それはカラッと揚がったエビバトル
星見守灯也
海老天vsエビフライ
ここに世界の行末が決まろうとしていた。
勇者と魔王、その決戦が始まったのだ。
「魔王、聖女を返すんだ!」
「ふふ、聖女には究極のエビテンを作ってもらわねばならん……」
魔王は手を広げ、背後に巨大な渦を生み出した。
「いくぞ、勇者。エビテンズゲートを開く!」
現れたのは光り輝くいく本ものエビテン。衣は薄く、見るからに身が大きい。
「なめるな、魔王。エビテンとは厚い衣を楽しむものだ!」
「おまえは半分以上が衣のエビテンに涙したことはないのか?」
「あるとも。しかし、だからこそ衣をも楽しもうと決めたのだ!」
勇者は魔王を睨みつける。その手にはまっすぐなエビフライが二本、握られていた。
「魔王よ、油の貯蔵は十分か!? このエビフライソード受けてみろ!」
「エビフライなぞ所詮は西洋かぶれの食べ物よ」
「卵とパン粉がいかにエビを強化するか知らないのだな?」
勇者は隣の魔法使いに指示を出す。
「援護してくれ!」
「もちろん! ソースドバドバ!」
勇者のエビフライに濃厚なソースがまとわりつく。
それを見た魔王はバカにするように笑った。
「ふん、シンプルにシオこそ至高よ」
「は、笑わせる。テンツユはどうした? シチミは?」
「タマニハタルタル!」
もう一方のエビフライにはタルタルソースがかかる。
「タルタルソースとの二刀流だろうがエビテンには勝てん!」
魔王は蓋つきのドンブリを取り出した。
「こちらはアツアツのエビテンをエビテンドンにする! 蓋をしてすこし蒸らすぞ!」
「なに!?」
「ゴハンと一体化したジェットストリームアタックをくらえ!」
蓋をあけたとたん、匂い立つ蒸気が漂ってきた。
「確かに、エビフライはしっとりとすると食感が損なわれる……!」
「ここまでだな、勇者」
「……俺は力不足かもしれない。だが!」
勇者は旗のついたチキンライスを出した。小さなハンバーグ、ナポリタン、そしてオレンジ。
そこに大きなエビフライを乗せて、魔王に見せつける。
「お子様ランチといえばエビフライだろう!? みろ! ワクワクしてこないか!?」
魔王は思わず唾を飲み込んだ。
「ふ、やるな。おまえもサクサクだ……」
「ああ、もちろん、プリプリのエビだとも……」
男の友情が結ばれようとしたそのとき――。
「私を無視してカラッとあがりやがって! エビノカラゴトカラアゲに勝るものなし!」
聖女が叫んだ。なので今日の夜ご飯はエビのカラアゲです。
それはカラッと揚がったエビバトル 星見守灯也 @hoshimi_motoya
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