官の独自判断によるものだった。もし正規の手順を踏んで命令を待っていたら間違いなく間に合わなかっただろう。

 後世の歴史家はこぞって戦車隊指揮官の独断を褒め讃えた。この「五分」が勝敗を分けたという評価をしたのである。

 しかし後の連隊史では第五中隊の勇戦を上げ、勝利の理由は戦車隊が到着するまで持ち堪えた中隊の活躍であると明記した。

 連隊史はこのように続けている。


「第五中隊の敢闘は戦線の崩壊を防ぎ、ヨモツ国軍を勝利へと導いた。中隊の女性兵士たちはその勇戦をもって、女武者が侍に劣らぬ事を証明したのである」

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