午前六時半に私は「オイルサーディン丼」を作った

隅田 天美

午前六時半に私は「オイルサーディン丼」を作った

 私の通っているジムの会員さん及びトレーナーは映画が好きだ。


 特に私を担当しているコーチは「天使の羽をつけた悪魔」または「悪魔の羽をつけた悪魔」と呼びたくなるほどのハードなメニューを出す。


 おかげで素早さも力も若者に比べれば劣るが、スタミナだけは持続できている。



 で、時々、映画トークをする。


 その時はなぜか漫画の実写映画の話になっていた。


 確か五分スクワットをしていた時だ。(五分間、ひたすらスクワットをするだけ)


「そうだ、隅田さん」


「なんっすか?」


「漫画の実写化で面白いのない?」


「そーっ……すねぇ……はぁ…」


「あと、一分だよ」


「『進撃の巨人』は、出来の酷さに原作ファンの子から『ある意味、観たほうがいい』とか言われていますねぇ」


「へぇ……俺が『あ、いいなぁ』と思ったのは『闇金ウシジマくん』の実写化で山田孝之がいい演技していたよ」


 タイマーが鳴った。


「はい、お疲れ……まあ、興味持ったら漫画でも映画でもDVDが出ているから観てよ。面白いよ」



 えー、原作漫画読みました。


 もちろん、ブックオフで。


 買いましたよ、ドラゴンクエスト3オーケストラ版。


 正直に書く。


 ベビーだった。


 軽い内容だと思ったら、ベビー過ぎた。


 何だろうなぁ、藤子不二雄Aの絵を綺麗にしたらこうなるというような、人の負の部分の在庫一斉バーゲンみたいな内容……


 一気読みも無理。



 ただ、覚えたシーンがある。


 前後の話は忘れたが、牛島の先輩がやって来て後輩のために飯を作るシーンだ。


「レジ袋に新聞紙を敷き詰めて(オイルサーディン缶の)油を捨てると健康にいいぞ」と、ここだけ聞くといい人みたい。



 そして、件のコーチは現在、韓国ノワールにハマり、「ビバ、暴力映画!」な人になった。


「隅田さん、韓国映画のいいところは日本では生ぬるい流血シーンが生々しいんところがいい!」


「えぇ……私、そういうの苦手ですよ」


「好きな漫画は?」


「北斗の拳ですが……」



 さて、筋肉を使いボロボロの体でコンビニでタンパク質の牛乳を飲み、何故かオイルサーディン缶と小葱のみじん切り(冷凍)を買った。


 帰宅して、冷蔵庫に入れ、風呂に入り、寝た。



 起きた。


 土曜日は洗濯物や通院などがある。


 朝ご飯にそんなに時間をかけられない。


 幸い、ご飯は炊飯器の中で出来上がっている。



 着替えて、まず、火にかけたフライパンにオイルサーディンを全部入れる。


 水と油ではねるが根性で木べらなどで大雑把に刻みつつ炒める。

 

 次に冷凍の小葱を冷凍のまま丸々一袋入れる。


 火柱が立つかもしれんが、気にしない。


 色々な水分が混じり、だいぶ落ち着き、小葱が完全に火が通ったら醤油を一たらし。


 それを丼に乗せる。


 完成。


「オイルサーディン丼」



 これを食べた感想は「実に、というか、意外というか、美味い」


 私にとってアンチョビ(これは飯の友にもなりえる存在)とは似て非なるものだったオイルサーディンが、日本の小葱と醤油が日本の飯とこれほど合うとは……


 だが、この丼が非合法な闇金の金で出来ていたら……と想像する。


 でも、美味い。


 お上品でなくていい。


 大きく口を開けて中にご飯と小イワシと小葱と油をぶっこむ。


 咀嚼して、喉を通す。


 なぜか、やる気が出た。


 私はジャケットに袖を通し、部屋を出た。











































諸注意・非合法な闇金、というか、ローンとかでも、契約する前に必ず誰かに相談しましょう。


 特に闇金は骨の髄の髄まで啜られます。


 映画公開時に山田さんも熱弁していました。

 

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午前六時半に私は「オイルサーディン丼」を作った 隅田 天美 @sumida-amami

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