第34話 次に覚えるスキルは

 インベントリのマスを買い足した後、ビーさんにどのスキルを先に『A』にしたらいいか相談したら、『風魔法』か『鑑定』だと言う。


【ですが、ワイルドキャットのエレナという戦力が増えたので、狩り場を一気にベアより強い魔物がいるエリアにしない限り、『風魔法』は今のままの『B』で問題ありません。そうなると、『鑑定』を先に『A』にすることお勧めします】


 ――ビーさんをレベルアップしたらどう変わるの?


【スキル『鑑定』が『A』になると、質問された事以外に――その時に必要だと思われることを、こちらから伝えることが出来るようになります】


 ――ビーさんから話し掛けられるってこと?


【はい。それ以外にもマップを使えるようになり、近くにいる魔物の位置が分かるようになります】


 ――魔物の位置が分かるのは便利そうね。それは魔法なの?


【魔法ではありません。感知と探索機能を組み合わせた機能で、視界のすみにマップを表示できます。マップを表示しなくても、私が危険を察知さっちしたら知らせることが出来るようになります。アスカの言うの<渡り人>は全員『鑑定A』を持っていました】


 ――えっ、私が絶対に覚えた方が良いスキルって聞こえたんだけど。


 ……、


 ……ビーさんからの返事がない。あっ、質問じゃないから……こういう時ビーさんが『鑑定A』になったら返事が来るのね?


【そうです。普通に会話出来るようになります】


 ――それは嬉しいかも……じゃあ、次に覚えるのは『鑑定A』にしよう。


 でも、『鑑定A』を覚えるにはスキルポイントが16Pいるから、あと2P貯めないとね。



 ◇◇

 翌朝、起きてすぐスラ君たちのステータスを見た。

―――――――――――――――――――――――――――

名前 スラ君 [スライムD→C・アスカの従魔]

HP 44/44 → 45/45

MP 63/63 → 65/65

・攻撃力C ・防御力C ・精神力C→B ・敏捷性D→C

スキル

・水耐性 ・水魔法 ・突進 ・毒耐性


―――――――――――――――――――――――――――

 やった! スラ君のレベルが『C』に上がっている! 精神と敏捷も上がって……。


「スラ君、おめでとう! レベルが上がっているよ!」


 スラ君が私の声に反応して、バケツの中から背伸びをしてこっちを見ている。


「あっ、レベルって言っても分からないか……えっと、スラ君が強くなっているのよ」


 スラ君がプルルン! と返事をして左右に動く。


 もしかしたら、自分が強くなったって分かっているのかもね。ふふ。

―――――――――――――――――――――――――――

名前 エレナ [ワイルドキャット(雌)C・アスカの従魔]

HP 208/208 → 211/211

MP  21/21   →  23/23

・攻撃力C ・防御力C→B ・精神力B ・敏捷性B

スキル

・跳躍 ・風魔法

―――――――――――――――――――――――――――

名前 レオン [ワイルドキャット(幼体・雄)F・アスカの従魔]

HP 10/10 → 11/11

MP  5/5

・攻撃力F→E ・防御力F ・精神力E ・敏捷性F

スキル

・跳躍  ・風魔法

―――――――――――――――――――――――――――

 エレナとレオンのステータスも上がっている。ベアを食べてもらって正解ね。ふふ、今日も頑張ろう~!


 部屋で朝食を食べて、装備に着替えてショルダーバッグを掛ける。マントを付けてフードを深めに被り――スラ君を肩に乗せて準備完了!


「みんな、森へ狩りに行くよ」


 プルルン! 『ガルルル』『ミャ~!』


 スラ君が肩で返事をしてくれて、エレナとレオンも返事をしてくれる。ふふ、それだけで嬉しくて……いややされているんだろうな。


 1階でローザさんに、今日は2食付きにすると言って宿泊代6,000ルギ払って宿を出た。


 数日分の宿代を先払いしてもいいんだけど、貧乏性なんだろうな……もう少しお金を貯めてからって思ってしまうのよ。


 ◇

 街を歩くと、エレナとレオンを見る視線を感じる……。


 エレナは視線なんて気にしていないみたいで、歩く姿はりんとしているって言うのか、堂々としていて優雅ね。


 レオンはキョロキョロしているけど……たぶん、自分を見る視線には気付いてないと思う。ふふ。


 まぁ、そのうち慣れるでしょう……私と、街の人たちも。




 西門に来ると、ニールさんがいた。


「ニールさん、おはようございます」


「アスカ、おはよう。オリバーさんが話していた通りだね。本当にワイルドキャットをテイムしている……」


 ニールさんは、昨日オリバーさんから聞いたんだって。


 何でも、強い魔物の従魔が街に入った時は、トラブルを避ける為に報告書を上げて、街中にある各警備兵の詰め所に知らせる決まりになっているそう。


「スライムでは報告書を上げないけど、フォレストウルフ以上の魔物は報告書を回すんだ。昨日も警備兵の詰所に、魔物が街にいるって走り込んで来た人がいたらしいよ。フフ」


 あぁ、ギルドで登録するまで、従魔の首輪を付けて無かったからね。


「そうですか……お手数をお掛けしました」


「フフ、西門から報告書が回って来ていたから問題なかったらしいよ。アスカ、明日には街中にワイルドキャットの従魔がいるって知られると思うよ。みんな、うわさ話が好きだからね」


「えっ、ハハ……そうですね」


 噂話が好きなのは、どの国でも同じかもね。


 ◇

 西門を出るとレオンが走り出した。エレナはレオンの様子を見ながら私の斜め前を歩くけど、何かを見つけたみたいで走って行く。


 しばらくすると、エレナがラットを咥えて戻って来て、スラ君がラットの魔核を取り出して渡してくれる。


「エレナ、ありがとう。スラ君も、魔核を取り出してくれてありがとうね」


 ラットはインベントリに予備があるから、エレナとスラ君に食べてもらう。


 レオンが戻って来たと思ったら私の前まで来て、ぽろっと何かを落とした。


 よく見ると、ビー玉みたいな小さな青い石で……あぁ、これはスライムの魔核ね。昨日、スラ君を見ていたからか……。


『ミャー!』


 レオンが魔核の前で座って、耳をピンと立てて私を見るから、『凄いでしょ。褒めて!』って声が聞こえてくる。ふふふ。


「レオン、スライムの魔核を取って来てくれたの? 凄いね!」


 べちょべちょの魔核を拾って、『ウオッシュ』を掛けてポーチに入れる。


 「ありがとう」と言いながらレオンの頭を撫でると、『ゴロゴロ……』と喉を鳴らしているけど視線がどこかへ……あぁ、スラ君とエレナが食べているラットを見ているのね。


「ふふ、レオンも食べていいよ」


『ミャ~!』


 レオンを下ろすと、ラット目掛けて走って行く。


 レオンがラットに齧りつくと、エレナが食べるのを止めて自分の口の周りを舐めている。レオンに残したのか、ラットが美味しくないのかどっちだろう?


【全ての魔物ではありませんが、強い魔物ほど美味しいと言われています】


 ――じゃあ、美味しくないのかもね。レオンが残しても、スラ君が食べてくれるから大丈夫だけど……インベントリに入れてある餌用のラットも他の魔物にしようかな。


 草原を森に向かって歩くけど、キラーラビットやラットが襲ってこない。スライムも見かけないのよね……エレナがいるからかな?


【魔物は、自分より強い魔物の魔力を感じると逃げます。ワイルドキャットは獲物を狩る時、気配や魔力をおさえる習性がありエレナも押さえていますが、弱い魔物がエレナの姿を見たら逃げるでしょう】


 ――そっか、エレナが魔物を見つけて狩って来てくれるからいいけど、私がちょっと暇ね。


 レオンがまたスライムの魔核を持って来たみたいで、魔核を私の前に置くと『ミャー!(褒めて!)』と頭をぶつけてくる。何これ……可愛いから、両手でワシャワシャしてあげるわよ!


 2時間ほどで森に付いた。


 ――ビーさん、お昼の12時になったら教えて欲しいんだけど、お願い出来るかな?


【出来ます】


 ――じゃあ、ビーさん、お願いね。合図が来るまで、少し森の奥まで進んで狩りをしよう。




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