第6話 キラーラビット

 スラ君を地面に下ろして歩くと、はじめスルスルと動いていたのが、遅れるとピョンピョンと飛び跳ねて追いかけて来る。そしてスルスルと動いて、またピョンピョンと……うん、抱っこしようか。そんなに重くないしね。


 少し歩くと、茶色い大きなウサギが見えた。頭に1本の小さな角が生えている……あのウサギの名前も知っている。たぶんキラーかホーン……どっちだろう。


 鑑定Bさんに、あのウサギは魔物なのかと聞いたら、キラーラビットと言う魔物で、『風魔法E』1~2発で倒せると教えてくれた。


 ……キラーでした。見た目は少し大きな普通のウサギよ。角があるけどね。


「スラ君、一緒にあのキラーラビットを倒すよ」


 声を掛けると、スラ君がクネクネと動く。私の言葉を理解してくれたみたいね。


 私に気が付いたキラーラビットが、トゲトゲの牙をき出して跳びかかって来た。顔が怖過ぎる!


『ギギー!』


 スラ君が私の腕からジャンプして、跳びかかって来たキラーラビットに体当たりした。


「スラ君、離れてー!」


 地面に落ちたキラーラビットに手のひらを向けて『風魔法E』とつぶやくと、風の刃がキラーラビットに当たったけどまだ動いている!


 魔法をもう1発撃とうとしたら、スラ君がキラーラビットに近付いて、腕みたいな触手を伸ばしてパンチをした!


 バチーン!


 ……イイ音がして、キラーラビットがぐったりとして動かなくなった。倒せたのかな? 


【アスカ、キラーラビットのHPは0です】


 ――鑑定Bさん、キラーラビットを『鑑定』してくれたのね。ありがとう。


 ふう~、終わった。スラ君が先に体当たりしなかったら、私の魔法が間に合わなかったかもね。それと、スラ君に私の『風魔法』が当たらないかドキドキした……。


「スラ君、次からは私が魔法を撃ってから攻撃してね」


 スラ君がキラーラビットの前でプルルンと動いた。


 スラ君がキラーラビットに体当たりしたから、HPが減ってないか心配で、スラ君に手を向けて『回復魔法E』とつぶやくと、スラ君が淡く光った。


 スラ君が伸びて左右に揺れている……嬉しそうに見えるんだけど。ふふ。


 ――鑑定Bさん、このキラーラビットは解体しないとダメ?


【そのまま冒険者ギルドに持って行っても買い取ってくれます。解体手数料は取られますが、キラーラビットは皮と肉が売れるので赤字にはなりません】


 ――良かった。魚すらさばけないのに、ウサギの解体なんて無理。このままインベントリに収納しよう。


 そう思ってキラーラビットに触れたら、大きなキラーラビットが一瞬で消えた……便利ね。

―――――――――――――――――――――――――――――

【インベントリ(時間停止付き)】10マス×各10個:空き2マス

・おにぎり×10

・水のペットボトル×10

・片手剣×1

・銀貨(10,000ルギ=約1万円)×10

・大銅貨(1,000ルギ=約1,000円)×10

・スニーカー×1

・スライムの魔核×1

・キラーラビット×1


―――――――――――――――――――――――――――――

 インベントリを見たら、ちゃんとキラーラビットが入っている。


 う~ん、おにぎりの文字が誘惑してくる。目が覚めてから、何も食べていないからお腹が空いてきた。


「スラ君、少し休憩するね」


 地面に腰を下ろして、インベントリからおにぎりを1個出して見ると、コンビニで売っているやつだ。


 私だけ食べるのは気が引けるから、おにぎりをもう1個取り出して、フィルムを取ってスラ君に差し出す。


「スラ君、おにぎり食べられるかな?」


 スラ君が背伸びをして、器用に触手でおにぎりを受け取ると、おにぎりが体内へと入って行く……。


 おにぎりを食べながらスラ君の様子を見ると――丸い形に戻ったスラ君の、水色の体の中でおにぎりが浮かんで見えている。


 プクプクと小さな泡がおにぎりの周りから炭酸のようにがれて行くと、おにぎりが段々と小さくなっていく……食べるのが早くない?


【スライムは、おにぎり程度の大きさの食べ物でしたら数十秒で吸収します】


 ――へえ~、早いのね。


 インベントリからペットボトルの水を取り出して飲みながら、スラ君の中にあるおにぎりが消えていくのを見る……あっという間で、私より食べるのが早い。


 おにぎりを食べながら、おにぎりを包んでいた透明のフィルムを見る……『生活魔法』で燃やせるかな?


【はい、『火』もしくは『火種』と思えば燃やせます】


 ――よし、食べ終わったらやってみよう。


 『生活魔法』には火・風・土・水の4属性があるけど、人によって使えない属性があったり、威力が違ったりするんだって。


 鑑定Bさんから、<渡り人>は4属性を使えて、最大で属性魔法レベルEまでの威力が出せるから、使う時は加減を考えるように言われた。



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