第39話 野営
魔道具のコンロ(見た目は、もろカセットコンロだった)でご飯を炊いている間に、枯れ木を集めて小さな焚き火の準備をする。
野営道具が入ったリュックの中には、魔道具のランタンも入っていたけど、これ1個じゃ明かりが少ないと思うのよ。日が暮れると真っ暗になるからね。
しばらくしてご飯が炊けたけど、水が多かったみたいで少しベチャッとしている……。
ん~、新米じゃないと思って水を1.5倍にしたのが失敗ね。次に炊く時は、もう少し水を少なくしよう……炊飯器は偉大ね。
卵をコップに割り入れて『聖魔法』を掛け、醤油を垂らしてスプーンでよく混ぜる。私はしっかり混ざっているのが好きだから、よく混ぜるんだけど……新鮮な卵ほど混ざりにくい気がする。
炊き上がったご飯を(モワ~っと香りがするのよね)、お皿に入れててっぺんにへこみを付け、そのへこみの上から卵を垂らして……やばい、美味しそう。卵を全部掛けたくなるけど、多いのよね。
少し残しても使い道が……あっ、卵を足して卵焼きを作ろうかな。それとも、残りのご飯で玉子の焼きめしを作るのも有りね。うん、後で作ろう。
「いただきます」
スプーンで、てっぺんの卵がたっぷり掛かっているご飯をすくって口に入れる。
「……ベチャッとしているけど、美味しい。雑炊みたいだけどね。ふふ」
お昼に、昆布のおにぎりを食べていなかったら、ご飯が多少柔らかくても気にならなかったかもね。
残りのご飯と卵で焼きめしにしよう。インベントリに入れておけば、作りたての温かい焼きめしが食べられるからね。
でも、狩る魔物の種類が増えて、インベントリに余裕がないのよね……。
〖アスカ、経験値が1,000超えていますよ〗
――えっ、ステータスを見てみよう。
――――――――――――――――――
名前 アスカ
経験値 1,078
HP 53/55
MP 59/83
攻撃力 E
防御力 E
精神力 B
敏捷性 C
スキルポイント 2P → 7P
――――――――――――――――――――――――――――
本当だ……。
いつでもおにぎりが買えるように、経験値を500は残そうって思っていたけど、ご飯を炊けるなら気にしなくてもいいよね。
〖はい、今日だけで300以上の経験値を獲得し、明日も同程度入るでしょうから問題ないと思われます〗
――そんなに? じゃあ、インベントリのマスを買っておこう。
【アイテム購入】をタップしてインベントリのマスを購入。マスが14になったのを確認して、これで残りの経験値は78……明日も頑張ろう。
日が暮れ始めたので、焚き火に火を付けながら卵かけご飯に
スラ君がススーっと近寄って来た。
今日もいっぱい食べたのに、卵かけご飯が欲しいのかな?
〖アスカが美味しそうに食べているから気になるのでしょう〗
――そっか、スラ君にも少し味見してもらおう。
さっき水を入れたスープ皿に卵かけご飯を少し入れて、お皿は食べないでねと言ってスラ君に渡すと、受け取ったスラ君はお皿ごと体内に入れて中のご飯だけを食べている……器用ね。
レオンも気になったのか、近寄って来てスンスンと卵かけご飯の匂いを嗅いだけど、自分の鼻の頭を
――暗くなって来たからランタンの灯もともそうか。
空を見上げたら月があって、星がキラキラと綺麗ね……こっちの世界に来て初めて夜空を見上げたな。
卵かけご飯を食べ終えて、残ったご飯と卵で焼きめしを作っていたら、どこからか声が聞こえた。
『キキー!』
――魔物?
〖アスカ、あれはバットの鳴き声で、夜にしか出てこない飛ぶ魔物です〗
……バットって、
〖そうです。少しだけ『風魔法』の耐性を持っていますが、アスカの『風魔法D』で狩ることが出来ます。他の属性魔法でしたら『E』1~2発で倒せます〗
――そんなに強くないのね。
〖はい。バッドの魔核は100ルギで、羽も100ルギで買い取ってくれます〗
……買取り価格が安いのね。ギルドで解体してもらったら赤字になるから、スキルポイントの為に1体だけ狩ろう。
手早く、使った鍋やお皿に『ウオッシュ』を掛けて後片付けをし、ランタンを手に持つ。
『キキー!』
又、聞こえた。
結界の壁近くまで行って、声が聞こえた方をじっと見ると、木々の間を縫うように黒い
スラ君が肩まで登って来て首を伸ばす。
飛び方は……夕暮れに、たまに見かけるコウモリみたいに行ったり来たりしているんだけど、カラスくらい大きい。でも、動きは早くないね。
「あそこを飛んでいるバットを狩ってくるね。エレナとレオンはゆっくりしていてね」
『ガルル……』
『ミャ~』
横になっていたエレナが立ち上がってこっちに来る。レオンまで……私って弱いと思われているのかな? 弱いけど……。
〖主のアスカを守ろうとするのは従魔の本能です。アスカが弱い・強いは関係ありません〗
――そっか、それは嬉しいね。
「みんな、ありがとね」
結界から出て声のする方へ行くと、バサバサと羽音が聞こえる――直ぐにバットが姿を見せて、私が手を向ける前に、スラ君が私の肩に乗ったまま『水魔法』を命中させた。
ドサッ……
えっ、もう終わったの?
〖バットは弱い魔物ですから、スラ君には余裕です〗
――そっか。
「スラ君、ありがとうね。スラ君、バットの魔核を取り出して欲しいの。後は食べても食べなくても良いよ」
スラ君は、私の頬にスリスリしてから飛び降りて、バッドに向かった。
レオンも走って行って、バットの羽の匂いを嗅いで戻って来た。あ~、美味しそうな匂いじゃないのね。ふふ。
バットの体を包み込んだスラ君に近寄ると、魔核を取り出して渡してくれた。
「スラ君、ありがとう」
魔核を受け取ってポーチに入れる。
スラ君がバットの吸収を始めたけど1分も掛からない……最近、スラ君の食べる時間が早くなったね。
〖このバットが、スラ君より格下だったので、吸収するのに時間が掛からなかったのでしょう〗
――へえ~、そういうのも関係するのね。
結界に戻ったら、みんなに『ウオッシュ』と『回復魔法』を掛けて寝ようかな。
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