第7話 <フォス>の門で


 おにぎりを食べ終わって、試しに『生活魔法』の『土』でゴミを燃やす穴を掘ってみようと思い、地面に向けて『穴を掘る』って思ったら、スコップで掘ったような小さな穴が出来た。


 ……バレーボールは無理だけど、テニスボールやソフトボールなら入りそうね。


 穴に透明のフィルムを丸めて入れ、『火』で燃やすと思ったら、火が出て透明のフィルムがチリチリになった……上出来ね。土を掛けて埋めよう。


「そうだ、スラ君もお水飲む?」


 ペットボトルの口から水を少しスラ君にらすと、スラ君は触手を伸ばしてペットボトルごと体内に吸収した。


――えっ! あっ、スラ君の体がペットボトルの形に合わせて楕円形だえんけいになった。中でペットボトルが浮かんでいて、プクプクと小さな泡を出してペットボトルが消えていく。


「スラ君、ペットボトルも食べるの?」


 スラ君がプルルンと返事をした後に、鑑定Bさんが答えてくれる。


【スライムは雑食で、砂や石は食べませんが、植物や生き物・魔物・人工的に作られた物もほとんど吸収します。先程の、おにぎりのフィルムも吸収するでしょう】


 ――じゃあ、次におにぎりを渡す時はフィルムのまま渡そう。


 出発する前に、残りのMPを見よう――ステータス・オープン。

―――――――――――――――――――――――――――――

名前 アスカ(明日香)

経験値 6

HP 26/26

MP 20/26

攻撃力 F (低い:成人の平均的な能力より低い)

防御力 E (普通:成人の平均的な能力)

精神力 B (上級)

敏捷性 D (高い:成人の平均的な能力より高め)


スキルポイント 6P → 7P(6P+キラーラビット1P)

―――――――――――――――――――――――――――――

 経験値が6になっている……スライムを倒した時は2だったから、キラーラビットでもらえる経験値は4ね。


 ……これって、スラ君だけで倒しても経験値をもらえるのかな?


【はい。従魔が倒した魔物の経験値もアスカに加算されます】


 ――私が止めを刺さないと、って考えなくて良いのは助かる。


 レベルEの魔法の消費MPは少ないのか、MPはまだ半分以上ある。スキルポイントももらえたし、なかなか良い感じね。ふふ。


 その後も、スライムやキラーラビットを倒しながら<フォス>の街へと向かった。



 ◇

 しばらくすると、長い石壁が見えて来た……大きな街ね。


 近付くと、門があって警備兵みたいな人が2人見える。他は誰もいないな……。


 スラ君が魔物だと攻撃されたら嫌だから、抱っこして門に向かう。


 どこから来たのか聞かれるだろうな……この大陸には3つの国しかないから、日本なんて答えたら怪しまれるよね。


 ――ねえ、鑑定Bさん、自分は<渡り人>だって言ってもいいの?


【<渡り人>だと言っても構いませんが、確認する為に色々と聞かれるでしょう。噂は直ぐに広まり、アスカの場合、女性なので変な人間に絡まれる確率が増えます。保護すると言い出す貴族も出て来るでしょう】


 ――そっか~。おばちゃんじゃなく女性扱いしてくれるのは嬉しいけど、絡まれるのは嫌だな。貴族とか出て来られても困るから、<渡り人>だとは言わないでおこう。


 ――鑑定Bさん……えっと、"鑑定Bさん"は長くて言いにくいから、これから"ビーさん"て呼ぶね。


 ……返事がない。あっ、質問じゃないからか……えっと、鑑定Bさん、"ビーさん"と呼んでもいいかな?


【はい】


 ――ビーさん、「どこから来た?」って聞かれたら何て答えればいい?


【無難に答えるのなら、後ろの山々を指して、「遠くの山にある村から来た」と言えば良いかと。あの山々――<アリラートス大陸>を二分する山岳地帯は、どの国も領有していない無主地むしゅちで、実際に小さな集落があちこちにあります】


 ……へえ~、どの国の領地でもない土地があるのね。


 門に着くと2人の警備兵は、顔が見えるヘルム(兜)を被っているんだけど、西洋人みたいな顔……うん、外人さんです。


 年配の警備兵さんに、どこから来たのか聞かれてビーさんに教えてもらった通りに答えた――。


「あー、たまにいるな。山から来る奴が……、女性……は少ないが……」

「はい……、そうですね……。で、そのスライムは従魔かい?」


 50代位の年配の警備兵さんと、20代半ばかな? 若い警備兵さん。ジロジロと見られるけど、スキル『異世界言語』のお陰か、警備兵さんの話す言葉は普通に分かる。


「はい。従魔を街に連れて入ってもいいですか?」


「連れて入ってもいいが、スライムでも従魔は登録することになっているから、冒険者ギルドで登録するように」


「分かりました」


 この門から伸びる大通りを真っ直ぐに行ったら、中央で大通りが交差していて、その右側の角に冒険者ギルドがあると教えてくれた。


 身分証を持っていないから、入門税として大銅貨を1枚払うように言われたので、インベントリから出して渡す。


 ……神様、インベントリにお金を入れてくれて、ありがとうございます。




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