【鳴き声】

夢月みつき

本文【その鳴き声は】


 俺は、しがないアマチュア作家だ。アマチュア作家と言うのは、趣味で小説等の創作をしている物書きの事。投稿サイトで小説を投稿している。



 俺は、その日、スマホで新作小説のアイデアを打っていた。

 すると、どこからか鳴き声が聴こえて来たんだ。

「なんの鳴き声だ、これ」



 俺は最初、外で猫か何かが、鳴いているのかと思っていた。

 最初はかすかに聴こえるだけだった。

 しかし、それは段々とはっきりと俺の耳に聴こえるように響いて来た。


 シクシク……なんて酷い。なんて酷い。シクシク……



 聴こえて来たのは、動物ではなく、人の泣き声だった。

「えっ!?」

 思わず、驚いて飛び起きる。



 辺りを見回してみるが、俺一人のアパートの一室で、人らしきものは誰もいない。

 隣の部屋から聴こえてきているのかとも思った。

 しかし、声が聴こえるのは隣ではないらしい。



 良く耳をすましてみる。すると、声は俺のパソコンから聴こえて来るみたいだ。

 パソコンの電源は切ってある。動画などの音声が聴こえて来るはずもなかった。

 俺は背筋がゾッとしたが、思い切ってパソコンを開け、立ち上げて見た。



 小説のデータを、保存してあるフォルダから、泣き声がしている。

 恐る恐る、フォルダを開いて見ると。



 俺が今まで書いて、連載が止まったままの登場人物が飛び出して来て……

 俺に話しかけて来た。



『やっと、気づいてくれたな。寂しくて、仕方がなかったんだよ。お前が書いてくれないと、俺達は動くことも出来ないんだ』


「ご、ごめん。トモユキ」



 俺は驚きながらも思わず、キャラの名を呼んで謝る。



『うん、お前が忙しいのは分かるけど。せめて、俺達のことを忘れないでくれよな!』



 トモユキは微笑むと、フォルダの中へと戻って行った。




 どうやら、俺は小説を書きながら、うたた寝をしてしまったらしい。

 俺が画面を見て見ると、新作小説の画面だった。



「ここの所、仕事と新作にかまけて、トモユキが主人公の話を少し、忘れていたな」



 俺は、ひとまず、新作の画面を閉じ、トモユキが、主人公の小説“俺と怪異とロマンス”が入っているフォルダを開いた。



 -END-


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 最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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