脳内アニメ
K.night
幻の命/SEKAI NO OWARI
オレンジ色の広大な砂漠と真っ青な空が一面に広がっている世界。完全に干上がってしまった世界。ポツン、とキノコのフォルムの大きな白い建物がある。地中深くにまだ残っている水を汲んでいる管。地表が熱いので人の居住地はぽこり、とその管の上にあるのだ。
その真っ白い建物にある唯一の丸い穴。それは黒い窓。そこからモノクロの地平線を見ている赤髪の男がいる。
内側は婉曲した廊下のようになっている。白い廊下。物憂げな眼で窓の外を見ている赤髪の男。
「うわああああ」
赤髪の男の目の前でふらふらと歩いていた男が頭を抱えて発狂しだした。黒い髪はすでにところどころなくなっている。赤髪の男はそれを特に気にすることはない。すぐに、白い服装をした人々がやってきた。白い服は大きなローブになっていて、上は三角に尖っている。前には赤く紋章が入っている。まるで聖職者のようだ。片手にはさすまたを持っている。聖職者達は発狂した男の腕を持ち、引きずっていく。
聖職者達に投げ出された場所はシアターだ。鳥の声、森のざわめき、海のせせらぎ。音と映像は美しくてもイミテーション。発狂した男は涙を流しながら膝を折った。
「うあう」
イミテーションの木々に手を差しのべる。その真っ暗な瞳に映る偽物の木漏れ日。
一方赤髪の男は人の列に並んでいた。円形の大きな広場。その真ん中に支柱があり、そこから5等分に人が並んでいる。数十人は生活している人がいる。支柱にある赤いボタンを押すと片手に収まるくらいの白く丸い食べ物が出てくる。水素から人間に必要な栄養素を取り出すことができるようになった人類は毎日そのご飯を食べている。味の変化なんてない。みんな死んだような目で白いものを口に運んでいる。みんな、立ったまま。そんな中赤髪の男に近づく女性がいた。ピンク色の髪をしたその女性は大きなお腹をしている。臨月の様だ。他の人と違い、優しい目をしているその女性の腹を赤髪の男はそっと撫でた。
そこへ発狂した男が手から血を流してやってきた。口からも血を流している。手首を自分でかみ切ったようだ。大きい目に涙を溜めて、なぜか笑顔な男は首を少し傾けて倒れていった。また聖職者達がやってくる。発狂した男を囲み、一人が首を振るとタンカのようなものに乗せて連れていかれた。血は、水圧洗浄機のようなものであっという間にきれいになった。
キノコの傘のような部分がぽこんと開いて、小型の飛行船が出てくる。オレンジと青の海を少し飛ぶと、地表が真っ黒な場所に辿り着く。飛行船の下から、発狂した男が落とされる。黒いその場に落ちると、ほどなく体に火が点き、真っ黒になっていった。飛行船はそれを見ることなくすでに戻っている。
赤髪の男は走っていた。この建物の外周は走っても30分ほどしかない。ここで生まれ、ここで死んでいく。窓から映る暗い世界から目を背け、イミテーションルームへ。この世界からなくなってしまった木々達を見ながらぐっと、拳を握り締める男。
食料の配給がある部屋で、地べたに座って愛おしそうにお腹を撫でる女性の元へ赤髪の男はやってくる。そっと隣に座り、お腹に耳を当てる。赤髪の男は優しい笑顔を浮かべ目を閉じた。
緊急の赤いランプがついている。聖職者達が慌てている。何があったのかと確認している間に赤髪の男が扉を光るブレードで破壊して光と共に入ってくる。聖職者達が囲んでいるのは種だった。その種をひっつかみ、飛び出していく赤髪の男。聖職者達は赤髪の男を追いかけるが、鍛えてない男どもは誰も追いつけなかった。
赤髪の男は飛行船乗り場までやって来て、追手からぎりぎりすり抜けその窓を閉めた。二重になった扉を超え、飛行船は外へと飛んでいく。飛行船は自動操縦だ。赤髪の男は飛行船の中で宇宙服のような白くダボダボな服を着る。飛行船のモニターに妊婦の女性が映った。赤髪の男は少し動きを止めるが、少し笑って服を着て、透明なフルフェイスのメットを被った。
やがて「黒点」の元に辿り着くと赤髪の男は種と共に飛行船から落ちていった。足はそこで折れた。屈みこみ必死で元々人間だった黒い炭をかき分ける。そして、種を入れ、そこに炭を被せて、自身が被っていた、メットを置いた。ほどなく赤髪に火が点き、全身が炎に焼かれていく。その中赤髪の男は笑っていた。初めて見た青い空に手を伸ばす。そこに木々のざわめきを聞きながら。
日々は流れ、今日も種の上に死体はどさどさと落とされていく。種はゆっくりとその根を伸ばしていく。
ごっ。
かつて、赤髪の男が被せたメットを種は突き破った。その黒い大地の上に、かすかに芽を出す種。側にはボロボロになった飛行船があり、老人がその芽を見つける。
脳内アニメ K.night @hayashi-satoru
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