鏡面
椿生宗大
暗闇
どこかへ行こう…
目的地なんてはっきりしたものが設定できるなら私はこうはなっていない
万能人になりたい…
それが欲しいと一心になれるなら私はこうなっていない
ぼんやり、曖昧なまま流されるような生き方を繰り返す毎日で貴重な若さを浪費した私は無能になり行くのだ。
あの人の美しさ-屈託のない笑顔が映える下地-には汚れを知らない無邪気さ、或いは清濁併せ呑む寛大さが隠れている。さて私はどうだ。受け入れ難いもの-無能故に手放した発言権-を振りかざす人間を遮断し、真っ直ぐなある種の強さを持つ彼らを嘲笑し外野に逃れて、外野から文句を垂れる。中途半端なこの姿が、中流意識に染まったしょうもない日本人Bの生き様であるか。私は甘ったれた、鈍色の人生が耐え難い。
好き勝手やるための自信を地位や評価を得て勝ち取りたい。他人より優位に立つことでしか勝手な気持ちで居られないのだから、中途半端な選民思想で生きられるような実力を備えなければいけない。見下すためではないにせよ、結果的に見下せる位置に立つことでのみ、私には心の余裕が生まれるのだ。私のこの考えもきっと陳腐なもので、普通に生きていたら誰もが通る、青い思想で、これを捨てて自分の世界を確立することが大人の階段を登る人の姿なのだろう。私は子供なのだ。今までもそうだった、これからも恐らく変えられない。全ての原動力に自分に抱く劣等感があるからには、人との相対的立ち位置によってのみ余裕を描くしか術がないのである。
私はどうしてこんな悲しい生き物になってしまったんだろう。どうして父のように背中で語れず、母のような逞しさも身につけず、今となっては無為な人生を歩んできたんだろう。周りを見る。比較対象で溢れて居る。彼等の目には自分がいないのだ。それは眼中に無いということと読み取って差し支えない筈だ。私は負けたのだ。彼等に無意識下で勝敗を判定されてしまった。一方的な、自分勝手な妄執によって私は負け続ける。肥っていく劣等感が溢れ出す頃には私はもうそこには居られない。受け止めきれない負の感情で隣の部屋にでも実体が移っているのだろう。
東京の街は無駄に大きい。無駄な街角で斜めに伸びた陰に飛びついて覆われるとき安堵を覚えた自分に恐怖してしまった。私は陽の当たらないところを求めていたのだ。現実と乖離した理想は高層マンションのようである。大言壮語の裏側を人は覗こうとしない。未来を表に出せる人間には良い人が多いからなのだろう。私はそれを猿真似して虚無な可能性をいつまでも語る道化師である。
乾いた空気が迫ってくるよ
冬の音を運んで来る
足が竦む体の良い言い訳に
身を埋めて暮らす日々に
甘ったれて
僕はゴミ人間になったんだ
鏡を見るとそこには
汚く進化する年老いた青年の顔
この変化を楽しめるイケおじには
終には嫉妬心も塞ぎ込む
閉じ籠って腐敗して変わる臭い
私に不快な臭いを加える
無邪気だった過去を遡らせないよう
神は現実逃避をさせぬよう
この臭気によって私を更生させようと指図しているのだろうよ
鏡面 椿生宗大 @sotaAKITA1014
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