第9話 イベント後と、これから

:◆千咲都の部屋


:◆SE 千咲都がベッドでごろごろする音



「にゅふふ、ふふ……」


「んふふふ……」


「デュフ……」


「え? 何が?」


「いや笑い方がキモいってキミね、こんな笑い方にもなっちゃうでしょ」


「ほらほら、見てよ。この前キミと一緒にマコスタ参加した時の写真!」


「め~っちゃくちゃカッコよくない?」


「こんなカッコいいあたしを見ちゃったら、キモ笑いだってするよ」



:◆SE リスナーに近づく足音


:◆声 囁き・開始



「でも、こんないいコスができたのもキミのおかげなんだから」


「キミが付き合ってくれて、テン・ヨウくんの解像度高めてくれたおかげだよ?」


「ありがとうね」



:◆声 囁き・停止


:◆声 イケボモードの千咲都・開始



「それとも、ぼくの声で言われた方がいいですか?」


「ありがとうございます、坊ちゃま」


「ぼくは、あの日ほどあなたに感謝したことはありませんよ」


「これからもずっと、坊ちゃまのおそばで仕えさせていただきますね?」



:◆声 イケボモードの千咲都・停止



「あっ、やっぱりこっちの声だとなんか嬉しそうだよね?」


「お顔から緊張感が消えちゃうんだもん」


「そんなに普段のあたしの声、グッと来ないかな~?」


「えっ?」


「……」


「そ、そーやって正面から言われると照れるかも……」


「な、なんなの~。今までそうやって褒めたことなかったくせに!」


「……ええっ? あたしなのにあたしっぽくない声に慣れてきたから、今度はあたしの声の方をよく思えるようになった!?」


「もう! そうやってあっち行ったりこっち行ったりフラフラするのは、浮気性なんだよ!」


「……でも、どっちもあたしだからいいのか」


「ていうことは、いつもの声のあたしと、テン・ヨウくんのイケボのあたしの両方好きってこと?」


「キミ、あたしの声好きすぎないかな~?」


「そんなに好きなら~。しょうがないよね」


「ほら、お膝に頭乗せていいよ? 今日は特別に、いつものあたしの声で囁いてあげる」



:◆SE 衣擦れの音


:◆声 囁き・開始



「……こんなにお耳に近いなら、聞こえるのはどうせキミだけだし」


「せっかくだから、他の人に聞かれたら恥ずかしいこと言ってあげるね」


「恥ずかしいこと言うだけで、あたしの本当の気持ちがああだこうだとかじゃないよ?」


「そういうの、ちゃんと理解して聴いてね」


「今回は、助けてくれてありがとね」


「なんだかんだで親切なキミのこと、大好きだよ」


「昔から何かと縁があって、高校まで同じ学校で同じクラスだけど」


「キミがいてくれて、よかったと思ってるんだから」


「一番頼りにしてるのは、キミだからね?」


「ふふ、あたしはテン・ヨウくんとして、坊ちゃまなキミをお守りしてたけど」


「本当はあたしの方こそ、坊ちゃまだったのかもね」


「今日まで色々振り回しちゃったけど」


「あたしのわがままに最後まで付き合ってくれるキミのことが、だいーすきだよ?」


「付き合ってくれなくても、大好き」


「だって、キミはいつも大事なところで手を差し伸べてくれるから」


「優しさに甘えちゃって、ごめんね」



:◆声 囁き・停止



「――なんて! びっくりした?」


「せっかくだし、キミをドキドキさせてあげようと思ったんだ。わざと恥ずかしくなるようなことを言っちゃおうゲームだから!」


「うふふ、その顔みると、ドッキリは成功だったみたいだね!」


「え? あたし?」


「あたしは別に普通だよ~! 顔だって赤くなんかないんだから」


「触ってみたって、ほら」


「熱っ! なんじゃあこりゃあ!」


「ち、違うの! これは慣れないことして恥ずかしかっただけ!」


「キミだって、そんな寂しそうな顔して! あたしの膝枕が名残惜しいんでしょ?」


「……」


「……そう素直に言われちゃうとなぁ。変なところで素直にならなくていいんだよ」


「……どうしてもって言うなら、やってあげなくもないけど」


「実は近いうちに、別のコスイベがあるんだ」


「それに出るためのコスに協力してくれたら、してあげる」


「キミとこうして、一緒にイベント参加するための準備するの楽しかったし」


「ふふっ。いつもと違うあたしであわあわしちゃうキミを見るの楽しかったし?」


「次はさ、もっともーっと凄いコスプレしようよ!」


「もちろん、イベントにはキミも参加ね」


「うんうん、いいよ。もうキミはあたしの保護者枠で」


「それと、できればでいいんだけど」


「次はキミが、ちゃんとカメラマンさんになってくれたら嬉しいな」


「あたし、キミに撮られたくて」


「会場のカメラマンさんが撮ってくれた写真も好きだけど、なんかね、キミがスマホで撮ってくれた写真の方がお気に入りなんだ」


「可愛いあたしに撮れてるなって気がして」


「キミに撮られるのが、好きだからなんだね。きっと」


「これは冗談でも、わざと恥ずかしいこと言っちゃおうゲームでもなんでもないよ?」


「……ていうか、実はさっきのもね」※小声


「ううん、なんでもないよ!」


「だから、これからもよろしくね!」

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声が可愛いコスプレ好き幼馴染が、執事コスにハマってイケボで俺を惑わせてくる。 佐波彗 @sanamisui

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