11話「あの夢に見たモノ」-2


 「これもトラップだ。この部屋を見つけられた事はラッキーだが、逃げられないようにしているって事だろうし。そうなると、もしかして後ろから……ほらな……」


 後ろを振り向く。ちょっとこの光景を見ると普通なら恐怖を感じてしまうだろう。

 部屋の入り口からぞろぞろとゴブリンどもが入ってきた。次々と部屋にゴブリンが増えていく。

 まあ一定時間が過ぎるとあの坂道からゴブリンが入ってくるって事だろう。考えはつく。あの部屋で相手をした方が対処は楽だったのだが、致し方ない。ちょっとめんどくさいがここで対処しよう。

 でも逆に嬉しい気持ちもあった。早速この剣を使えるからだ。


「残酷だが試し切りをさせてもらいます」


 そう言葉にし、手に入れた剣だけを持ちゴブリンに向かい駆け出す。


「ごおぅあぁぁぁぁ」


 吠えるゴブリン。


 多いといえば多いがまだ部屋に居るゴブリンは10体にも満たない。素早く片付ける。まずは1体目。


「はあぁぁぁぁぁぁ」


 気合いと同時に横薙ぎ。その斬撃は凄かった。いつも通り振った一撃だったのだが、綺麗にゴブリンを真っ二つにしてしまった。そのまま光の粒になるゴブリン。切れ味が凄過ぎる。


「やばい、これは凄え。武器の力ってここまでなのか!」


 とにかく凄いとしか表せないほど驚いている。もしかして、ミスリルなんじゃないのか? そう思う程の切れ味に感じる。


 笑顔になる。これなら効率も良くレベルアップにも最適だ。本当に良い剣を手に入れてしまった。


「まずはこれを片付けよう」


 そう思い他のゴブリンに向かう。



 一体一体迅速に倒していく。数が多い場合速さが勝負の鍵となる。この剣とゴブリン相手ならそれが十分通用する。

 ゴブリンに対する慣れと剣の性能による攻撃はそこまで大きな動きをする事なく倒すことが徐々に出来始める。光の粒となって消える事は死体を増やすこともない。邪魔もなく次々と倒していける。この剣を手に入れる前と後では目に見える程その差が分かる。


 ここまでくると単純作業にならないよう工夫をしながら戦う余裕もできてきた。体力も節約できる動きをする。息は上がっているが動く事はできる。

 目に見えて数が減っているゴブリン。等々目の前にはあの大きめのゴブリン1体しか見当たらない。


「こいつでラストだよな!」


 最後一撃を当てる。

 が、それはゴブリンが持っている棍棒に防がれる。少し強いようだ。でも今なら余裕だ。一旦離れ、後ろに回り込むように動く。そう簡単には後ろを取らせてはくれないだろう。

 これはフェイントだ。回り込むフリをして途中で方向転換。そこで横薙ぎをする。

 ゴブリンは目に追えなかったのか綺麗に決まる。そのままゴブリンは光の粒になった。それと同時に後ろから地響きのような音がした。

 格子が外れた音だろうか。


「もうほとんどゲームみたいだよな。まあこれも慣れたわ」


 出口に向かったところやはり格子は無くなっていた。予想通りだったことに驚きもない。

 置いていた元の剣を拾いそのまま出口を出る。入り口が坂道だったからだろう、出口は階段になっていた。


「何もいない。あいつら全部あの部屋に入ったのか?」


 階段を上がりきって様子を見る。しかし、何もいないようだ。ゴブリン達を全て倒してしまったのだろうか。


「うーん。探すのも面倒だし、一旦降りてから戻るか。リセットされるだろうし」


 そう考え奥に進む事にする。この階層はもう7割は進んでるだろう。あの隠し部屋で割と進んだ気がする。


 階段に向かうまでに案の定ゴブリンはいなかった。少し休憩する。

 水を飲み、非常食を食べる。元々ポーチに入っていたものだ。流石にこの運動量ならお腹も減る。もしも長いことダンジョンにいるのならこれだけでは足りないな。どうするのだろうか。

 ちなみにポーション等はまだ使っていない。そこまで大きなダメージを受けていないのもあるが、数が少ない。1本ずつしかないからだ。もしもの時に残している。


「さて、休憩も出来たしもう1回ゴブリンどもでレベルを上げましょうか。今がレベル4だからこれでレベル5になるだろうし、5階層もいい感じでクリアできそうだよな。多分中ボスみたいなんだろうけど」


 立ち上がり階段を降り始める。


「あ、でも1回ボスの顔を拝んできてもいいかも? 対策練れるし」


 この先にいるのが中ボスと断定して階段を降りる。やばかったらすぐに戻ればいいだけだろうし。

 そう考えながら階段を降りきる。さっきまでの階段と違いちょっと長かったかもするが。


「……うー。やっぱりすぐ戻るか」


 ボスの顔を拝もうと思っていたのだが、なぜか少し不安感が後を引き、そのまま進むことを諦める。そのまま4階層に戻ろうと階段を向くが、


「……っ、はぁ? なんで?」


 戻ろうと思ったはずの階段が音もなく消えていた。


「え? どういうこと? 確かにここから降りてき……」


 瞬間、背筋に悪寒が走った。言葉が詰まる。後ろから今まで感じなかった威圧が押し寄せる。

 体は動く。冷や汗が止まらないが。恐る恐る後ろを振り向く。


「ゴアァァァァ」


 低く力強く唸る声。ゴブリンとは違う威圧の音。初見では確実にビビるだろう。ゲームや漫画で良く見るモンスター。鬼の名を持つモンスター、オーガ。


 そいつが部屋の中心に、そこに立っていた。






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現代にダンジョンができたら潜りますか? ~私は今の仕事にしています~ 黄緑のしゃもじ @kimidorinosyamoji

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