第12話 食堂で朝ご飯

 翌朝、ぐっすり眠れたみたいで目覚めが良い。


 ちょっと体が痛いけど……これは筋肉痛なのか、それともベッドが硬いせいなのかどっちだろう。


 自分に『回復魔法』を掛けてみると……凄い! 少し暖かくなって痛みがなくなった。魔法って凄いね~。


 昨日の夜、スラ君が入っていたバケツを見ると、水がなくなっていて……スラ君はバッグの中にいた。スラ君、そこで寝たの?


「スラ君、おはよう」


 スラ君に声を掛けたら背伸びをして左右に揺れている。ふふ、返事をしてくれたのね。


 そうだ、ステータスをチェックしておこう――ステータス・オープン。

―――――――――――――――――――――――――――――

名前 アスカ(明日香)

経験値 16

HP 26/26→27/27

MP 26/26→27/27

攻撃力 F (低い:成人の平均的な能力より低い)

防御力 E (普通:成人の平均的な能力)

精神力 B (上級)

敏捷性 D (高い:成人の平均的な能力より高い)


スキルポイント 7P

【獲得可能スキル】


スキル

・生活魔法

・異世界言語

・テイム魔法A ・風魔法B ・回復魔法B ・鑑定B


【インベントリ(時間停止付き)】

【アイテム購入】(日本と異世界のアイテム・スキルポイントが経験値で買える)


――――――――――――――――――――――――――――

 ん~、HPとMPが1増えて、説明が書いていた(カッコ)が消えた部分があるね。


 ――ビーさん、おはよう。スラ君のステータスを見せてもらえる?


【はい】

―――――――――――――――――――――――――――――

名前 スラ君 [スライムF・アスカの従魔]

HP 10/10→11/11

MP 20/20

・攻撃力F ・防御力E ・精神力E ・敏捷性F

スキル

・水耐性

―――――――――――――――――――――――――――――

 あっ、スラ君もHPが増えている。


 さあ、顔を洗って準備をして、食堂で朝食を食べたらそのまま狩りに行こう。


 ――ビーさん、今、何時かな?


【朝の7時半過ぎになります】


 いつもは、目覚ましがなくても7時には目が覚めるんだけど、今日は少し遅めね。


 ◇

 スラ君が入ったショルダーバッグを掛け、マントのフードを深くがぶって食堂に行くと、冒険者みたいな人たちや身なりの良い客がいる。もしかして貴族かな?


【あれは、他の街から来た商人だと思われます】


 ――商人か。


 女将さんに、朝食はパンに目玉焼きとソーセージだと言われた。十分です。家だと、朝は菓子パンとカフェラテだけだからね。


 ……カフェオーレとどう違うかと思って、調べたことがあるんだけど、フランス語とイタリア語の違いっぽい。作り方が、少し違うみたいな事を書いていたのもあったけど。


「コーヒーか紅茶、どっちにする?」


 へえ~、コーヒーや紅茶もあるんだ。家では牛乳を入れてラテにするんだけど、


「コーヒーで……」


 牛乳が欲しいけど、あっても別料金だと思うから聞かなかった。


 出て来たパンが少し小さな食パンだった。それがお皿に2枚乗っていて、バターが添えてある……バターもあるんだ。


 別のお皿に目玉焼きとソーセージが2本、スープまで出てきた……美味しそう。


 食パンにバターを塗って、ケチャップらしきソースが掛けてある目玉焼きを乗せて2枚目の食パンを被せる……マヨネーズが欲しい。私、目玉焼きにはマヨネーズ派なのよ。


 目玉焼きを挟んだ食パンをナイフで半分に切って、片方に1本ソーセージをはさむ。


「スラ君、朝ご飯よ」


 スラ君が背伸びをして、私から上手に食パンを受け取った。ふふ、可愛いね。


 朝から時間を気にしないで、ゆっくり座って食事するなんて久しぶりかも。休みの日でも、色々やることがあるからね。掃除に洗濯、買い出しとかね。


 今日の予定は狩り。明日も狩りで、たぶん明後日も狩り……今までの生活が一転して、変な感じ。


 ……そうだ、『水魔法C』を覚えるんだった。これは帰ってきてからでいいか。


 食事の後、女将さんに、今日も泊まりたいけど、遅くなるかも知れないから素泊まりでとお願いして前金を払う。


「同じ部屋でいいかい?」


「はい」


 宿を出て西門へ向かう。昨日の草原で狩りをしよう。スライムとキラーラビット以外の魔物がいればいいんだけどね。


 ――ビーさん、朝から冒険者ギルドには行かなくてもいいよね?


【はい。アスカは、冒険者のランクアップに興味がないと言っていましたので、ギルドで依頼を受ける必要はありません】


 ――うん、興味はないかな。


 ◇

 西門に着くと、昨日の警備兵さんたちがいた。言われてないけど、冒険者カードを見せる。


「おはようございます」


「おっ、昨日の……ちゃんと登録したんだな。アスカと言うのか」


「はい……」


 冒険者カードに名前が書いてあるけど、呼ばれるとは思わなかった。


「ああ、ちゃんとスライムのキーホルダーも付けているね」


 若い方の警備兵さんに言われて、胸元の丸いキーホルダーを触る……これがスライムのキーホルダーだと知られているのね。


「はい。冒険者の登録をして、スライムの従魔登録もしました。今から狩りに行って、夕方には戻るつもりです」


「そうか、閉門の時間までには戻って来いよ」


 門を開閉する時間は決まっていて、朝6時に門が開いて、夕方の18時には閉まるから気を付けるように言われた。


 時間外だと、身分証を持っていても別料金を払わないといけないと言う。でも、街に入れてくれるだけ良心的ね。


「従魔がスライムなら、森の方には行かない方がいいよ。ゴブリンが出て来るからね」


「分かりました。ありがとうございます」


 見るからに弱そうに見えるんだろうな。その通りだけど。


 警備兵さんに軽く頭下げ、門から出ると立ち止まって一面の草原を見る。


 ――やっぱり日本じゃ見られない景色よね。って、思っていたらスラ君がバッグから肩まで上って来て、私の頬にスリスリして来た。


 ……えっ、スラ君、こんなことするの? ふふ、早く狩りに行こうって言っているのかな?


【そのようです】


 ――スラ君、やる気なのね。


「さあ、スラ君、狩りを始めるよ!」


 今日の目標は、宿代と食事代で6,000ルギ!





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