第26話 市場へ
宿に戻って、ローザさんに明日は狩りを休むと言ったら、中央の公園近くに人気のケーキ屋があると教えてくれた。
「1階でケーキを売っていて、2階がカフェになっているんだよ」
カフェなんて言葉があるんだ……日本と同じ意味で使われているのかな?
【はい、そうです。カフェは<渡り人>が持ち込んだ言葉で、軽い飲食が出来る店のことを言います】
――先輩たちは色々と持ち込んでいるのね。助かります。ふふ。
「そう言えば、この街の教会にはもう行ったかい? アスカはソロだから無理はしないだろうけど、冒険者をしているなら教会の場所を知っておいた方がいいよ。
ビーさんから、教会で怪我を治療してくれるって聞いたけど、病気も治してくれるのね。
「スタンピードの時、治療の終わった人を教会に連れて行ったので、場所は知っているんですけど、中には入っていないんです」
教会の入り口で、シスターが冒険者を引き取ってくれたから、中には入ってないのよね。
「そうかい。ここの教会には司祭様が2人いてね、その内の1人は骨折が治せるんだよ。普通は、大きな街にしかいないんだよ」
……フラン司祭様のことね。
「魔物に手足を食われたら治せないけど、あー、そう言えば、今の王都には
「欠損を? 凄い……ですね」
うわぁ、ファンタジーの世界ね! ビーさん、司教様って司祭様より上の役職かな?
【はい、そうです。教会内での階級は、見習い司祭→司祭→司教→大司教→教皇になり、司教以上の階級になるには『聖魔法D』以上が必要だと言われています】
――『D』ってハードルが低いと思ったけど、ビーさん、これも『回復魔法』と同じで『聖魔法C』のスキルを持つ人が少ないのね?
【その通りです。『聖魔法C』のスキルを持つ人は、『回復魔法C』を持つ人より少ないです】
やっぱり。と思ったらビーさんの説明が続く。
【因みに、『聖魔法C』から切断された指や手を元通りに治療できます。ですが、完全に失った欠損の再生は、個人差もありますが握り
――それでも凄いよ! えっ……『聖魔法C』って私も覚えているんだけど!?
【はい、アスカも多少の欠損なら治せます】
……『ウオッシュ』に消毒効果を付けたくて『聖魔法C』を覚えただけなのに。
「ああ、そうだアスカ、街の北西側へ行くのは止めときな」
街の北西、十時に交差する大通りの向こうの地区には、男性が遊びに行く
「そこじゃなくても、路地裏にある細い道に入ると、変な奴がいたりするからね。アスカ、変なのが近寄って来たらやっちまいな! 遠慮するんじゃないよ!」
ローザさんは、元冒険者だけあって少し攻撃的ね。
「はい……分かりました」
ローザさんとの話の後、部屋に戻って多めに買ってきた串焼きをスラ君と食べた。
◇◇
翌朝、ビーさんにスラ君のステータスを見てもらったら、スラ君のレベルが上がっていた。
―――――――――――――――――――――――――――――
名前 スラ君 [スライムE→D・アスカの従魔]
HP 32/32→33/33
MP 45/45→46/46
・攻撃力E→D ・防御力D→C ・精神力D→C ・敏捷性E→D
スキル
・水耐性 ・水魔法 ・突進
―――――――――――――――――――――――――――――
凄い……全部上がっている。キラーアントを食べてもらって正解ね! ふふ。
私はHPとMPが少し上がっていた。うん、+1だけね……。
スラ君と朝食を食べてフードを深く被る。まだまだ髪は短いからね。
◇
1階でローザさんに宿代6,000ルギを払って、今日は2食付きにした。昨日の稼ぎが良かったからね。ふふ。
夜、家に帰って温かい料理が出て来るって幸せよね~。
日本で働いていた時、仕事で疲れてお弁当を買うこともあったけど、いつも同じのしか買わないから飽きて来るのよね。今も似た感じかな。
彼がいた頃は、頑張って料理を作っていたけど、一人になって簡単なのしか作らなくなった。
休みの日、たま~に頑張って料理を作って、ランチに行った気分で安いワインを開けて飲むこともあったけどね。ふふ。
この世界の食べ物は普通に美味しいけど、洋食ばかりで和食が食べられないのが残念だと思ってしまう。やっぱり日本人なのよね~。
先ずは市場に行って、どんなものが売っているかじっくり見よう。
初めて行くスーパーを見て回るのは楽しいのよ。店によって置いている物が違うから、ついアレコレ買ってしまうけどね。ふふ。
◇
市場に着いて、気になったのは卵だけど……卵かけご飯は出来ないよね。日本みたいに卵の殻を洗浄して殺菌……あっ! もしかして、卵に『聖魔法C』を掛けたら生でも食べられるかな?
【はい、食べられます。普通の卵でしたら『聖魔法D』で十分です】
――やった! 『聖魔法』を覚えて良かった~。卵と醤油を買ったら、インベントリのおにぎりで卵かけご飯が食べられるじゃない! 私、卵が好きなのよね~。ふふ。
おにぎりじゃなくても、あっちのお店でお米を売っているのを見たから、お米と小さな鍋を買えばご飯は炊ける。
――「宿の調理場を貸して欲しい」なんて
う~ん、米と卵と醤油を買いたいけど、インベントリの空きに余裕がないのよね……もう1つトートバッグを買ってまとめて入れようか。ついでに他の調味料も――塩と砂糖は絶対にいる。
こうやって食材を見るのは楽しくて、気分転換に持ってこいね。あれこれ買ってしまったけど、後は頑張ってインベントリのマスを増やさないとね。
あ、干し肉が売っている。ボア(猪)とホーン(鹿)の干し肉で、袋に入ってい量が違うみたいで、どちらも1袋大銅貨1枚……約1,000円か。
異世界物の話で有名な携帯食だから味見してみたいけど、ジャーキーは苦手なのよ……自分で料理をするようになったら、
あっ、日本で売っているのと同じ果物がある。アップール・オーレンジ・レモーン・バナーナ・キューイ……うん、ほぼ同じ。先輩たちが名前を付けていたりして。ふふふ。
で、残念なことにやっぱりマヨネーズはなかった。
目玉焼きに掛けて食べたいのに……何度も言うけど、先輩たちは何をしていたんですか。まあ、米や醤油、味噌があるのは有り難いけどね。
マヨネーズ、作り方は知っているけど作るのは面倒なのよ。気が向いたら……作るかもね。
スラ君、肩の上で大人しいね。
次は教会に行ってみよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます