第5話 <フォス>の街へ
「……そう、質問に答えてくれるのね。それは助かる」
私が更に質問すると、『鑑定C』までは私が鑑定したいと思ったもの(魔物・人・アイテムなど)の説明が出て、『鑑定B』になると私が"疑問に思ったこと"にも答えてくれると言う。しかも、口に出さずに考えるだけでいいらしい。
「へえ~、考えるだけで何でも答えてくれるの?」
【データにあることは答えられます】
と、長細いチャット画面みたいなのが視界の下に出て来る。
「データ……そうなんだ。鑑定Bさん、これからよろしくね」
……返事がない。質問じゃないからかな?
【はい、アスカの質問に対して答えます】
「質問に対して……分かった。さっき、鑑定Bさんが言っていた、ここから1番近い街の<フォス>には冒険者ギルドはあるの?」
【あります。<ラヴァール王国>では、全ての街に冒険者ギルドがあります】
「そう……じゃあ、取りあえず<フォス>に行こう。東ってどっちかな?」
あっ、声に出さなくてもいいって聞いたけど、つい声に出してしまう。気を付けないと、誰かに見られたら独り言を変なおばちゃんに見えるわね。
【<フォス>は、今のアスカの位置から言うと前方になります】
――前ね、ありがとう。ところで鑑定Bさん、今、何時頃か分かる?
【朝の8時過ぎです】
――それなら急がなくても日は暮れないわね。
街に向かって歩き出し、鑑定Bさんにこの世界のことを質問していく。
ビーさんは、過去に何人もの日本人が転移して来たので、この世界には日本の技術が広まっていて、他国だけど魔核で動く汽車や車があると言う。
……この世界では魔石じゃなく魔核って言うのね。
「へえ~、じゃあ、日本の電化製品もあるのかな?」
【はい。元々、同じような性能の魔道具もありますが、あちらの――日本の電化製品を真似た魔道具もあります】
冷蔵庫や洗濯機もあるらしい。お風呂は元々あって、貴族や裕福な商人の家・高級宿にあるんだって。シャワーでもいいんだけど、たまにはお風呂に入りたいな。
そして、こっちに転移してきた日本人は<
……尊いって、私なんてどこにでもいる普通の人よ。あの部屋にいた人たちも普通だった。もしかしたら、「俺は勇者になるんだ!」とか思っている人もいたかも知れないけど……。
何かあれば教会が保護してくれると言う。
……それって保護という名の
【違います。囲い込もうとする貴族から守ってくれます】
……貴族から守ってくれるんだ。先入観で監禁だなんて言ってごめんなさい。
あれこれ質問して、だいぶ鑑定Bさんとの会話に慣れて来た。
草原を歩くなんていつ以来だろう。空気も美味しい……。
カサカサ……
音のした方を見ると、背の低い草の間に水色の透明のゼリーみたいな……サッカーボールより小さな丸いのが動いている。
あれは……鑑定Bさん、あれはスライムよね? あれを倒すのよね? どうやって倒したらいいのかな?
【はい、スライムです。アスカは『風魔法B』を覚えているので、スライムなら、『風魔法E』の魔法1発で倒せます。スライムは、こちらから攻撃しなければ襲ってこないので余裕で倒せます】
ナイフで倒す場合、私の攻撃力が低いから数回攻撃しないと倒せないらしい。なるほど。
――えっと、魔法はどうやって撃つの?
【魔物を狙って手を向け、『風魔法E』と思えば無詠唱で発動しますが、慣れるまでは『風魔法E』とつぶやくといいでしょう。簡単に魔法が発動し、命中させることが出来ます】
狙う魔物が、私の魔法のレベル『風魔法B』より格下だと命中しやすいんだって――鑑定Bさん、分かりやすい説明をありがとう。早速、やってみよう。
草を食べているのか、動かないスライムに右手の平を向けて『風魔法E』とつぶやく。
シュッー!
手のひらから風の刃がスライムに向かって飛んで行き、スライムが
「魔法が使えた……凄い、スライムに当たったわ!」
近寄ってみると、スライムの体液がベチャ~っと広がるように崩れていて、その真ん中に小さなビー玉みたいな青い石があった。それを拾って鑑定Bさんに聞いてみる。
――これが……魔石じゃなくて魔核かな?
【はい、スライムの魔核です。魔石は、鉱山から
……魔核と魔石があって、鉱山から取れるのが魔石ね。なるほど。
インベントリに入れておこうと考えると、魔核が消えた。凄いね。
経験値がどれくらい入ったのか気になる――ステータス・オープン。
―――――――――――――――――――――――――――――
名前 アスカ(明日香)
経験値 2
HP 26/26
MP 25/26
攻撃力 F (低い:成人の平均的な能力より低い)
防御力 E (普通:成人の平均的な能力)
精神力 B (上級)
敏捷性 D (高い:成人の平均的な能力より高め)
スキルポイント 5P → 6P(5P+スライム1P)
―――――――――――――――――――――――――――――
スライムを倒してもらえた経験値は2……少ないね。
【アイテム購入】でおにぎりを買おうと思ったら、100の経験値が必要で……スライム50体倒しておにぎり1個なんてかなり厳しい。これは……魔核を売って街で食べ物を手に入れないとね。
あ、スキルポイントも増えている。でも、次にスライムを倒してもスキルポイントはもらえないのよね。
神様は、魔物の種類ごと最低1Pもらえるって言っていたから、強い魔物を倒したらもっともらえるのかもね。
歩き始めると、またスライムがいた。さっきのより小さい……倒すのは可哀想ね。
――鑑定Bさん、あのスライムをテイムしたいけど出来る?
【出来ます。あのスライムを見ながら、手を
――分かった、やってみるね。
スライムに手のひらを向けて深呼吸する。
「すぅ~、ふうー。『スライムをテイム!』」
手の平からスライムに向かって透明の何かが飛んで行き、スライムが
【はい、『テイム魔法』が発動しました。慣れたら、この魔法も無詠唱で発動できます】
――この魔法も無詠唱で……分かった。
スライムの動きが止まったかと思ったらプルルンと震えて、ピョンピョンと飛び跳ねて近寄って来るから身構えてしまう……成功したのよね?
【はい】
スライムが目の前まで来て、水色の丸いゼリーが背伸びするように伸びて、ゆっくり左右に揺れている。
「えっと、君は仲間になってくれたのかな?」
スライムがプルルンと震えて、返事をしたように見えた。
ふふ、ちょっと可愛いかも……私の言葉は分かるのかな?
【アスカの言葉は、ほぼ理解しています】
――それは凄い、賢いのね。
あ、名前を付けるのよね。そのままスラ君とかスーちゃん、水って意味のアクアとか……外国語に青って意味でアスルとかアズがあったかな~。
スライムをじっと見る……色は違うけど、和菓子の
――鑑定Bさん、スライムって性別あるのかな?
【スライムに性別はありません。スライムは
――性別はないのね。
「じゃあ、名前はスラ君……どうかな?」
スライムがまたプルルンと震えた。たぶんYesね。
両手でスラ君を持ち上げると、見た目よりかなり軽い。
スラ君に「これからよろしくね」と言うと、少し伸びて左右に振れている。反応してくれるのが嬉しいな。ふふ。
――鑑定Bさん、スラ君を鑑定出来る?
【はい】
―――――――――――――――――――――――――――――
名前 スラ君 [スライムF・アスカの従魔]
HP 10/10
MP 20/20
・攻撃力F ・防御力E ・精神力E ・敏捷性F
スキル
・水耐性
―――――――――――――――――――――――――――――
あ、名前がスラ君になっている。
……HPが少ないね。
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