文字で綴る音楽 あるいは創作者の孤独
- ★★★ Excellent!!!
一見とっつきにくさを感じさせる文章。しかしそれは書き手の豊かな語彙と主人公のキャラクター性を表現、むしろ証明するワイヤーです。
思うに「音楽の表現」、特にバンドサウンドの表現というのは圧倒的に文章と相性が悪いものではないでしょうか。
それを、こうもやってのけるか、と感動しました。
音楽が時間に対して駆け抜けていくものであるのに対し、テクストは読み・再現し・理解しと時間を掛けて芽吹いていく性質をもっていると思っています。相性が悪いというのはこの点においてです。
しかし本作は冒頭から読み手を渦の中に巻き込むような文章を展開することで、テクスト全体が音楽であるかのような疾走感を作り出しました。
テクストであるのに、この文章はサウンドです。